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第三章
辺境と精霊
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『ウジェ殿、貴方が見えてますよね?』
守護者は笑って答えない。陛下が代わりに返事をする。
『見えてるよ。初めて守護者の樹の側に来た時、持たれて立って客を観察してた守護者様を見て『あれ、兄弟のだれか?』って聞いていたからね』
アルは答えが貰えて安心した。
『あれは半端に妖精眼をもってるのだろう。……辺境のものには多いのだよ』
『なぜです?』
アルは訊ねる。
『辺境の領主のうち東西南はどこかで精霊の血が混じったものを領主に立てたからな。ここは5代前にもう一度精霊の血が入ってる。次はフロランでまた血が入るだろう。東も南も時々、精霊の花婿が出るんだよ。そうやって要所要所で血が混じってる』
陛下はこの話を知っていたらしい。
『北には精霊の血は』
アルの疑問に守護者は答える
『入ってないね。北は武辺者の血だな』
レアとセイラ妃、陛下は迎えに来た魔導師団長が転移で連れて帰った。その3日後、エマが帰ってくると守護者の樹の所に陛下がいた。
「陛下?」
「順調かな?」
「割合と。明後日に北か南かの象徴の石を交換します」
陛下は考え込んでいたが守護者となにか話したようで顔をあげてエマに指示をする。
「明後日の正午、北の石を変えて欲しい。守護者様が気にかかっているらしい」
エマはにっこりと笑い頷いた。
「俺も立ち会うから俺が来るまで石の入れ替えは待ってくれ」
「判りました」
なにがあるのかしら、とエマは思った。
「じゃ、頼んだよ」
そういうと陛下は自分で転移して王宮に戻った。
「呆れた……、あの子自分で飛べるんじゃない」
守護者の樹は同意のつもりか風もないのに葉が揺れている。
その後、アルがのんびり樹の所に来た。
「昼寝するんでエマ様は館でお休みになってください。なんなら夜も俺がいますよ」
「そう、……ね。今日はお願いしても?」
「夕飯はフロランが持ってきてくれるらしいですしエマ様は今日は社交の日にしてくださ
い」
エマは礼をいうと自分の足で館に向かった。
『マドレーヌとはどうなんだ?』
守護者が好奇心一杯で訊いてくる。アルは持ってきた自分の椅子を設置する。椅子というのかハンモックを言うのか。体全体を布が支える形の椅子で足元にオッドマンをおき気楽に昼寝の体勢になる。
『どう、とは?』
アルの答えに守護者は深くため息をつく。
『いいな、とか嫁にしたいとか』
『そういうんじゃないです』
アルは守護者にはっきりと返す。
『あの子は王族とかに向きませんよ。俺も聡い方とは言いませんが……あの子はまだ未分化の幼児ですね、そういう部分は』
アルは深くため息をつく。
『それに俺に恋愛の自由なんてないんですから。王家にとって一番いい位置におかれt一番いい相手を宛がわれる、それが俺の役目です。……俺は母上みたいに泣く人を作りたくない。ので、俺に宛がわれる人がいるならその人を愛したいので』
守護者は意地悪くアルに訊ねた。
『それが正妃みたいな人だったらどうする?』
アルはうむむむ、と唸ったっきり守護者を無視して本格的に寝に入った。
守護者は笑って答えない。陛下が代わりに返事をする。
『見えてるよ。初めて守護者の樹の側に来た時、持たれて立って客を観察してた守護者様を見て『あれ、兄弟のだれか?』って聞いていたからね』
アルは答えが貰えて安心した。
『あれは半端に妖精眼をもってるのだろう。……辺境のものには多いのだよ』
『なぜです?』
アルは訊ねる。
『辺境の領主のうち東西南はどこかで精霊の血が混じったものを領主に立てたからな。ここは5代前にもう一度精霊の血が入ってる。次はフロランでまた血が入るだろう。東も南も時々、精霊の花婿が出るんだよ。そうやって要所要所で血が混じってる』
陛下はこの話を知っていたらしい。
『北には精霊の血は』
アルの疑問に守護者は答える
『入ってないね。北は武辺者の血だな』
レアとセイラ妃、陛下は迎えに来た魔導師団長が転移で連れて帰った。その3日後、エマが帰ってくると守護者の樹の所に陛下がいた。
「陛下?」
「順調かな?」
「割合と。明後日に北か南かの象徴の石を交換します」
陛下は考え込んでいたが守護者となにか話したようで顔をあげてエマに指示をする。
「明後日の正午、北の石を変えて欲しい。守護者様が気にかかっているらしい」
エマはにっこりと笑い頷いた。
「俺も立ち会うから俺が来るまで石の入れ替えは待ってくれ」
「判りました」
なにがあるのかしら、とエマは思った。
「じゃ、頼んだよ」
そういうと陛下は自分で転移して王宮に戻った。
「呆れた……、あの子自分で飛べるんじゃない」
守護者の樹は同意のつもりか風もないのに葉が揺れている。
その後、アルがのんびり樹の所に来た。
「昼寝するんでエマ様は館でお休みになってください。なんなら夜も俺がいますよ」
「そう、……ね。今日はお願いしても?」
「夕飯はフロランが持ってきてくれるらしいですしエマ様は今日は社交の日にしてくださ
い」
エマは礼をいうと自分の足で館に向かった。
『マドレーヌとはどうなんだ?』
守護者が好奇心一杯で訊いてくる。アルは持ってきた自分の椅子を設置する。椅子というのかハンモックを言うのか。体全体を布が支える形の椅子で足元にオッドマンをおき気楽に昼寝の体勢になる。
『どう、とは?』
アルの答えに守護者は深くため息をつく。
『いいな、とか嫁にしたいとか』
『そういうんじゃないです』
アルは守護者にはっきりと返す。
『あの子は王族とかに向きませんよ。俺も聡い方とは言いませんが……あの子はまだ未分化の幼児ですね、そういう部分は』
アルは深くため息をつく。
『それに俺に恋愛の自由なんてないんですから。王家にとって一番いい位置におかれt一番いい相手を宛がわれる、それが俺の役目です。……俺は母上みたいに泣く人を作りたくない。ので、俺に宛がわれる人がいるならその人を愛したいので』
守護者は意地悪くアルに訊ねた。
『それが正妃みたいな人だったらどうする?』
アルはうむむむ、と唸ったっきり守護者を無視して本格的に寝に入った。
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