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第五章

ロクサーヌたちの卒業式 3

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 「うーん、どうするかな」

ウージェーヌは頭を抱えていた。卒業式に学園の周りをジョアンに俳諧さっるのは怖るのだ。アル殿下も学園に行くと聞いているしジョアンが騒ぎを起こしたら、と頭を抱えていたのだ。

「神殿で、花見の宴をしたらええ」

ドニが言う。今は東の辺境に転移装置を設置しているのだ。各辺境家に設置される転移装置は領主一族が公爵邸へ転移できる装置であり、冒険者が使う冒険者ギルドのものとは違う、と辺境伯たちは説明されている。これがアルがマドレーヌを手に入れるために考えたおためごかし、とは誰も、打ち明けられた陛下とウージェーヌとフロラン以外気が付いていない。
 陛下は甘えてこない息子に相談され一も二もなく了承しさっさと計画を立てて実行した。この妙に軽い空気の陛下はこういう風に軽く色々な事を実行していく。この軽さはグランサニュー公爵の実行力と似ている。

「そうですね。今、治療が必要な患者抱えてますし、精霊たちも力を持て余してますから」

エリクは頷いた。

「それでいけるかな」

「それを納得させるのがエリクの口車」

ドニが部屋の中の設置位置を再確認している。

「入るぞ」

東の辺境伯が部屋に入ってきた。

「まだ設置は?」

「もうすぐだな。設置してるとこ見てもわからんぞ」

ウジェがそういうと東の辺境伯はくくっと笑う。

「いいんだよ。ちゃんと監視してたって言えるから。うちのオヤジ、神殿を信用してなくて」

「あの方は神殿は利用するものだと思ってるから」

エリクがにっこりと笑って返す。ここには何か確執があると思っていたが東の辺境伯はベルティエ家の遠縁だったなとウジェは思い当たった。

「しかたないだろ、お前が神官長なんて……」

「心外、でもないな。自分が神官長になった理由がわからん。うちの家もそういう活動しなかったしな」

ドニが装置の一部を床に置いた。

「そら、神託があったからな」

「へ?」

「あ?」

前神官長のドニが初めてはっきりと発言した。

「そういうことになっとる」

「は?」

「神託を聞いたのは儂だからな」

ドニがしれっと言い、東の辺境伯もエリクもウジェも苦笑した。

「あの時、どちらかの派閥から選べば血で血を洗う争いが起きそうだったからな。今は両方の派閥が平和に話し合っとるよ。なのでエリクは別に『神託』を聞かずとも済むんじゃないかな」

「ま、副神官長二人には言ってあります。能力がる方を選ぶ、と。私に対する賄賂は禁止、どれだけ効率的に仕事をするか、選考基準はそれだけだと。……面白いように互いの弱点が手に入りますね、こうすると」

エリクの人好きのする笑顔、がウージェーヌ達には胡散臭い笑顔にしか見えなかった。

「何に使ってるだか」

ウージェーヌがつぶやく。

「使ってないよ。……あ、そことは別口で入ってきたけどアルくん頑張ってるみたいだね」

エリクが神殿の精霊から聞いたこと口にする。ウージェーヌは酢を飲んだような顔になる。

「なんだ?」

東の辺境伯が面白げに訪ねる。

「マドレーヌ嬢に求婚者が出来たって事」

エリクの言葉に東の辺境伯が大口をあけて笑った。

「うちの三男が泣くな」

12歳の三男はマドレーヌが東に来た時に一目ぼれし、今年から王都の学園の騎士科に進学するのだ。

「9月から少しでもマドレーヌ嬢と仲良くなるんだって張り切ってたんだよな、坊主」

東の辺境伯が少し残念そうに言った。
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