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エドガーの章

07

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 「エドガー、切り付けられたって」

冒険者ギルドの食堂でのんきに食事をしていたエドガーの元に父と兄が駆け寄ってきた。

「ああ、かすっただけ。皮が切れただけだったから。5~6日は鍛錬は無理だけど」

けろっとした顔でエドガーは答える。父親、ラルフは一安心したのかエドガーの手をもってテーブルのエドガーの隣の席に座り込んだ。エドガーはマッシュポテトにみじんに切った玉ねぎや肉を入れてスパイスで味付け炒めたモノを混ぜ込んで一口大にして揚げたモノを片手で口にほおりこんでいた。

「父さん、とりあえず家に帰ろうか」

ルトガーがそういう。三人は馬車止めに止めた自宅の馬車に乗る。エドガーは安心したのか馬車の座席で横になってガーガーと音をたてて眠っていた。



 「は?フロトー一家をこの家で雇う?」

エドガーの提案に父親は呆れた顔になった。

「ジスランに刺されたんだぞ?」

「だからですよ。野放しにするよりエドモンドとかエリカさんとかと見張っててほしい。悪いけどジスランは外に出さないで、出すなら後ろから誰か付けててほしい。フロトーのおじさんもおばさんも働き者だし。あそこにはジスランの姉ちゃんもいるから対外的な時のメイドになってもらえるし」

父親はエドガーをじっと見る。

「同情してるのか?」

エドガーは肩をすくめる。

「ゼロではないけど…。独立するときにまた刺されるんじゃないかとか考えるのが嫌で。なら見張っててもらうのが一番いい。ジスランももう少し考えられるようになったときに自分の一家が誰から給料もらっているのか考えられるでしょう」

エドガーはもう一つの理由、自分の母親とジスランが容易に接触できないようにしたいという希望は口に上らせなかった。我が母ながらエドガーを傷つけることに血道をあげすぎていると思ってるが、一度目は追及しないと思った。二度目は起こさせないし、それこそジスランを母の手先にしたくなかった。

 エドガーは母親の戦力を削ごうと思ったが14才の身ではどこまでできるかわからないからこそ母親の小遣いで動かせるジスランを母親と接触させたくなかった。
 ビアンカとユリアーナがどこまで母親の手先化も考えないと、とエドガーは思う。ビアンカは率先して母親が喜び、エドガーが嫌がる事をする。そして小遣いがいくらあっても足りないと言っていた。ビアンカは当面、母の側のザコ扱いだなと判断する。最終的に小金でひっくりかえせるかもしれないとも。
 ユリアーナはどちらなのか。エドガーやルトガーにかかわる事もなく、母親を諫めたりすることもない。無口で母親の好みの服を着せられ居間で座っているだけ、そんな印象の子供だったし少女になってもそうだった。
 この駒は保留だな、と思う。母の戦力を削ぐ計画は自分だけでやろうと心に決めてエドガーは一旦気持ちを切り替える。
 紅茶を一口、砂糖もミルクも入らないストレートティを飲み込む。気が付くとエリカが父の書斎を出ていくところでその間の話をエドガーは聞き洩らしていた。

「雇うかどうかはわからんが、フロトー夫婦に話を聞く事にはした。ジスランは反省の色が薄いらしく、冒険者ギルドの留置所に止め置かれるらしい」

  エドモンドの持ってきた手紙を見ながら父親がそう告げる。ルトガーは押し黙っていた。エドモンドは手紙をもって来たまま控えていた。
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