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海の姫の章

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 「カイ、腹減った。残り物ある?」

「ちょい待て」

カイはそういうと今切っていた黒パンの端っこの部分にチーズをのせて調理用オーブンの端っこに乗せる。

「好きなタイミングで食べろ」

黒パンは大量にあるのでカイはせっせと切っている。

「端っこは好きにたべていいよ」

とカイはアキラに声をかけた。

「わーい」

アキラは喜んで乳酪をアイテムボックスから出して塗って炙る。ほわっとバターの匂いがする。それに合わせたようにカイの腹も音を立てた。

「カイ、口明けて」

アキラはカイの口にバターを塗った黒パンを突っ込んだ。

「あんがとよ」

黒パンを食べきって、残りの黒パンを食べきるとカイは次の作業、芋の皮むきを始めた。アキラも手伝う。

「おいおい、クラン長様が芋の皮むきかよ」

「ここに手があるんだから使った方が効率的だろ?」

「依頼とかないの?」

「今はちょっと待ちだな」

カイとアキラは軽口をたたきながら芋を剥いていく。




 「じゃ、カイも行こうか」

とアキラは王都の宝飾店、マジックジュエルへ向かった。

「珍しいな、アキラ。女か?」

カイはからかい気味に訊ねてくる。

「いんや。クランにいる女の子達にね。ユリアーナ、ニーア、ついでにユリアーナの兄弟とユリアーナの兄弟が下宿してる家の奥さん、んでエヴァ」

「エヴァにも買ってやるの?」

「クランの子だからね。しかし俺とは完全に顔合わせたくないみたいだしな」

「俺が渡すのも違うよな」

カイとアキラはうなりながら店に着く。アキラがバロック真珠のロングネックレスを同じ色にすべきかどうかを悩んでいる時にカイは何かを見つけてそれを買っていた。

 結局アキラはシンプルな白い真珠のバロックのロングネックレスと三連のブレスレットを揃えた。その時に見かけたものを見て何かを思いついたようだった。

「カイは買わなかったの?」

「うん?まだネックレスって年齢じゃないんだよな」

「子供できたの?」

カイって結婚してたっけ?とアキラは少し考える。

「ああ、姪。妹と姪におそろいのヘアピンを買ったんだよ。んでシュシュってやつも欲しいんだけどどこで売ってるか聞いてた」

アキラは心得顔でカイを案内した。

「ここ冒険者用の店じゃないか」

「いいんだよ」

そのままアキラはカイを見せに連れ込んだ。

「……本当にここ?」

「これこれ。輪っかになった髪くくりやつね。伸縮性あるからきっちり止まるよ」

そう言われてカイは現物を見てかなり真剣に選んでいた。五つ程選ぶとそれを購入した。

「これも妹さん?」

「義弟もな」

カイが告げた義弟の名は何度か討伐の手伝いをしえ貰った狩人の名前だった。



 その後、カイの元にはもっとシュシュを送ってくれと義弟からの手紙が届いた。
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