49 / 65
正妃様のお茶会
しおりを挟む
季節は移って春の終わり、夏休みも近づいてきました。次の9月では私は2年次に上がります。キャロライン先輩は3年次。私たち経営科は女官を目指す女性が所属しております。普通科から女官の道を目指すことも可能ですが、経営科から目指すのが楽らしいです。
そんな折、私と母様に正妃様から王宮でのお茶会のお誘いです。
「……よし、新しいアフタヌーンドレスを仕立てますよ」
母様が燃えている。
「ドレスは女性の戦闘服ですからね。あと、ロイヤルなエロ殿下もいらっしゃいますので逃した魚の大きさを見せつけてやりましょう。子供の頃のあの子のしでかしたことの恨み、ここで晴らしますよ」
ロイヤルなエロ殿下って……
「アルベルト殿下がいらっしゃるのですか?」
「ええ」
母様がにっこり笑う。……この人は伯父様の持つ『嫋々とした』空気はないなぁと思った。
「正妃様がね、『ブランシュには悪いけどアルベルトには毛程とチャンスがないことを最後に思い知らせたいの。北の国に行ったら二度と会わない相手だと心から納得してもらわないとね。あとは子供の頃の事、ちゃんと謝りたいと言うのでね。但しあの子が期待してるみたいに二人きりにはしないから』って」
「謝る、のは口実でしょう」
思ってることを母様相手だからはっきりと口にする。
「私と婚約ができればこの国に残れる、くらいは考えておられそうですし。先日、蝶の手紙でお茶会をって来てましたから」
あのお手紙道具、蝶の手紙と言われてるそうです。
「はぁ……、殿下がとある伯爵の未亡人を侍従を使って王子宮に上げておられるのです。欲求の処理相手として陛下の許可が出てるらしくて」
母様は困り顔になる。
「正妃様はそれも含めての蟄居だ、って陛下に言っても『あれは俺と妾妃の子供だぞ?性衝動、強いぞ?理性的なお前にはわからんだろうがな』って開き直った返事が返ってきててね」
陛下、極まってるなぁ。あれで政治は正妃様、父様と伯父様の頑張りもあるんだろうけど、まともに動いてるんですよね。信じがたいけど。
「年代的にそっちに頭が行きやすい事もあるから陛下のそういう甘やかしでそっち方向ばかりに視線がむいてしまうのでしょうけど」
母様がため息をつく。母様はアルベルト殿下も子供の時から知っている子の感覚で心配している。こういう優しいところは見習うべきなのだろうけど……。私には無理かなぁ。
幼馴染としてはシリル様、アルフォンス様、エリク様もグループで。私とサラ姉様はその中にいる女子枠で。でもみんなサラ姉様とはあまり親しくならなかったのよね、あの頃。
……理由あるのかな。こういう事聞くのはシリル様が最適ね。くやしいけどあの人は諜報員としての訓練も済んでいるし兄様の腹心でもあるし。
そういえば、アルベルト様のお相手の伯爵夫人って大丈夫なのかな?妾妃様の手の人とか言わないよね?
「母様、アルベルト様の閨の相手の型なんですけど」
「ミラベル・ポー伯爵夫人です」
「あのお方ですか」
しっとりと色気のある人でイメージ的には紫色のユリ、って感じ。
「ポー伯爵夫人は妾妃様とは?」
「大丈夫。ディオン様のチェック済みで洗脳の痕もなかったそうです。元々アルベルト殿下の閨教育の実技の相手として選ばれていたので今、実技の授業と思えばいいのですけども」
母様はまた溜息だ。
そんな折、私と母様に正妃様から王宮でのお茶会のお誘いです。
「……よし、新しいアフタヌーンドレスを仕立てますよ」
母様が燃えている。
「ドレスは女性の戦闘服ですからね。あと、ロイヤルなエロ殿下もいらっしゃいますので逃した魚の大きさを見せつけてやりましょう。子供の頃のあの子のしでかしたことの恨み、ここで晴らしますよ」
ロイヤルなエロ殿下って……
「アルベルト殿下がいらっしゃるのですか?」
「ええ」
母様がにっこり笑う。……この人は伯父様の持つ『嫋々とした』空気はないなぁと思った。
「正妃様がね、『ブランシュには悪いけどアルベルトには毛程とチャンスがないことを最後に思い知らせたいの。北の国に行ったら二度と会わない相手だと心から納得してもらわないとね。あとは子供の頃の事、ちゃんと謝りたいと言うのでね。但しあの子が期待してるみたいに二人きりにはしないから』って」
「謝る、のは口実でしょう」
思ってることを母様相手だからはっきりと口にする。
「私と婚約ができればこの国に残れる、くらいは考えておられそうですし。先日、蝶の手紙でお茶会をって来てましたから」
あのお手紙道具、蝶の手紙と言われてるそうです。
「はぁ……、殿下がとある伯爵の未亡人を侍従を使って王子宮に上げておられるのです。欲求の処理相手として陛下の許可が出てるらしくて」
母様は困り顔になる。
「正妃様はそれも含めての蟄居だ、って陛下に言っても『あれは俺と妾妃の子供だぞ?性衝動、強いぞ?理性的なお前にはわからんだろうがな』って開き直った返事が返ってきててね」
陛下、極まってるなぁ。あれで政治は正妃様、父様と伯父様の頑張りもあるんだろうけど、まともに動いてるんですよね。信じがたいけど。
「年代的にそっちに頭が行きやすい事もあるから陛下のそういう甘やかしでそっち方向ばかりに視線がむいてしまうのでしょうけど」
母様がため息をつく。母様はアルベルト殿下も子供の時から知っている子の感覚で心配している。こういう優しいところは見習うべきなのだろうけど……。私には無理かなぁ。
幼馴染としてはシリル様、アルフォンス様、エリク様もグループで。私とサラ姉様はその中にいる女子枠で。でもみんなサラ姉様とはあまり親しくならなかったのよね、あの頃。
……理由あるのかな。こういう事聞くのはシリル様が最適ね。くやしいけどあの人は諜報員としての訓練も済んでいるし兄様の腹心でもあるし。
そういえば、アルベルト様のお相手の伯爵夫人って大丈夫なのかな?妾妃様の手の人とか言わないよね?
「母様、アルベルト様の閨の相手の型なんですけど」
「ミラベル・ポー伯爵夫人です」
「あのお方ですか」
しっとりと色気のある人でイメージ的には紫色のユリ、って感じ。
「ポー伯爵夫人は妾妃様とは?」
「大丈夫。ディオン様のチェック済みで洗脳の痕もなかったそうです。元々アルベルト殿下の閨教育の実技の相手として選ばれていたので今、実技の授業と思えばいいのですけども」
母様はまた溜息だ。
6
あなたにおすすめの小説
竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです
みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。
時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。
数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。
自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。
はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。
短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました
を長編にしたものです。
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
ストーカー婚約者でしたが、転生者だったので経歴を身綺麗にしておく
犬野きらり
恋愛
リディア・ガルドニ(14)、本日誕生日で転生者として気付きました。私がつい先程までやっていた行動…それは、自分の婚約者に対して重い愛ではなく、ストーカー行為。
「絶対駄目ーー」
と前世の私が気づかせてくれ、そもそも何故こんな男にこだわっていたのかと目が覚めました。
何の物語かも乙女ゲームの中の人になったのかもわかりませんが、私の黒歴史は証拠隠滅、慰謝料ガッポリ、新たな出会い新たな人生に進みます。
募集 婿入り希望者
対象外は、嫡男、後継者、王族
目指せハッピーエンド(?)!!
全23話で完結です。
この作品を気に留めて下さりありがとうございます。感謝を込めて、その後(直後)2話追加しました。25話になりました。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
[完結]私、物語りを改竄します。だって、女神様が全否定するんだもん
紅月
恋愛
病気で死んだけど、生まれ変わる前に号泣する女神様に会った。
何やらゲームのパッケージを見て泣きながら怒っている。
「こんなの私の世界で起こるなんて認めない」
あらすじを読んでいた私に向かって女神様は激おこです。
乙女ゲームはやった事ないけど、この悪役令嬢って書かれている女の子に対してのシナリオ、悲惨だ。
どのストーリーを辿っても処刑一択。
ならば私がこの子になってゲームのシナリオ、改ざんすると女神様に言うと号泣していた女神様が全属性の魔力と女神様の加護をくれる、と商談成立。
私は悪役令嬢、アデリーン・アドラー公爵令嬢としてサレイス王国で新しい家族と共に暮らす事になった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる