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引き取り手のない……
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フーシェ家の事で正妃様には軛が付き以前ほど辣腕を振るう事が出来なくなりました。その浮いた権力は伯父様と父様に集まってしまいました。二人とも逃げ回ってたんですけど……陛下がこの二人を自分の側近扱いしだしまして。学生時代からの側近だったエリク様のお父上以外の学生時代からの側近が軒並み妾妃様と関係があったとかむにゃむにゃでいないタイミングでしたし。ま、妥当な所でした。
そして兄様主催のお茶会と称した私の見合いパーティが開かれました。誰の手を取る気もなかったんですが……ディオン団長から比較的真面目な申し込みがお茶会後、正式な手続きを経て我が家にありました。私にとっては晴天の霹靂です。
「可愛い義妹予定からの強い推薦もありましたしね」
二人きりの四阿でのお茶会でそう告げられました。
「私のどこがいいのですか?」
「ブランシュ嬢の中にブランシュ嬢じゃない誰かがいるのが見えてね」
ディオン様は不思議な瞳の色になる。少し緑掛かった金に近い茶色、という感じ。
「好奇心がそそられる。今まで中に誰かが居るのが見えたことはあるけど……アニエス嬢とかね」
あぁ、彼女転生者だものね。
「私の奥にもそんな状態の『なにか』があります。貴方やアニエス嬢ほど明確なものではないのですが……」
ここで急に話が変わった。
「ローランの物語のいくつかに私の中の何かが反応しました。灰をかぶった姫の話や長靴をはく猫の話、獣の頭の領主と美しい娘の話、千匹の毛皮と月のドレス、星のドレスの話、……初めて読むはずなのに懐かしかったのです」
えっと……あれ、せいぜいティーン向けで書いてなかったっけ?
「で、そんなときにアニエス嬢と貴女を見て多分中にいるのは『人』だと思ってます」
円を描くように話が戻った。
「何故そんなティーンが読むような本までよんでおられるのですか?」
趣味読書なのかしら?
「あ、……ただのローワン好きです」
とにっこりディオン様は笑う。ローワン、貴男が知ってる人ですよと私は言いたくなった。いわないけど。
「あのシリーズは画家の絵も楽しいですよね。長靴の猫の絵の方の猫が可愛くて」
「ブランシュ嬢もローワンがお好きで?」
「好きです。物語を読むのが大好きなので」
「ローワンでは何がおすきですか?」
私は初期の重めの騎士譚を上げた。
「いいですねぇ。私はダルタニヤン卿の冒険が好きですね。スカッと爽快ですし。友人の三銃士がまた良い」
しばらくそんな話をつづける。ディオン様はローワンの話は饒舌に話す。他の話はあまり得意ではないらしい。
「偶にお話しに来たりお茶に誘ったりしてもよろしいですか?」
悪い人じゃなさそうだし。
「ええ。まずはお話するところから始めましょう。それが婚約につながるかどうかはわかりませんが私、ディオン様の事知りませんから」
私がじっと見るとディオン様はちょっと困った表情だ。
「昔からエリクの話に出てきてた方なので一方的に知り合いのようなつもりになってました。そうですね、私の事を知った上で判断はブランシュ嬢に委ねます。まずは名乗りを上げさせていただきます」
そのくらいなら、彼と話のは嫌ではないし。
正式に北の大国からお断りされたアルベルト様は正妃様と陛下から1年の猶予をもぎ取りました。1年間、冒険者として働き一定の成績を上げられたら王籍から離脱せず王籍の末席でどこかの令嬢を娶る、この国には残る、という事を賭けたらしい。冒険者としてものにならなかったらつまり1年でD級を抜けられなかったら王籍を抜け、正妃様の親戚の男爵に養子に行きその男爵領の領主として生きる、という事になったらしい。
シリル様がしばらく殿下に着いて少なくともまともな依頼が受けられるE級まで指導兼護衛をするという。シリル様はざっと書いた草稿を見せてくれた。
『一新米冒険者の日常』
という小説の原案だった。元王子の冒険者が何もわからないところから成長する話だそうで……。
「取材も兼ねてる、という事ですか?」
「もちろん」
私の質問に毒の無い本当の笑顔でシリル様は答えた。
そして兄様主催のお茶会と称した私の見合いパーティが開かれました。誰の手を取る気もなかったんですが……ディオン団長から比較的真面目な申し込みがお茶会後、正式な手続きを経て我が家にありました。私にとっては晴天の霹靂です。
「可愛い義妹予定からの強い推薦もありましたしね」
二人きりの四阿でのお茶会でそう告げられました。
「私のどこがいいのですか?」
「ブランシュ嬢の中にブランシュ嬢じゃない誰かがいるのが見えてね」
ディオン様は不思議な瞳の色になる。少し緑掛かった金に近い茶色、という感じ。
「好奇心がそそられる。今まで中に誰かが居るのが見えたことはあるけど……アニエス嬢とかね」
あぁ、彼女転生者だものね。
「私の奥にもそんな状態の『なにか』があります。貴方やアニエス嬢ほど明確なものではないのですが……」
ここで急に話が変わった。
「ローランの物語のいくつかに私の中の何かが反応しました。灰をかぶった姫の話や長靴をはく猫の話、獣の頭の領主と美しい娘の話、千匹の毛皮と月のドレス、星のドレスの話、……初めて読むはずなのに懐かしかったのです」
えっと……あれ、せいぜいティーン向けで書いてなかったっけ?
「で、そんなときにアニエス嬢と貴女を見て多分中にいるのは『人』だと思ってます」
円を描くように話が戻った。
「何故そんなティーンが読むような本までよんでおられるのですか?」
趣味読書なのかしら?
「あ、……ただのローワン好きです」
とにっこりディオン様は笑う。ローワン、貴男が知ってる人ですよと私は言いたくなった。いわないけど。
「あのシリーズは画家の絵も楽しいですよね。長靴の猫の絵の方の猫が可愛くて」
「ブランシュ嬢もローワンがお好きで?」
「好きです。物語を読むのが大好きなので」
「ローワンでは何がおすきですか?」
私は初期の重めの騎士譚を上げた。
「いいですねぇ。私はダルタニヤン卿の冒険が好きですね。スカッと爽快ですし。友人の三銃士がまた良い」
しばらくそんな話をつづける。ディオン様はローワンの話は饒舌に話す。他の話はあまり得意ではないらしい。
「偶にお話しに来たりお茶に誘ったりしてもよろしいですか?」
悪い人じゃなさそうだし。
「ええ。まずはお話するところから始めましょう。それが婚約につながるかどうかはわかりませんが私、ディオン様の事知りませんから」
私がじっと見るとディオン様はちょっと困った表情だ。
「昔からエリクの話に出てきてた方なので一方的に知り合いのようなつもりになってました。そうですね、私の事を知った上で判断はブランシュ嬢に委ねます。まずは名乗りを上げさせていただきます」
そのくらいなら、彼と話のは嫌ではないし。
正式に北の大国からお断りされたアルベルト様は正妃様と陛下から1年の猶予をもぎ取りました。1年間、冒険者として働き一定の成績を上げられたら王籍から離脱せず王籍の末席でどこかの令嬢を娶る、この国には残る、という事を賭けたらしい。冒険者としてものにならなかったらつまり1年でD級を抜けられなかったら王籍を抜け、正妃様の親戚の男爵に養子に行きその男爵領の領主として生きる、という事になったらしい。
シリル様がしばらく殿下に着いて少なくともまともな依頼が受けられるE級まで指導兼護衛をするという。シリル様はざっと書いた草稿を見せてくれた。
『一新米冒険者の日常』
という小説の原案だった。元王子の冒険者が何もわからないところから成長する話だそうで……。
「取材も兼ねてる、という事ですか?」
「もちろん」
私の質問に毒の無い本当の笑顔でシリル様は答えた。
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