悪役令嬢はヒロインと関わりたくない【完結】

あくの

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正妃様お泊りする。

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 正妃様と母様は少々羽目を外したそうで夜に酔って帰ってきました。……正確に言うと母様はほんのり、正妃様はちょっと許容量ぎりぎりかなって感じ。

「母様?」

母様は人差し指を唇に当てる。

「私の部屋に」


そういうと、メイド長が

「正妃様失礼します。おからだに触れても?」

「良い……」

息も絶え絶えに正妃様がおっしゃってメイド長は力強く正妃様を抱き上げた。そして正妃様の護衛であろう男が一人。ザ・量産型というタイプでどこに入れてもくすんで見えるのに浮かないそんなに男が正妃様に付き従っていた。
 みめがいいわけでもない、目立つわけでもないけど堅実にそこに存在してる感じが私の中の何かに触れた。
 なんだろう。前世で働き始めた時、上司に憧れた時期があったな。それを思い出した。あ、前世の上司は女性です。彼女に憧れて働いて、働き詰めで。彼女を出世で抜かした後に彼女は寿退職した。彼女の同期に

「貴女が彼女を抜いた事で仕事を続ける気持ちが折れたって」

と言われた。その後の罵詈雑言は辛かった。私は彼女に憧れただけだったから。
 あの護衛の男性に感じたこの感情は……裏仕事に対する私の求めるスタンスが完全に体現されていたからだ。




 翌朝、二日酔いの頭痛がすると言いながら正妃様は馬車で帰っていった。……二日酔いで馬車かぁ。考えたくない。今日は休養日で公務が午後からしかないのでなんとかなるでしょう、と。
 後で兄様から聞くと急なお泊まりだったので王宮では大騒ぎだったとか。ただついてる護衛が超優秀な人だったから問題は最小限に済んだのと母から陛下へ連絡したので陛下の機嫌は損なわれなかった、と。



 後宮は妾妃様の失脚でかなり平和になったとか。今、後宮の流行りは側妃様達同士のお茶会だそうです。陛下はそこに混ざってハーレムを楽しんでいるとか。まだ幼い姫にまとわりつかれるのはそれなりに楽しいらしく第三側妃様と第五側妃様のところは特によく行っているらしいです。
 最初、フーシェ家令嬢の王子妃教育はフーシェ家にという話でしたが、諸々の話し合いと私がデコイの役目を担えるということで、フーシェ家令嬢、我が家に行儀見習いという事で住み込んでの教育となりました。
 ジャック殿下が我が家を訪ってもに会いに来ていることになってフーシェ家令嬢が晒されることはないだろう、と。

 「サマン家の令嬢とフーシェ家令嬢、同じ名前なんですよね」

兄様とのお茶の時に何気なくつぶやくと兄様がうーと唸り出した。

「どうしました?」

「何かおかしい。フーシェの娘、ロザリーだったかな?記憶と齟齬がある。……ディオン団長呼ぼう」

兄様が例の便箋と封筒でディオン団長と連絡を取った。
 その後、ロザリー嬢は『成り代わり』、そう、ロザリー・サマン、サマン家の娘の成り代わりだとわかった。これは兄様が忙しくてあちこち飛び回ってて暗示が甘くなってたのが原因だとか。私はフーシェ家の令嬢とも、ロザリー・サマンとも接触してなかったので暗示はいらないと思われたのと。正妃様やジャック殿下、フーシェ家の皆に暗示をかけたのはフーシェ家の侍従長とその父親で、正妃様の従姉妹様の輿入れの時に前の侍従長が老齢でやめたので他家からの紹介で雇った人だそうです。
 この人達は暗示の名手でこれまで完全に隠れていた存在だそうです。ディオン団長が舌舐めずりしてますよ。

「こいつらの手法を手に入れられると思うとね」

どう見ても団長、悪人です、その顔。ただ、このサマンの娘と暗示の名手二人が妾妃様派の一番大きな根っこだったようで本当に色々、色々ありました。

 そしてこの混乱なのに国が無事なのは正妃様が頑張ってるだけでなく陛下、意外と政治上手いの?!
 疑問だったので父様に聞いてみる。

「陛下って割合と政治家としては腕がいいの?れ

うーむ、と父様は唸ってから答えた。

「実行力だけはあるからな」

と玉虫色の答えが……。


 この騒動でフーシェ家は取り潰し。何故かフーシェ家の奥方、陛下の最新の側妃に。私の中の陛下の評価は上を向きかけたところを思い切り叩き落とされました。



 
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