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本編

ローランの現在、エリカの現在

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 side ローラン

  カチャカチャと食器と食器が触れ合う音がする。

「エリカ。音」

エリカは口を尖らせtえ膨れる。

「マナーの時間みたいなこと言うのやめて」

「出来てたら言わない。ソフィーや私が5つや6つの時に出来ていた事を求めているだけだ。早く茶のマナーをマスターしてくれないと先に進めないだろう?」

ローランは婚約者のエリカに精いっぱい優しい声でいう。ただし、溜息共に。

 ソフィーを表に出してエリカは愛妾で良かったかなとローランは考えていた。下位貴族令嬢とはいえここまでマナーが出来ていないとは思っていなかった。こんな内心を隣国に嫁に行ったまた従妹のセシルに知られたら『下位貴族令嬢と上位貴族令嬢は身に着けるマナーが違います』と言われるだろうなとも思った。
 エリカに先に落ちたのは兄エドワードだった。兄の友達と思っていたのに、気が付くとエリカの関心を引きたくて仕方なくなった。色々な好き嫌いを表に出し、きらきらとした眼で自分のやる事にいちいち感動してくれる、そんなエリカが愛しかった。兄はセシルに婚約解消を願い、セシルはあきれ顔で受け入れた。ランバート公爵はそれに何も言わなかった。
 ローランはソフィーを手放すのは、あの体を味見してからだなと思っていた。それにエリカはどうせ兄のものだし、とも。エリカとはエリカが結婚したら裏で楽しめるかも、などと算段していた。兄はエリカ以外とは結婚しない、と父母に言い切っていたので。

そして、あの日、父母と兄が視察に向かい帰り道で雷が馬車に落ちた、という事になっている。ローランはエリカに頼まれて馬車用に用意された白馬に角砂糖をやった。それだけだ。エリカの誤算はその馬車にエドワードが乗っていた事だった。ローランはそんなことは知らなかった。その馬車の中では王と王妃がエドワードを説得している最中だった。考え直せ、と。ローランは視察の馬車に着ける馬に角砂糖ごほうびをあげるのはいつもの事だったので自分が一端を担っている事に全く気が付いていなかった。



side エリカ

 エリカは王と王妃の予定は知らなかったがどこかのタイミングで馬が暴走すればいいと中央に薬を仕込んだ角砂糖を第一王子の弟に渡す。彼女としたらエドワードと結婚したかったので邪魔な王と王妃をどうにかしたかったので父親に相談したのだ。結果薬入りの角砂糖であった。馬にご褒美で角砂糖をあげるという話はエドワードに訊いていた。
 視察用の馬車に着ける馬に王子達が角砂糖を上げるのは子供の時からで、護衛達もほほえましく見守る行為だった。エドワードから聞いてローランがその馬車を引くための馬の一頭をことさら可愛がっているのも知っていた。

「ねぇ……ローラン、あたしも馬に触りたいなぁ」

まずはジャブを打ってみる。見事断られたもののローランはエリカに馬がどれだけ可愛いか、熱の入った説明をした。エリカはをれを聞きながらいちいち感心する。そして陛下たちの視察があると聞いていた前の日、ローランに麻薬入り角砂糖を渡したのだ。

「馬に近寄れないのは分かったわ。……私の代わりにこれ、食べさせてあげて」

エリカに渡された角砂糖をローランはまんまと馬に食べさせた。遅効性のその麻薬は十分に効果を発揮し、いきなりの馬の興奮、制御不能。そのまま谷底に自ら馬が落ちて行った。一瞬の出来事で護衛にも出来ることはほぼなかった。なんとか陛下、王妃、第一王子の遺体を引き上げる。
 ローランはこれを好機と見定め、ソフィーを襲った。エリカはアッと今に王の婚約者となった。
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