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スティーブンの苦悩
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ユーフェミアはいきなり場違いなほど嫣然とほほ笑んだ。
「その話なら聞いております、その婚約者とやらもこちらに来るでしょう」
え、何、私は何を知らないの?
ユーフェミアの反応があまりにこちらの予想外だったためアメリアは思わず息をのむ。
そして、スティーブン・ブラウンが連行されてきた。
「ユーフェミア様、エクストラ様も、私は勤務中なのですが」
普段のにこやかさとは打って変わってスティーブンの顔はどこか苦々しい。
「そうですね、こちらの令嬢を知っているでしょう」
「アメリア・アガサ男爵令嬢ですね、それが何か?」
「その男爵令嬢と婚約したそうね」
「それが何か、同一爵位内の結婚は別に国に許可をとるようなことではありませんし」
どうやらスティーブンはとっくにアメリアとの縁談がまとまったつもりだったらしい。
アメリアの家族があんなに乗り気だった以上、アメリア個人の気持ちだけでこの縁談を覆すことは難しいし、そこまでして縁談を壊すつもりもなく、たぶんこのまま結婚するんだろうなと思っていた。
「アガサ男爵令嬢を妻にした後、その妻を私の婚約者ジョージに差し出すつもりだったのでしょう」
言われた言葉にアメリアの呼吸が数秒止まった。
「は?」
そしてスティーブンをじっと見つめる。
アメリアの視線に気づいたスティーブンがぶんぶんと首を横に振る。
「貴女はいったい何をおっしゃっておられるのです?」
こめかみを抑えてスティーブンが呻く。
「そちらのアガサ男爵令嬢はそれを認めたのですか」
「いいえ、ジョージの顔を見たこともないととぼけていたわ」
「それは本当に知らないのでは?」
アメリアは両手を前に組んで祈るようなまなざしをスティーブンに送った。
どうにかしてくださいの思いを込めて真摯に見つめ続けた。
「確かにそのような事例はあったと思われますが、それは確か百年以上前のことですよね、当時は妻を愛人に差し出すということは割と大っぴらに行われていますが、そして寵愛次第では夫の爵位や領地が向上することもあった」
スティーブンは噛んで含めるように言う。
「ですがあくまでそれは百年以上前の話です。現代では現実的ではない」
背後の中年女性もそれに同意している。
「現代でそんなことをやれば非難ごうごうですよ、私もジョージ殿下も」
アメリアもそうだろうなと思う。百年あればモラルというものも変わるものだ。
「それでそちらの令嬢は?」
スティーブンはすっかり忘れられた帝のキャロルに視線を止めた。
「私はヘンリー殿下の愛人とでも思われているのかしら」
キャロルは淡々とした表情で言う。キャロルはそれほど感情をあらわにしないのでアメリアとしても少々扱いづらさを感じる。
「それでは捏造だと、そのような捏造をされる心当たりがおあり?」
「私にはありませんね、アメリア嬢貴女は?」
「ないです」
アメリアが小声で答える。
「あるはずがないでしょう、何しろ私達を陥れるために王族に泥を塗ろうなどという命知らずの知り合いなど我々に存在しない」
スティーブンがそこを強調する。
「でも逆なら?」
アメリアが呟く。
「王子様に冤罪を着せるために男爵令嬢を陥れる人ならいるんじゃないかしら」
アメリアにすべての視線が集中した。
「その話なら聞いております、その婚約者とやらもこちらに来るでしょう」
え、何、私は何を知らないの?
ユーフェミアの反応があまりにこちらの予想外だったためアメリアは思わず息をのむ。
そして、スティーブン・ブラウンが連行されてきた。
「ユーフェミア様、エクストラ様も、私は勤務中なのですが」
普段のにこやかさとは打って変わってスティーブンの顔はどこか苦々しい。
「そうですね、こちらの令嬢を知っているでしょう」
「アメリア・アガサ男爵令嬢ですね、それが何か?」
「その男爵令嬢と婚約したそうね」
「それが何か、同一爵位内の結婚は別に国に許可をとるようなことではありませんし」
どうやらスティーブンはとっくにアメリアとの縁談がまとまったつもりだったらしい。
アメリアの家族があんなに乗り気だった以上、アメリア個人の気持ちだけでこの縁談を覆すことは難しいし、そこまでして縁談を壊すつもりもなく、たぶんこのまま結婚するんだろうなと思っていた。
「アガサ男爵令嬢を妻にした後、その妻を私の婚約者ジョージに差し出すつもりだったのでしょう」
言われた言葉にアメリアの呼吸が数秒止まった。
「は?」
そしてスティーブンをじっと見つめる。
アメリアの視線に気づいたスティーブンがぶんぶんと首を横に振る。
「貴女はいったい何をおっしゃっておられるのです?」
こめかみを抑えてスティーブンが呻く。
「そちらのアガサ男爵令嬢はそれを認めたのですか」
「いいえ、ジョージの顔を見たこともないととぼけていたわ」
「それは本当に知らないのでは?」
アメリアは両手を前に組んで祈るようなまなざしをスティーブンに送った。
どうにかしてくださいの思いを込めて真摯に見つめ続けた。
「確かにそのような事例はあったと思われますが、それは確か百年以上前のことですよね、当時は妻を愛人に差し出すということは割と大っぴらに行われていますが、そして寵愛次第では夫の爵位や領地が向上することもあった」
スティーブンは噛んで含めるように言う。
「ですがあくまでそれは百年以上前の話です。現代では現実的ではない」
背後の中年女性もそれに同意している。
「現代でそんなことをやれば非難ごうごうですよ、私もジョージ殿下も」
アメリアもそうだろうなと思う。百年あればモラルというものも変わるものだ。
「それでそちらの令嬢は?」
スティーブンはすっかり忘れられた帝のキャロルに視線を止めた。
「私はヘンリー殿下の愛人とでも思われているのかしら」
キャロルは淡々とした表情で言う。キャロルはそれほど感情をあらわにしないのでアメリアとしても少々扱いづらさを感じる。
「それでは捏造だと、そのような捏造をされる心当たりがおあり?」
「私にはありませんね、アメリア嬢貴女は?」
「ないです」
アメリアが小声で答える。
「あるはずがないでしょう、何しろ私達を陥れるために王族に泥を塗ろうなどという命知らずの知り合いなど我々に存在しない」
スティーブンがそこを強調する。
「でも逆なら?」
アメリアが呟く。
「王子様に冤罪を着せるために男爵令嬢を陥れる人ならいるんじゃないかしら」
アメリアにすべての視線が集中した。
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