転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon

文字の大きさ
14 / 100

スティーブンの苦悩

しおりを挟む
 ユーフェミアはいきなり場違いなほど嫣然とほほ笑んだ。
「その話なら聞いております、その婚約者とやらもこちらに来るでしょう」
 え、何、私は何を知らないの?
 ユーフェミアの反応があまりにこちらの予想外だったためアメリアは思わず息をのむ。
 そして、スティーブン・ブラウンが連行されてきた。
「ユーフェミア様、エクストラ様も、私は勤務中なのですが」
 普段のにこやかさとは打って変わってスティーブンの顔はどこか苦々しい。
「そうですね、こちらの令嬢を知っているでしょう」
「アメリア・アガサ男爵令嬢ですね、それが何か?」
「その男爵令嬢と婚約したそうね」
「それが何か、同一爵位内の結婚は別に国に許可をとるようなことではありませんし」
 どうやらスティーブンはとっくにアメリアとの縁談がまとまったつもりだったらしい。
 アメリアの家族があんなに乗り気だった以上、アメリア個人の気持ちだけでこの縁談を覆すことは難しいし、そこまでして縁談を壊すつもりもなく、たぶんこのまま結婚するんだろうなと思っていた。
「アガサ男爵令嬢を妻にした後、その妻を私の婚約者ジョージに差し出すつもりだったのでしょう」
 言われた言葉にアメリアの呼吸が数秒止まった。
「は?」
 そしてスティーブンをじっと見つめる。
 アメリアの視線に気づいたスティーブンがぶんぶんと首を横に振る。
「貴女はいったい何をおっしゃっておられるのです?」
 こめかみを抑えてスティーブンが呻く。
「そちらのアガサ男爵令嬢はそれを認めたのですか」
「いいえ、ジョージの顔を見たこともないととぼけていたわ」
「それは本当に知らないのでは?」
 アメリアは両手を前に組んで祈るようなまなざしをスティーブンに送った。
 どうにかしてくださいの思いを込めて真摯に見つめ続けた。
「確かにそのような事例はあったと思われますが、それは確か百年以上前のことですよね、当時は妻を愛人に差し出すということは割と大っぴらに行われていますが、そして寵愛次第では夫の爵位や領地が向上することもあった」
 スティーブンは噛んで含めるように言う。
「ですがあくまでそれは百年以上前の話です。現代では現実的ではない」
 背後の中年女性もそれに同意している。
「現代でそんなことをやれば非難ごうごうですよ、私もジョージ殿下も」
 アメリアもそうだろうなと思う。百年あればモラルというものも変わるものだ。
「それでそちらの令嬢は?」
 スティーブンはすっかり忘れられた帝のキャロルに視線を止めた。
「私はヘンリー殿下の愛人とでも思われているのかしら」
 キャロルは淡々とした表情で言う。キャロルはそれほど感情をあらわにしないのでアメリアとしても少々扱いづらさを感じる。
「それでは捏造だと、そのような捏造をされる心当たりがおあり?」
「私にはありませんね、アメリア嬢貴女は?」
「ないです」
 アメリアが小声で答える。
「あるはずがないでしょう、何しろ私達を陥れるために王族に泥を塗ろうなどという命知らずの知り合いなど我々に存在しない」
 スティーブンがそこを強調する。
「でも逆なら?」
 アメリアが呟く。
「王子様に冤罪を着せるために男爵令嬢を陥れる人ならいるんじゃないかしら」
 アメリアにすべての視線が集中した。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

もしかして私ってヒロイン?ざまぁなんてごめんです

もきち
ファンタジー
私は男に肩を抱かれ、真横で婚約破棄を言い渡す瞬間に立ち会っている。 この位置って…もしかして私ってヒロインの位置じゃない?え、やだやだ。だってこの場合のヒロインって最終的にはざまぁされるんでしょうぉぉぉぉぉ 知らない間にヒロインになっていたアリアナ・カビラ しがない男爵の末娘だったアリアナがなぜ?

無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する

タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。 社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。 孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。 そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。 追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。

神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです

珂里
ファンタジー
ある日、5歳の彩菜は突然神隠しに遭い異世界へ迷い込んでしまう。 そんな迷子の彩菜を助けてくれたのは王国の騎士団長だった。元の世界に帰れない彩菜を、子供のいない団長夫婦は自分の娘として育ててくれることに……。 日本のお父さんお母さん、会えなくて寂しいけれど、彩菜は優しい大人の人達に助けられて毎日元気に暮らしてます!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

処理中です...