35 / 100
黒幕の正体
しおりを挟む
この国サントアルの国王陛下は二度結婚している。
一人は最初の妃で、この国の右隣の国ウエンステラの妃、二人目はこの国の左隣のエンダイブの妃。当時の交易や国際状況をおもんばかって選ばれた妃達だった。
そして、その妃達は二人とも鬼籍に入っている。
そして、王太子となった王子の妃は国内から選ばれた。それはまあバランスというものだろう。
大体外国出身の王妃と国内出身の王妃は交互に立てられている。
ところが王太子の高齢化に伴い王太子を排して、王太子の長男かそれとも第二第三王子のいずれかを即位させようという世情へと動いた時、国内の貴族は今三分割という状況だ。
第一勢力は王太子妃の実家サックス公爵家、第二王子の婚約者の実家バーミリオン公爵家、、第三王子の婚約者の実家カドミウム侯爵家の三つだ。
そして、国内の貴族はこの三つのうちどれかの傘下に入ることが暗黙の了解みたいな状況になっているらしい。
アメリアの父親が、カドミウム公爵にケーキのレシピを進呈したのもその一環。
つまりアガサ男爵家はカドミウム公爵家の傘下に入っていることになる。
そういう処世術ならそれでもいいがアメリアはそっとキャロルを見た。
「うちはバーミリオン公爵方ね」
キャロルがそう答えてきたのでアメリアもこたえる。
「うちはカドミウム公爵」
違う派閥だが、父親同士は先日あった時は仲良く共同事業でも始めようかと話し合っていた。あまり考えなくてもいいのだろうか。
「どこの派閥が勝ったとしても、男爵家程度だとたいして旨味はないわね、最低伯爵家くらいじゃないと利益も損失もさして出ないでしょう」
つまり爵位が上がれば上がるほどハイリスクハイリターン、爵位が下がれば下がるほどローリスクローリターンになるはずか。
確かに王様に謁見といっても遠くから辛うじて声が聞こえてくるだけで、それが年に一回あればいいような身分の男爵家で王様が誰がなってもそれほど差はないだろう。
すごく切実なのは侯爵家あたりからだそうだ。
「そしてね、三つ巴の戦いって、結局は消耗戦になりやすいっていうわね」
エルザの言葉に二人は頷く。一対一の戦いよりややこしくなりそうだ。
「だから、まず一つを潰そうとしているわけよ、王太子妃の実家バーミリオン家をね」
そう言ってエルザは目を伏せた。
なんとなく目を見せたくないのだろうかとアメリアは思った。
「とにかくバーミリオン家につきそうな家に次々と圧力をかけているわ、主要な貴族はほとんど離反させられているわね。ウエンステラ寄りの領地を持っている貴族の中にはそれでも頑張っている人たちもいるけれど、それも時間の問題」
そして、バーミリオン公爵家の問題が片付き次第サックス公爵家とカドミウム公爵家の一騎打ちになる予定なのだとか。
今の状態は期間限定の停戦中というわけだ。
「それで、そちらはどうするんです」
権威に燃えているエルザなら、この三者三様の争いに一石を投じたいと思っているのかもしれない。
「まあいいわ、勝つのはバーミリオン公爵かカドミウム公爵かでしょうけれど、こちらにできるだけ被害が及ばないようにするだけよ、そのためにうまく立ち回る。そして、お嬢さんたち、噂話を馬鹿にしては駄目よ、話についていけなくなったら貴族として終わりよ」
「もちろん、公爵家だけの問題じゃなくて、ウエンステラとエンダイブとの関係も考慮しなければならないのでしょうね」
「あら、賢いわね、でも今の状況じゃ、どちらの国でもうちの国にとっては同じ、国際状況は小康状態ってことよ、ありがたいことにね」
エルザの話は大変ためになった。しかし、過去の所業を思うと、あまり仲良くしたらおそらく未来の姑の御機嫌は損ねることになるかもしれない。
そして、今の話はあることにものすごく参考になったのだ。
アメリアとキャロルにとんでもない冤罪を着せたのはおそらく王太子妃だろうと。
二人はため息をついた。
厄介ごとから遠ざかりたくて攻略対象から逃げていたのに、どうして向こうから寄ってくるのかと。
一人は最初の妃で、この国の右隣の国ウエンステラの妃、二人目はこの国の左隣のエンダイブの妃。当時の交易や国際状況をおもんばかって選ばれた妃達だった。
そして、その妃達は二人とも鬼籍に入っている。
そして、王太子となった王子の妃は国内から選ばれた。それはまあバランスというものだろう。
大体外国出身の王妃と国内出身の王妃は交互に立てられている。
ところが王太子の高齢化に伴い王太子を排して、王太子の長男かそれとも第二第三王子のいずれかを即位させようという世情へと動いた時、国内の貴族は今三分割という状況だ。
第一勢力は王太子妃の実家サックス公爵家、第二王子の婚約者の実家バーミリオン公爵家、、第三王子の婚約者の実家カドミウム侯爵家の三つだ。
そして、国内の貴族はこの三つのうちどれかの傘下に入ることが暗黙の了解みたいな状況になっているらしい。
アメリアの父親が、カドミウム公爵にケーキのレシピを進呈したのもその一環。
つまりアガサ男爵家はカドミウム公爵家の傘下に入っていることになる。
そういう処世術ならそれでもいいがアメリアはそっとキャロルを見た。
「うちはバーミリオン公爵方ね」
キャロルがそう答えてきたのでアメリアもこたえる。
「うちはカドミウム公爵」
違う派閥だが、父親同士は先日あった時は仲良く共同事業でも始めようかと話し合っていた。あまり考えなくてもいいのだろうか。
「どこの派閥が勝ったとしても、男爵家程度だとたいして旨味はないわね、最低伯爵家くらいじゃないと利益も損失もさして出ないでしょう」
つまり爵位が上がれば上がるほどハイリスクハイリターン、爵位が下がれば下がるほどローリスクローリターンになるはずか。
確かに王様に謁見といっても遠くから辛うじて声が聞こえてくるだけで、それが年に一回あればいいような身分の男爵家で王様が誰がなってもそれほど差はないだろう。
すごく切実なのは侯爵家あたりからだそうだ。
「そしてね、三つ巴の戦いって、結局は消耗戦になりやすいっていうわね」
エルザの言葉に二人は頷く。一対一の戦いよりややこしくなりそうだ。
「だから、まず一つを潰そうとしているわけよ、王太子妃の実家バーミリオン家をね」
そう言ってエルザは目を伏せた。
なんとなく目を見せたくないのだろうかとアメリアは思った。
「とにかくバーミリオン家につきそうな家に次々と圧力をかけているわ、主要な貴族はほとんど離反させられているわね。ウエンステラ寄りの領地を持っている貴族の中にはそれでも頑張っている人たちもいるけれど、それも時間の問題」
そして、バーミリオン公爵家の問題が片付き次第サックス公爵家とカドミウム公爵家の一騎打ちになる予定なのだとか。
今の状態は期間限定の停戦中というわけだ。
「それで、そちらはどうするんです」
権威に燃えているエルザなら、この三者三様の争いに一石を投じたいと思っているのかもしれない。
「まあいいわ、勝つのはバーミリオン公爵かカドミウム公爵かでしょうけれど、こちらにできるだけ被害が及ばないようにするだけよ、そのためにうまく立ち回る。そして、お嬢さんたち、噂話を馬鹿にしては駄目よ、話についていけなくなったら貴族として終わりよ」
「もちろん、公爵家だけの問題じゃなくて、ウエンステラとエンダイブとの関係も考慮しなければならないのでしょうね」
「あら、賢いわね、でも今の状況じゃ、どちらの国でもうちの国にとっては同じ、国際状況は小康状態ってことよ、ありがたいことにね」
エルザの話は大変ためになった。しかし、過去の所業を思うと、あまり仲良くしたらおそらく未来の姑の御機嫌は損ねることになるかもしれない。
そして、今の話はあることにものすごく参考になったのだ。
アメリアとキャロルにとんでもない冤罪を着せたのはおそらく王太子妃だろうと。
二人はため息をついた。
厄介ごとから遠ざかりたくて攻略対象から逃げていたのに、どうして向こうから寄ってくるのかと。
271
あなたにおすすめの小説
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
無能令嬢、『雑役係』として辺境送りされたけど、世界樹の加護を受けて規格外に成長する
タマ マコト
ファンタジー
名門エルフォルト家の長女クレアは、生まれつきの“虚弱体質”と誤解され、家族から無能扱いされ続けてきた。
社交界デビュー目前、突然「役立たず」と決めつけられ、王都で雑役係として働く名目で辺境へ追放される。
孤独と諦めを抱えたまま向かった辺境の村フィルナで、クレアは自分の体調がなぜか安定し、壊れた道具や荒れた土地が彼女の手に触れるだけで少しずつ息を吹き返す“奇妙な変化”に気づく。
そしてある夜、瘴気に満ちた森の奥から呼び寄せられるように、一人で足を踏み入れた彼女は、朽ちた“世界樹の分枝”と出会い、自分が世界樹の血を引く“末裔”であることを知る——。
追放されたはずの少女が、世界を動かす存在へ覚醒する始まりの物語。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい
珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。
本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。
…………私も消えることができるかな。
私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。
私は、邪魔な子だから。
私は、いらない子だから。
だからきっと、誰も悲しまない。
どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。
そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。
異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。
☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。
彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。
婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします
タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。
悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。
悪役令嬢なので最初から愛されないことはわかっていましたが、これはさすがに想定外でした。
ふまさ
恋愛
──こうなることがわかっていれば、はじめから好きになんてならなかったのに。
彩香だったときの思いが、ふと蘇り、フェリシアはくすりと笑ってしまった。
ありがとう、前世の記憶。おかげでわたしは、クライブ殿下を好きにならずにすんだわ。
だからあるのは、呆れと、怒りだけだった。
※『乙女ゲームのヒロインの顔が、わたしから好きな人を奪い続けた幼なじみとそっくりでした』の、ifストーリーです。重なる文章があるため、前作は非公開とさせていただきました。読んでくれたみなさま、ありがとうございました。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる