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新たな出会い
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エクストラは一人の青年と向き合っていた。
身なりはかなりいい。容姿も上のほうだろう。肩に垂らした紅茶色の髪を撫で上げつつ目の前の妖艶な美女を見た。
「それで、こちらの用意した縁談に不服があるとでも?」
「男爵令嬢って、せめて子爵令嬢ぐらい」
「貴方、自分の立場をわかっているの、貴方は公爵家の血縁者といっても末端も末端、騎士爵をかろうじて維持しているだけでしょう」
これというのも先代が子沢山だったせいだ。それを反省して、現在の公爵は子供の数は二人だけ、エクストラとその弟だけだ。
先代の子沢山のおかげで、血縁が絶える心配はないのも少子化に踏み切ったきっかけだ。
「とにかく、お見合いをしなさい、これは命令よ」
「そしてお見合いをしたらそのまま結婚式の日取りまで決まるわけだ」
少したれぎみの目を細めてエクストラを見る。
「人聞きが悪いわね、いいかしら、娘しかいない婿募集中の男爵家との縁談を用意してあげた私の行為は間違いなく善行だわ、違う?」
「まあ、そうですが」
「それで不満があるというのなら、あなたの従兄弟に話を回すわ、何しろ代わりはたくさんいるんだし」
エクストラは赤く塗った唇をにんまりと笑みの形に曲げる。
彼はエクストラという人間をよく知っていた。子供の数を絞ると決めた現公爵は娘をそれはそれは溺愛していた。
その溺愛を一身に受けたエクストラは立派な傲岸不遜な女王様に成長してしまった。将来の王妃候補、この国の未来が危ぶまれる。
彼女が何かを欲しいと思えば、自分の得になると思えば手段を選ばないところがある。
しかし、彼はふと思った。その男爵令嬢を身内に取り込むのにどんな得があるというのだろう。
そこそこ資産のある平凡な男爵家の跡取り娘。どう考えてもエクストラが興味を持つような人間ではない。
「それで、彼女の何が欲しいのですか?」
キャロル・カーマイン男爵令嬢。彼女の持つ価値とは一体何か。
「そうね、しいて言えば頭脳かしら」
あっさりと答えられて拍子抜けする。
「なるほど、では見合いという形でなく一度会う機会などいただけませんでしょうか、そのうえで返事を決めさせてもらえますか?」
「まあ、いいでしょう」
いいえという返事など一度も求めたことのないお嬢様に一礼して、今後の計画を練ることにした。
単なる男爵令嬢ではなく、それなりにうまみのある相手なら結婚相手として考えるのも悪くはない。
豪華な扉を閉めた後、彼はまだ見ぬ男爵令嬢に思いをはせた。
ヘくちっ。
小さなくしゃみの音がした。キャロルがハンカチで顔を押さえている。
「どうしたの、風邪?」
まだ暖かい季節だ、身体を冷やすなどありえないのだが、夏風邪という言葉もある。
「いや、ちょっと寒気が」
「家帰って寝てたら?」
お茶をハーブティーに変えるべきかアメリアは迷いつつ忠告してあげた。
風邪をこじらせた肺炎がどうも死因らしい相手に気を付けるに越したことはないと忠告する。
この世界、医学水準は元の世界に及ぶべきもないのだから。
身なりはかなりいい。容姿も上のほうだろう。肩に垂らした紅茶色の髪を撫で上げつつ目の前の妖艶な美女を見た。
「それで、こちらの用意した縁談に不服があるとでも?」
「男爵令嬢って、せめて子爵令嬢ぐらい」
「貴方、自分の立場をわかっているの、貴方は公爵家の血縁者といっても末端も末端、騎士爵をかろうじて維持しているだけでしょう」
これというのも先代が子沢山だったせいだ。それを反省して、現在の公爵は子供の数は二人だけ、エクストラとその弟だけだ。
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「とにかく、お見合いをしなさい、これは命令よ」
「そしてお見合いをしたらそのまま結婚式の日取りまで決まるわけだ」
少したれぎみの目を細めてエクストラを見る。
「人聞きが悪いわね、いいかしら、娘しかいない婿募集中の男爵家との縁談を用意してあげた私の行為は間違いなく善行だわ、違う?」
「まあ、そうですが」
「それで不満があるというのなら、あなたの従兄弟に話を回すわ、何しろ代わりはたくさんいるんだし」
エクストラは赤く塗った唇をにんまりと笑みの形に曲げる。
彼はエクストラという人間をよく知っていた。子供の数を絞ると決めた現公爵は娘をそれはそれは溺愛していた。
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彼女が何かを欲しいと思えば、自分の得になると思えば手段を選ばないところがある。
しかし、彼はふと思った。その男爵令嬢を身内に取り込むのにどんな得があるというのだろう。
そこそこ資産のある平凡な男爵家の跡取り娘。どう考えてもエクストラが興味を持つような人間ではない。
「それで、彼女の何が欲しいのですか?」
キャロル・カーマイン男爵令嬢。彼女の持つ価値とは一体何か。
「そうね、しいて言えば頭脳かしら」
あっさりと答えられて拍子抜けする。
「なるほど、では見合いという形でなく一度会う機会などいただけませんでしょうか、そのうえで返事を決めさせてもらえますか?」
「まあ、いいでしょう」
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単なる男爵令嬢ではなく、それなりにうまみのある相手なら結婚相手として考えるのも悪くはない。
豪華な扉を閉めた後、彼はまだ見ぬ男爵令嬢に思いをはせた。
ヘくちっ。
小さなくしゃみの音がした。キャロルがハンカチで顔を押さえている。
「どうしたの、風邪?」
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「いや、ちょっと寒気が」
「家帰って寝てたら?」
お茶をハーブティーに変えるべきかアメリアは迷いつつ忠告してあげた。
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