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ディアナ視点 祈り

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 私は今後こそ、妹ルナが真実を悟ったと期待した。
 この状況が陰謀でないはずがない。だけどルナは「あの人だって色々辛いのよ、私がついててあげなきゃ」と言って、あの男をかばう。
 ルナはどうあっても騙されていることを理解しようとしない。
 愛しい人の前で私はひたすら涙にくれる。
「ディアナ、泣かないでくれ、愛している君だけをだ」
 恋人は沈痛な面持ちで私の髪を撫でた。
 だけど、どうしてもこの事態を理解したくない。
 この人以外に伴侶とできる人なんかいない。なのにどうしてあの性悪なあの人の血を引いていることすらいとわしいその弟に嫁げなどと言われなければならないのだろう。
「ルナもルナよ、こんな時こそ姉妹で共闘しなければならないのに」
「まさかルナ嬢が、デイビッドと結婚を許すつもりなのか」
 驚いた顔をするが。そんなわけがない。私たち姉妹で力を合わせてあの性根の腐った男を排除すべきだと私は思ったのだ。
「だけどあの子はいまだにあの男をかばうの、どうしてわかってくれないの」
 私は涙にくれる。
「それにセレスは」
 セレスはあの男のこともそして、マキシミリアンのことも分かっていない。
「どちらにしろグレイハウンド侯爵家の子息でしょう、兄だろうと弟だろうと同じよ、何を贅沢言っているの」そう言ってセレスはとても美しく笑った。「選り好みなんて貴族の娘のすることじゃないわ、我が家の位にあった家の息子と結婚するのがシュナウザー家の娘の義務よ」そう信じ切った顔で私に言う。
 そんなことで嘆く私は貴族の娘失格なのだと。
 ああこんなことなら貴族の娘などに生まれたくなかった。ただ愛するだけでいられたらどんなに幸せだろう。
「とにかく、僕に任せてくれ、ディアナ、たぶん裏事情は見当がついている。僕は決して君を放さないから」
 力強く私を抱きしめるあの人の手。愛というものを初めて知った私。
 ルナの抱いている想いが愛などと私は決して認めない。
 だってそうでしょう。あの男に対して井田杭思いが愛なんて美しいものであるはずがないのだから。
 ルナ、どうか目を覚ましてほしい。
 そしてセレス、貴族の娘失格と言われたとしても私はこの人との愛を貫いてみせる。それを笑いたいなら笑えばいい。
 だけど私は言える。愛を知らない貴女はとてもかわいそうなのだと。
 いつか愛を知ることができるように祈りましょう。可哀そうな私の妹たち。
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