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チャールズ・フォックステリア視点

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「お前はいったい何を考えているんだ」
 何度そう言ってもこいつはへらへらと笑っている。
 自分が何をしたのかわかっているんだろうか。こいつは自分の家を潰したんだ。
 貴族は家のために存在するといっても過言ではない。そして家の繁栄こそ自分の栄誉だと信じている。家のために家族を犠牲にすることはあっても家族のために家を損ねるなどありえない。
 こいつはその家を、自分の家族をその両方を平気で潰した。
「なんでそんなに怒ってるの?」
 きょとんとした顔でそいつは答えた。
「だってそっちの思った通りになったんじゃないの」
 こいつは何もかもわかっていた。自分の出した手紙、その情報があればこちらがグレイハウンド本家に介入し、のっとる理由になると。わからないのはなぜむざむざと乗っ取らせるような真似をしたのかだ。
「ほしかったものが手に入ったんでしょう、なんで怒るの?」
「お前はグレイハウンドの家をどう思っていたんだ?」
「犯罪の温床となった腐った家」
 その言葉は棒読みだ。
「何とかしようと思わなかったのか?」
「したよ、温床とした張本人を始末すればいい、でもそれは未成年の俺の手に余るからね、大人を頼っただけだよ」
 のっぺりとした、整った顔。まるで不出来な人形のようだ。今までは愚鈍のあかしだと思っていたが今はこいつが本当に不気味でしょうがない。
「それに、俺だって自分の身が大切だしね」
 気づかれてないと思った?
 声に出さないささやきを俺は確かに聞いた。
 いずれ俺がこいつを始末することを夢見ていたことをこいつは気が付いていたというのか。
「俺が何も持っていなくなったら、そっちも俺に手出しする理由がなくなるでしょ」
 愚鈍で、だからこそ理解しがたい、一応従兄弟の間柄のこいつを見ていると無性に殴りたくなった。
「お前、これからどうするつもりだ」
 無能で役立たずなお前が家から放り出されてどうしようもないだろう。
「まあ、最低限学園は卒業できるでしょ、さすがにあれを表ざたにできないし、当主は病のためとか言って交代させて、そのあと俺を放り出すかな、その場合働くための資格とか今一生懸命採ってるから、そのあたりは自分でやるよ」
「お前、いつからこの計画を温めていた?」
 きょとんとした顔で、あいつは呟く。
「え、思いついたら即実行したけど」
 じゃあなんで家を放り出された後の生活方法なんて考えているんだ。
「俺が考えていたのは家出だったから、でも、あの母親が、兄憎さに兄の恋人と結婚させようとしたからね、そんな真っ暗な人生ごめんだし」
 それは俺も分かるが。もともとそうしたことを考えていたとしか思えない。
「家も家族もなんだと思っていたんだ」
「決まっているでしょう、大嫌いなものだよ、ずっとなくなればいいと思っていたからね」
 そいつは年齢よりはるかに老いた顔でそう言った。
「家は貴族にとって」
「何を犠牲にしてもいいものだよね、自分以外。家なんてね犠牲にされた方にしてみれば呪いの塊なんだよ」
 あいつはそう言って外を見た。
 さっきあいつの母親が連れて行かれた方向だった。
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