呪具屋闇夜鷹

karon

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人形

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 女優のマティルダ。闇夜鷹に対して極めて激しい敵を抱いている女。
 そして、そうなるまでに何度か闇夜鷹に対して接触を試みていた。
 フェアリスは部隊を見るときはたいてい素顔で行く。そしてこれはという人材を見つけたら改めて接触を行う。
 マティルダが闇夜鷹に興味を持っているらしいという噂を聞いて、一応見に行ったことはあるのだが、その時の感想は可もなく不可もなくというところだ。
 いわゆる食指が動かなかったわけだ。
 闇夜鷹は客を選ぶ。気に入らない客はお断りすることにしている。
 基本的に金には困っていない。親から相続した財産と夫の持参金で一生遊んで暮らせる程度の財産はある。 
 だからというわけではないが、極力仕事をえり好みする。
 むろんそれができるだけの実力があるのは言うまでもないが。
 本当に才能がある相手なら、こちらから押しかけて仕事にかかることもある。
 向こうから望まれて、こちらも気に入って、そんなことはめったにない。まるで幸せな相思相愛の恋人ができるかのようなものだ。
 くだんの犯人がぶち壊してくれた仕事はその数少ない貴重な結果であったわけで。
 まったく冗談じゃない。どうしてこのお気に入りの仕事を自分の手でぶち壊さなければならないというのだろう。
 そして情報を吟味する。
 背の高い男。
 そっと父の仮面を手に取った。
 そっとその輪郭をなぞる。父の顔にぴったりはめるために。仮面の裏側は父の顔の輪郭そっくりに作ってある。
 そして自分の仮面を再びはめた。
 仕事をするときは素顔ではけしてしない。それは外に出る時のもならず自らの工房にこもって作業する時ですらだ。
 自らくみ上げた人形を作り替える。
 そして残り少ない魔力石を取り出した。
 魔力を極力盛り込んではいけない。最低限に終わらせなければならない。
 そして人形の内部に手を入れて様々な内容物を取り出す。
 そして内部の中身をそっくり取り換えてしまう。

 翌日、完成した人形の作動を確認する。魔力石は残り少ないため最低限に抑えて。
 動作は完全に問題ない。そして魔力石が動かせる時間を綿密に計測する。
 最低三日限り。それで完全に動かなくなる。
「まあ十分か」
 そして、闇夜鷹は人形を歩かせた。
 マルテネス、もしくはアリアンの住んでいたアパートの周囲を。
 その姿をできるだけ周辺住民に見せつけるために。
「細工は流々、仕上げを御覧じろ」
 昔父がそんなことを呟いていた。不意に同じ言葉が口をついて出た。
 人形を馬車に乗せて、動力を切る。
「三日あれば十分だろう」
 フェアリスはそう言って馬車を走らせた。
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