4 / 23
海を望んで
しおりを挟む
呉羽は海岸沿いを歩いていた。
砂に書いた愛の言葉さざ波が消していくそんな古い恋歌があったなと、思いながら。
しかしこの町に砂浜はなかった。
きっちりコンクリートで覆われた海岸をカモメが飛び交っている。
漁船の上で何やら忙しく働いている漁師さん。そんなところにこんな暇つぶしがいてごめんなさいと謝りたくなる。
「さて、ご飯にしよう」
そう言って、気力を奮い立たせる。
そしてつい条件反射でポケットを探る。ポケットのスマホが鳴るはずがない。スマホの電源はとっくに落としている。
自分を知っている人に会いたくなかったのだ。そして、自分を知っている誰かとも話をする気にもなれなかった。
呉羽は肩までの髪を後ろに撫でつけた。
髪をショートカットにしようと思ったがギリギリで思いとどまった。そこまで捨てられた女感を出すのは自分が惨めすぎた。
ふと視線を上げると、坂の上の自動車が視界に入った。
「どうしてあんなところに止めているんだろう」
黒々とした大型車が止まっている、路上駐車だがもともと車通りの少ない場所でそれほど迷惑ではないが、なんでよりによって坂の上に止めるんだろう。
そう思ったが呉羽の知ったことではないと苦笑して商店街のさびれた食堂に向かった。
その食堂はラーメンからオムライス、ハンバーグから親子丼と和洋中すべてを網羅するメニューを誇っていた。
いわゆる何でも屋というやつだ。
呉羽は稲荷蕎麦を頼んだ。ちょっと温かいものが食べたかったのだ。
暇つぶしに散歩をしたが、本当に見て歩くものは何もない。小さな町なので一二時間も歩けば見るべきものはすべ見てしまうのだ。
海はそれなりに奇麗だったが、残念ながらこの町からは海に夕日が沈む光景は見れないらしい。
さすがに海の馬鹿野郎と叫ぶベタな展開は避けたかった。
「食べたら、ホテルに戻ろう」
ネット環境は整っているが、呉羽はパソコンを持ってきていなかった。
スマホに電源を入れる気にもならない。
ホテルの前まで来たとき、さっき坂の上に泊まっていた自動車がいつの間にか自分の目の前にいたのに気が付いた。
大柄な男が車から降りてきて懐から銃を抜いた。
あまりの非現実感に呉羽は反応できなかった。
そのまま呉羽は横倒しになった。
撃たれた。一瞬そう錯覚した。
しかし呉羽の腕を引いて地面に引き倒した男と目が合い自分の錯覚に気が付いた。
そして、缶コーヒーを看護と相手の頭に投擲した。
外しようもない至近距離だったが、ものすごい音がした。
そして自分のスマホを取り出し、とっさに相手の自動車を撮影した。
慌てて、自動車がUターンをしてその場を後にする。
呉羽はその場に座り込んだまま一連の事柄を見ていた。
「大丈夫ですか」
呉羽は声をかけてきた相手を見た。
灰色の男だ。灰色の服で、背後のオーラも何となく灰色だと思う。その男の雰囲気がすべて灰色。
「何だったんだろう」
呆けたようにつぶやいた。
砂に書いた愛の言葉さざ波が消していくそんな古い恋歌があったなと、思いながら。
しかしこの町に砂浜はなかった。
きっちりコンクリートで覆われた海岸をカモメが飛び交っている。
漁船の上で何やら忙しく働いている漁師さん。そんなところにこんな暇つぶしがいてごめんなさいと謝りたくなる。
「さて、ご飯にしよう」
そう言って、気力を奮い立たせる。
そしてつい条件反射でポケットを探る。ポケットのスマホが鳴るはずがない。スマホの電源はとっくに落としている。
自分を知っている人に会いたくなかったのだ。そして、自分を知っている誰かとも話をする気にもなれなかった。
呉羽は肩までの髪を後ろに撫でつけた。
髪をショートカットにしようと思ったがギリギリで思いとどまった。そこまで捨てられた女感を出すのは自分が惨めすぎた。
ふと視線を上げると、坂の上の自動車が視界に入った。
「どうしてあんなところに止めているんだろう」
黒々とした大型車が止まっている、路上駐車だがもともと車通りの少ない場所でそれほど迷惑ではないが、なんでよりによって坂の上に止めるんだろう。
そう思ったが呉羽の知ったことではないと苦笑して商店街のさびれた食堂に向かった。
その食堂はラーメンからオムライス、ハンバーグから親子丼と和洋中すべてを網羅するメニューを誇っていた。
いわゆる何でも屋というやつだ。
呉羽は稲荷蕎麦を頼んだ。ちょっと温かいものが食べたかったのだ。
暇つぶしに散歩をしたが、本当に見て歩くものは何もない。小さな町なので一二時間も歩けば見るべきものはすべ見てしまうのだ。
海はそれなりに奇麗だったが、残念ながらこの町からは海に夕日が沈む光景は見れないらしい。
さすがに海の馬鹿野郎と叫ぶベタな展開は避けたかった。
「食べたら、ホテルに戻ろう」
ネット環境は整っているが、呉羽はパソコンを持ってきていなかった。
スマホに電源を入れる気にもならない。
ホテルの前まで来たとき、さっき坂の上に泊まっていた自動車がいつの間にか自分の目の前にいたのに気が付いた。
大柄な男が車から降りてきて懐から銃を抜いた。
あまりの非現実感に呉羽は反応できなかった。
そのまま呉羽は横倒しになった。
撃たれた。一瞬そう錯覚した。
しかし呉羽の腕を引いて地面に引き倒した男と目が合い自分の錯覚に気が付いた。
そして、缶コーヒーを看護と相手の頭に投擲した。
外しようもない至近距離だったが、ものすごい音がした。
そして自分のスマホを取り出し、とっさに相手の自動車を撮影した。
慌てて、自動車がUターンをしてその場を後にする。
呉羽はその場に座り込んだまま一連の事柄を見ていた。
「大丈夫ですか」
呉羽は声をかけてきた相手を見た。
灰色の男だ。灰色の服で、背後のオーラも何となく灰色だと思う。その男の雰囲気がすべて灰色。
「何だったんだろう」
呆けたようにつぶやいた。
0
あなたにおすすめの小説
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の死体は語りかける
炭田おと
恋愛
辺境の小部族である嶺依(りょうい)は、偶然参内したときに、元康帝(げんこうてい)の謎かけを解いたことで、元康帝と、皇子俊煕(しゅんき)から目をかけられるようになる。
その後、後宮の宮殿の壁から、死体が発見されたので、嶺依と俊煕は協力して、女性がなぜ殺されたのか、調査をはじめる。
壁に埋められた女性は、何者なのか。
二人はそれを探るため、妃嬪達の闇に踏み込んでいく。
55話で完結します。
悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~
shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて
無名の英雄
愛を知らぬ商人
気狂いの賢者など
様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。
それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま
幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
「最高の縁談なのでしょう?なら、かわってあげたら喜んでくれますよね!」
みっちぇる。
恋愛
侯爵令嬢のリコリスは20歳。立派な嫁きおくれである。
というのも、義母がなかなかデビューさせてくれないのだ。
なにか意図を感じつつも、周りは義母の味方ばかり。
そん中、急にデビュタントの許可と婚約を告げられる。
何か裏がある――
相手の家がどういうものかを知り、何とかしようとするリコリス。
でも、非力なリコリスには何も手段がない。
しかし、そんな彼女にも救いの手が……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる