11 / 14
愛はどこに
しおりを挟む
「一体何匹の猫を飼っていたんだろう」
猫を片付けたメイドに聞いた。
飼われていたのは三匹、黒猫と白猫、そして茶色い猫。
「この家に飼われている動物は不幸すぎるな」
血で汚れた毛皮を眺めながら呟く。
「あら、どうして」
私のつぶやきにこたえる声があった。
いつの間にか現れた彼女に思わず飛び上がった。
ぶちまけられたはらわたの匂いの中顔をしかめもせずに彼女はそこにいた。
どす黒く変色した絨毯を不思議そうに見ていた。
「白い猫が死んだのですよ」
「ああ、リリイね、死んじゃったのね」
まるで何も感じていないようだ。
「可愛がっていたのですか?」
「あれは誰だったかしら、私にぴったりだと送っていただいたのよ、きれいな毛皮は触り心地がよかったわ」
にこにこと笑いながらそう語る。
私は知人に愛猫家を何人か知っていたが飼っていた猫が死ぬといずれも憔悴していた。泣きはらした目をした老婦人を思い出す、確かその猫の死因は寿命であったが。
このような無残な惨殺であったなら発狂していたかもしれない。
だけど、猫の血痕を見る目には何の感情ものっていなかった。
「全部の猫を一人が?」
彼女は首をかしげる。
「いいえ、確か全部ほかの人から、でも誰だったかしら」
どうやら本気で忘れているようだ。そしておそらく彼女に対する嫌がらせだったのだろうがかなり猫に思い入れがないので猫なのに犬死していることになる。
哀れな。
「そういえば、庭にいた犬はどうなのですか?」
「昔からいたのではないかしら」
その言葉にヒューバートの言葉の正しさを悟る。
本当に最近ここに来たのだ。だから犬をいつから飼い始めたか知らないのだ。
しかし、さして思い入れのない猫を居候している家で飼っているというのはいかがなものなのだろうか。
ジュディはいつの間にか後ろに来ていた。
「あら、ジュディ久しぶりね」
彼女はそう言って笑いかける。
ジュディはそっと彼女に包みを渡した。大きさは枕ぐらいだろうか。亜麻布きっちりと包まれていた。
「これ、贈り物よ」
それを受け取った彼女は通り一遍のお礼を述べてそれを受け取った。
「いつもありがとう」
笑っているけれど心はここにあらずな顔で包みを抱える。
いったい何が入っているんだろう。
そう思ったがあえて聞かなかった。できる限り彼女と個人的な話はしたくないと思ったのだ。
私はあえて傍観者でいようと思った。
ジュディは彼女に対して深い友情を感じているといった風情だった。
贈り物を抱える彼女に温かみのある笑みを浮かべている。
もしかしたらあの贈り物を用意するために別行動をとっていたのだろうか。
惨殺された猫の生臭い残り香漂う空間で女同士の美しい友情の姿だった。
猫を片付けたメイドに聞いた。
飼われていたのは三匹、黒猫と白猫、そして茶色い猫。
「この家に飼われている動物は不幸すぎるな」
血で汚れた毛皮を眺めながら呟く。
「あら、どうして」
私のつぶやきにこたえる声があった。
いつの間にか現れた彼女に思わず飛び上がった。
ぶちまけられたはらわたの匂いの中顔をしかめもせずに彼女はそこにいた。
どす黒く変色した絨毯を不思議そうに見ていた。
「白い猫が死んだのですよ」
「ああ、リリイね、死んじゃったのね」
まるで何も感じていないようだ。
「可愛がっていたのですか?」
「あれは誰だったかしら、私にぴったりだと送っていただいたのよ、きれいな毛皮は触り心地がよかったわ」
にこにこと笑いながらそう語る。
私は知人に愛猫家を何人か知っていたが飼っていた猫が死ぬといずれも憔悴していた。泣きはらした目をした老婦人を思い出す、確かその猫の死因は寿命であったが。
このような無残な惨殺であったなら発狂していたかもしれない。
だけど、猫の血痕を見る目には何の感情ものっていなかった。
「全部の猫を一人が?」
彼女は首をかしげる。
「いいえ、確か全部ほかの人から、でも誰だったかしら」
どうやら本気で忘れているようだ。そしておそらく彼女に対する嫌がらせだったのだろうがかなり猫に思い入れがないので猫なのに犬死していることになる。
哀れな。
「そういえば、庭にいた犬はどうなのですか?」
「昔からいたのではないかしら」
その言葉にヒューバートの言葉の正しさを悟る。
本当に最近ここに来たのだ。だから犬をいつから飼い始めたか知らないのだ。
しかし、さして思い入れのない猫を居候している家で飼っているというのはいかがなものなのだろうか。
ジュディはいつの間にか後ろに来ていた。
「あら、ジュディ久しぶりね」
彼女はそう言って笑いかける。
ジュディはそっと彼女に包みを渡した。大きさは枕ぐらいだろうか。亜麻布きっちりと包まれていた。
「これ、贈り物よ」
それを受け取った彼女は通り一遍のお礼を述べてそれを受け取った。
「いつもありがとう」
笑っているけれど心はここにあらずな顔で包みを抱える。
いったい何が入っているんだろう。
そう思ったがあえて聞かなかった。できる限り彼女と個人的な話はしたくないと思ったのだ。
私はあえて傍観者でいようと思った。
ジュディは彼女に対して深い友情を感じているといった風情だった。
贈り物を抱える彼女に温かみのある笑みを浮かべている。
もしかしたらあの贈り物を用意するために別行動をとっていたのだろうか。
惨殺された猫の生臭い残り香漂う空間で女同士の美しい友情の姿だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる