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第十六章
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「ヒローイン様、あまりに意外なお話故私はとてもついていけませんわ」
「そうね、だけど確かよ」
ヒローインはしかつめらしい顔をした。
「だけど、ベネディクトさまはビアトリスに思いを伝えるつもりはないのですって、だって嫌われているのはわかっているもの。それなのに気持ちを伝えてしまったってかえってビアトリスに傷つけられてしまうだけ。あの人本当に容赦というものを知らないのだから」
「まあ、そうですわね、本当に」
ひとたび毒舌を履けばとめどないというビアトリスの性格をよく知っていたアリシラはしみじみと頷いた。
「クローディス様も随分と悩んでおられるの。あの方は本当に友情に篤いのですもの友が叶わぬ恋に悩んでいるのに自分だけが幸せになるなんてとても後ろめたいなんておっしゃるの。もちろんそれはあの方のせいではないのだけど」
「そうですわね、確かに情に篤い方のように思えますわクローディス様は」
ヒローインはそして悩ましげにため息をつく。
「ああ、どうしてビアトリスはあんなにもかたくななのかしら、ほんの少し微笑んで差し上げるだけであの方は随分と言葉を柔らかくなさる気がするのに」
「そうですわね、ビアトリス様のお口が過ぎるのにも困ったものですわ」
「それなのに、そんなビアトリスをベネディクトさまは愛していらっしゃるなんて、本当の愛だと思うわ。あんなにも深い愛があるかしら」
「本当にそうですわね」
ヒローインは何度も身振り手振りで悩みを吐き出した。
「あんなにも悩んでおられるベネディクトさまを私も見てはいられない。クローディス様がおられるから私が慰めて差し上げるわけにもいかないの。ああどうしてビアトリスはあんなにもかたくななのかしら、ベネディクト様よりビアトリスを愛してくれる人なんてこれから一生現れないでしょうに」
「いったい何の茶番なの、あの男のことなんて」
ビアトリスは物陰からヒローインとアリシラの様子を見ていた。
「選りにもよってどうしてあの男のことなの、それにまさかそんなことありえない」
そう言いながら頭痛をこらえるように頭を抱えた。
「だけど、そうよそれならヒローインが嘘をつく、それだってそんなことありえない。ああまったくどちらがよりあり得ないのかしら」
そう言ってビアトリスは爪を噛んだ。
「だってそうでしょう、ビアトリスに嘘をつくような頭はないわ。そしてそんなことをするような発想だってあるはずない」
そして何度もかぶりを振った。
「だからと言ってあの男が誠実でだれよりも私を愛してくれるなんてとんだ戯言だわ。私をあの男に差し出してどうするというの」
檻の中の獣のようにいらいらと爪を噛みながらビアトリスはしばらくその場を回っていた。
「私がひどい女なのに愛してくれるね。ひどい女で悪かったと謝るなんて……」
漸く立ち止まりビアトリスは空を見つめてしばらく固まっていた。
「これは問題よ、どうあってもすぐに答えを出すなんてありえない。それなら今はできること、しばらく考えましょう」
「そうね、だけど確かよ」
ヒローインはしかつめらしい顔をした。
「だけど、ベネディクトさまはビアトリスに思いを伝えるつもりはないのですって、だって嫌われているのはわかっているもの。それなのに気持ちを伝えてしまったってかえってビアトリスに傷つけられてしまうだけ。あの人本当に容赦というものを知らないのだから」
「まあ、そうですわね、本当に」
ひとたび毒舌を履けばとめどないというビアトリスの性格をよく知っていたアリシラはしみじみと頷いた。
「クローディス様も随分と悩んでおられるの。あの方は本当に友情に篤いのですもの友が叶わぬ恋に悩んでいるのに自分だけが幸せになるなんてとても後ろめたいなんておっしゃるの。もちろんそれはあの方のせいではないのだけど」
「そうですわね、確かに情に篤い方のように思えますわクローディス様は」
ヒローインはそして悩ましげにため息をつく。
「ああ、どうしてビアトリスはあんなにもかたくななのかしら、ほんの少し微笑んで差し上げるだけであの方は随分と言葉を柔らかくなさる気がするのに」
「そうですわね、ビアトリス様のお口が過ぎるのにも困ったものですわ」
「それなのに、そんなビアトリスをベネディクトさまは愛していらっしゃるなんて、本当の愛だと思うわ。あんなにも深い愛があるかしら」
「本当にそうですわね」
ヒローインは何度も身振り手振りで悩みを吐き出した。
「あんなにも悩んでおられるベネディクトさまを私も見てはいられない。クローディス様がおられるから私が慰めて差し上げるわけにもいかないの。ああどうしてビアトリスはあんなにもかたくななのかしら、ベネディクト様よりビアトリスを愛してくれる人なんてこれから一生現れないでしょうに」
「いったい何の茶番なの、あの男のことなんて」
ビアトリスは物陰からヒローインとアリシラの様子を見ていた。
「選りにもよってどうしてあの男のことなの、それにまさかそんなことありえない」
そう言いながら頭痛をこらえるように頭を抱えた。
「だけど、そうよそれならヒローインが嘘をつく、それだってそんなことありえない。ああまったくどちらがよりあり得ないのかしら」
そう言ってビアトリスは爪を噛んだ。
「だってそうでしょう、ビアトリスに嘘をつくような頭はないわ。そしてそんなことをするような発想だってあるはずない」
そして何度もかぶりを振った。
「だからと言ってあの男が誠実でだれよりも私を愛してくれるなんてとんだ戯言だわ。私をあの男に差し出してどうするというの」
檻の中の獣のようにいらいらと爪を噛みながらビアトリスはしばらくその場を回っていた。
「私がひどい女なのに愛してくれるね。ひどい女で悪かったと謝るなんて……」
漸く立ち止まりビアトリスは空を見つめてしばらく固まっていた。
「これは問題よ、どうあってもすぐに答えを出すなんてありえない。それなら今はできること、しばらく考えましょう」
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