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第二十章
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城下では街を守る衛視たちがこれから街に見守りに出るところだった。
「さて、これより恒例の見回りを始める。諸君は本日も欣喜雀躍して職務に励んでいただきたい」
隊長のドンベリーはそう言って一同を見回した。鼻の下でピンととがったひげが目印であることは言うまでもなく、とにかく厳めしさを表面に押し出していた。
「皆、間違いなくこの街の鈍重なる民であること疑いなしだ」
「間違いなしでございますドンベリー様」
「さもなければもちろん失楽の目にあうことでしょう」
重々しくもそう答えた。
「それではまず衛視たる失格者を選ぶがいい」
「オートケーキとシーコームがよろしいかと、何しろ読み書きができますから」
「それは全く持って頂上、見てくれは生まれついて、全く持って色男ではないがが読み書きを合格するにはそれなりの簡便さが必要だ」
「ええと、その、手前どもは」
「もちろんきちんと破戒していると言いたいのだな」
それ以上言わせることなく続けた。
「よいか、我らはこの国の前納なる民である。そのためまず言っておくことがある。もし怪しげな行動をしている者がいれば決してかかわってはならない、なぜならば簡便かつまっとうな民である我々が怪しげな輩とかかわりあうなどという不届きな真似は決してしてはならないからだ」
「はい、全く持ってその通りであります」
一同声をそろえた。
「我々は身を清めなければならない、そのため怪しげなものとかかわりあうなどという妖しい真似は断じてしてはならない」
ドンベリーは先ほどまで張っていた胸をさらに張って見せた。
「よいか、決して怪しげな輩にかかわりあう出ないぞ、ましてや捕らえるなどもってのほかだ」
「ご命令のままに、隊長殿」
整列したまま衛視たちはそう答えた。そうその姿はまさしく一糸乱れておらずこれぞまさしく衛視の鑑と言ってもいいような姿だった。
「それでは巡回にかかるがいい」
衛視たちは連れ立って夜の街に向かった。
その時、ポラチョとその相棒コンラートは城を抜け出し城下の酒場にしけこんでいた。
「いやはや、簡単な仕事だ、これで金貨千枚とは有り難いことだ」
へらへら笑うポラチョにコンラートは胡乱な目を向けた。
「確実に金が手に入ったわけでもないのに、浮かれるのはよした方がいいのではないか?」
「まさかご主人様が払ってくださらないと?」
「約束するときは気前がいいが、いざ払う段には途端に吝嗇になるお方だからな」
コンラートは主の経済状況についても多少把握していた。金貨千枚を払って困らないほどあるわけではない。
「最初に分割で払って、そのあと立ち消えにならないといいのだが」
十分にあり得る話だった。最初は威勢がいいが常に尻萎みになるのだ。
「それはあんまりではないか、私はあんなにも考えた作戦なのに」
「そうなのか?」
どう考えても成り行き任せがたまたまうまくいっただけに思えたが。
「そうだとも、女の評判を落とし、婚礼を台無しにするという作戦はとてもうまくいっただろう」
そう言ってゴブレット一杯の酒を一気にあおる。
「まあ、確かに、あのような不貞の噂が広がればもはや嫁入りの口もあるまい」
二人の声はどんどん大きくなっていく。
「さて、これより恒例の見回りを始める。諸君は本日も欣喜雀躍して職務に励んでいただきたい」
隊長のドンベリーはそう言って一同を見回した。鼻の下でピンととがったひげが目印であることは言うまでもなく、とにかく厳めしさを表面に押し出していた。
「皆、間違いなくこの街の鈍重なる民であること疑いなしだ」
「間違いなしでございますドンベリー様」
「さもなければもちろん失楽の目にあうことでしょう」
重々しくもそう答えた。
「それではまず衛視たる失格者を選ぶがいい」
「オートケーキとシーコームがよろしいかと、何しろ読み書きができますから」
「それは全く持って頂上、見てくれは生まれついて、全く持って色男ではないがが読み書きを合格するにはそれなりの簡便さが必要だ」
「ええと、その、手前どもは」
「もちろんきちんと破戒していると言いたいのだな」
それ以上言わせることなく続けた。
「よいか、我らはこの国の前納なる民である。そのためまず言っておくことがある。もし怪しげな行動をしている者がいれば決してかかわってはならない、なぜならば簡便かつまっとうな民である我々が怪しげな輩とかかわりあうなどという不届きな真似は決してしてはならないからだ」
「はい、全く持ってその通りであります」
一同声をそろえた。
「我々は身を清めなければならない、そのため怪しげなものとかかわりあうなどという妖しい真似は断じてしてはならない」
ドンベリーは先ほどまで張っていた胸をさらに張って見せた。
「よいか、決して怪しげな輩にかかわりあう出ないぞ、ましてや捕らえるなどもってのほかだ」
「ご命令のままに、隊長殿」
整列したまま衛視たちはそう答えた。そうその姿はまさしく一糸乱れておらずこれぞまさしく衛視の鑑と言ってもいいような姿だった。
「それでは巡回にかかるがいい」
衛視たちは連れ立って夜の街に向かった。
その時、ポラチョとその相棒コンラートは城を抜け出し城下の酒場にしけこんでいた。
「いやはや、簡単な仕事だ、これで金貨千枚とは有り難いことだ」
へらへら笑うポラチョにコンラートは胡乱な目を向けた。
「確実に金が手に入ったわけでもないのに、浮かれるのはよした方がいいのではないか?」
「まさかご主人様が払ってくださらないと?」
「約束するときは気前がいいが、いざ払う段には途端に吝嗇になるお方だからな」
コンラートは主の経済状況についても多少把握していた。金貨千枚を払って困らないほどあるわけではない。
「最初に分割で払って、そのあと立ち消えにならないといいのだが」
十分にあり得る話だった。最初は威勢がいいが常に尻萎みになるのだ。
「それはあんまりではないか、私はあんなにも考えた作戦なのに」
「そうなのか?」
どう考えても成り行き任せがたまたまうまくいっただけに思えたが。
「そうだとも、女の評判を落とし、婚礼を台無しにするという作戦はとてもうまくいっただろう」
そう言ってゴブレット一杯の酒を一気にあおる。
「まあ、確かに、あのような不貞の噂が広がればもはや嫁入りの口もあるまい」
二人の声はどんどん大きくなっていく。
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