ダークアクターMOB

karon

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傍観者の存在

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 しかし、敦の真意が読めない。
 綺羅は敦と芸風がかなり違うので役柄で被ることはまずない。敦は体格がよく男らしい顔立ちをしているし。綺羅はどこか性別不詳の妖しさが売りで、体格は女装が板につくほど細いとだけ言っておこう。ちなみに俺は敦ほどではないが綺羅より体格がいい。
 だから敦が綺羅を潰す必然性がない。
「さっきの美人誰だ?」
 俺はとっさに呟いた。
「さてね、まあ忘れたないっぱいいるから」
 敦はそう言って何やらねっとりとした視線を綺羅に向ける。綺羅はその視線に気づいていないはずはないのにそれを受け流すようにカクテルを飲んでいた。
 その姿は地味な格好なのに品よくまとめたかのようにも見える。見てくれがいいとこういう時不公平だとつくづく思う。
 そしてさっきの女のことを思い出した。
 けっこう美人だった。そしてあの敦の態度。薬漬けにして食い物にしているんだろう。その対象を綺羅に広げたのか?
 綺羅は奇麗だ。敦は男は範疇外だから自分では綺羅を相手にしなくてもそういう趣味の連中に差し出してそいつらから巻き上げることもできるのではないだろうか。
 俺は何とも酸っぱいものを胃に感じた。
 綺羅は俺たちの劇団でも人気の役者だ。それをそんな形で利用しようなんて、もはや敦の目に映っているのは金だけなのか。
 俺は敦を始末する。
 もう友達じゃない。仲間じゃない。俺の演劇への道を妨害する存在になり果てた敦を始末する。
 金のためじゃなくて演劇のために俺はそう決意した。
 俺は敦のやることから目を放さないようにした。
 綺羅を敦の好きにされるわけにはいかない。
 綺羅はカクテルという名のミックスジュースをちびちびと飲みながら俺たちを眺めている。
 透明なまなざしという感じで何を考えているか読めない。この状況をどれだけわかっているのか。すべて気が付いているのかいないのか。
「Mも飲んだら?」
 普段の飲み会なら俺もビールの数杯ぐらいは飲む。ただしスピリッツは飲まない。綺羅レベルではないが俺も酒が強い方ではないのだ。しかしこの場では何か飲んだ方がいいかもしれないが。
「シャーリーテンプルを」
 女優の名前のついたカクテルを頼む。もちろんノンアルコールだ。
 この状況で判断能力の落ちるアルコールをとるなんて言語道断だ。その程度の危機意識は殺し屋じゃなくても持っている。
 一口飲んで軽く息を止めた。
 そしてちょっと顔を赤らめるようにする。
 飲んでいるのがノンアルコールだと分からないようにする偽装だ。
 隣にいる敦だけをだませればいいのだ。
 そして俺は横目で綺羅を観察した。
 綺羅は一切を俺に悟らせない。だからこそ薄々であれ自体に感づいていると判断した。
 最初から演技に入っている。素を全く見せない。しかしこの場合別の意味で厄介だ。綺羅のそばで仕事をした場合どれだけごまかせるか。
 しばらく悩んでいたがまた新しい客が入ってきた。
 思わずそれに気をとられた。
 それはただでさえ怪しい雰囲気の人間しかいない店内でも際立って危なそうな格好をした男だった。
 かなり涼しい気候なのに、上はタンクトップ一枚。見せつけるような筋肉。下は皮のパンツ。そしてごついブーツ。そしてなんだかまがまがしい感じのコンバットナイフをむき身で持っていた。

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