ダークアクターMOB

karon

文字の大きさ
7 / 14

状況を把握

しおりを挟む
 やけに露出の多い恰好をした女が敦のポケットを探る。
 美人だが顔に締まりがない。敦は笑ってポケットを探らせている。
 女が敦のポケットから小さな銀色の情剤入りのケースを取り出した。何となく薬屋でもらうやつよりざらついた印象があった。
 敦はにんまりと女に笑いかけた。女はむき出しの現金を敦のポケットに詰め込む。
 このやり取りを見れば敦が何をやらかしたのか見当がついた。よりにもよって薬の売人とは。
 俺はやれやれ深いため息をついた。
 ある種の自由業の方たちに目をつけられたらしい。そして俺の利害のためにも敦に死んでもらわなければならないようだ。
 メンバーが薬の売人なんて最低な商売をしているなんて知られたらうちの劇団は終わりだ。
 劇団興行にそうした負の一面があるということはたまに知られているけれど、ましてや芸能界に危ない薬ははびこっているけれど。
 敦は看板役者で、いつもスポットライトの当たる役柄で、だけど強い光を与えられたからこそ影は長く尾を引くのだろうか。
 綺羅もどこか気後れした様子できょろきょろとあたりを見回している。
「あの、おトイレ?」
 俺にすがるような目で綺羅は一緒に行ってという顔をする。
 やれやれ、とはいえこの場所で警戒する気持ちはわかる。俺と違って綺羅なら下手に一人になったら変質者の餌食になりかねない。
 ろくに掃除をしていないのかどこか据えた臭いがこもったトイレにしばらく過ごしたが綺羅が水音とともに個室から出てきた。
 幸いトイレに待ち伏せしている変質者はいなかったが警戒を怠るべきではないだろう。
「あのさ、まさか敦って」
 それ以上は言えないのか綺羅は何とも言えないような顔をした。
「多分、そうなんだろうな」
 俺たちは二人とも同じことを考えていることは間違いないだろう
「いや、なんか困ったことになったな」
「まったくだ」
 俺としては断固として敦の誘いを拒否して一人で帰ってほしかったが。こっちの予定も狂いっぱなしだし。
 敦がいるカウンターに戻ると敦は綺羅に用意しておいたらしい水割りロックを進めようとしていた。
 綺羅が水割りなんか飲むわけがないし、この状況ではアルコールアレルギーでなくても怖くて飲めない。
 まさかと思うがなんか入れたんじゃないだろうな。
「敦、これおごりかな、うれしいな」
 綺羅はグラスをとろうとして取り落とす。
 絶対わざとだがあの時の驚いた表情はさすがとしか思えない。綺羅の奴腕を上げたな。
「悪い、やっちまった」
 きまり悪そうな顔をしてこぼれた酒をその辺に置いてあったおしぼりで拭きだす。
 俺も慌てたふりをして別の手ぬぐいをとった。
「あれ、ちょっと調子悪いのかな」
 綺羅はそう言っていかにも気まずいという顔をする。
「気にすんなよ」
 敦はそう言ったが明らかにとりつくろえていない。こっちは腕を下げたな。まあどっちかというと技術より目立つ顔で、そして動きが美しいところが売りだし。
「悪い、じゃあカクテル頼んでいい? シンデレラをお願いします」
 ちゃっかりノンアルコールカクテルを頼んで綺羅はその場をごまかすことに成功した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...