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新しい現在
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自分の寝台で目覚めたテオドールはゆっくりと身を起こす。
「妙な夢を見た」
そう呟いたテオドールの眼前で、見慣れない青いカーテンが目の前で揺れていた。
そのカーテンは、部屋の真ん中で区切るようにつるされている。
「こんなものあったっけ?」
そう思ってカーテンをめくった。その帳の向こうには今度は薄薔薇色のカーテンが下りている。
薄薔薇色のカーテンをめくれば、その向こうに、同じように机と寝台があり、寝台の上で身を起こしていたのはテオドラだった。
テオドラはきょとんとした顔でテオドールを見ていた。そして手元の枕をつかむとやにわにテオドールに投げつけた。
まともに顔面に食らってテオドールはしりもちをついた。
「着替えてないわよ、なんで覘いてんの、テオドール」
とげとげしくテオドラはそう言って、薄薔薇色のカーテンを閉じた。
「え?」
思わず周囲を見回す。あの極彩色の道化、時の妖精の姿を探して。
扉が開いて、見慣れた侍女が入って生きた。
「あの、ダリア」
「どうしましたか、テオドールぼっちゃん?」
明らかに挙動不審なテオドールを怪訝そうに見る。
「いや、その」
ダリアは小さくため息をつくと、そのままカーテンを開く。
「お嬢様、お支度の時間です。起きていらっしゃいますか」
「起きてるわよ」
カーテンの向こうにダリアが消える。
テオドールはなおも周囲を見回し、時の妖精の姿を探した。
ダリアに手伝わせて支度をしたテオドラと、動揺しながらそれでもいつもの習慣通り、自分も着替えた。
「何よ、テオドール、人の寝起きを除いて、レディに失礼だと思わないの」
テオドラが憤然とした様子で詰め寄ってきた。
「何がレディだ、餓鬼」
「同い年で何言ってんのよ」
テオドラがかみついてきた。
不意に、頭を誰かにつかまれた。そのまま一気にテオドラの頭にたたきつけられる。
「朝っぱらから何を喧嘩している、テオども」
いつの間にか来た父親が、腕組みをして自分とテオドラを見下ろしていた。
こぶのできた頭をさすりながら、父を見上げる。
「貴方、何を朝から」
涼やかな女性の声。振り返ると、そこにいたのは見慣れた母親ではなかった。そこにいたのはセシリア。
あわい空色のスカーフの下には、あのうじゃけていた傷跡があるはずだ。
「二人とも、朝ごはんですよ」
やわらかい笑みを浮かべてセシリアは食堂に入っていく。
「どうしました、坊っちゃん」
父親の側近が、その場に立ち尽くしているテオドールに話しかけた。
「あの、テオドラは」
「姉上がどうしたんですか?」
「姉上?」
「テオドラお嬢様は貴方の双子の姉上でしょう」
あっさりと言われ、テオドールはその場で固まった。
セシリアが生き延びたため、現在が変わってしまった。本来なら、テオドラと交代で消えるはずだった自分は、なぜか、テオドラの双子の弟として、ここで生きている。
事態は把握した。だが、それならそれで説明くらいしろと時の妖精をののしる。
時の妖精はもう姿を現さない。不幸なテオドールは消えてしまったから。
それでも、あの原色の衣装の端でも見えないかと、テオドールは周囲を見回した。
「ご飯に行こう」
テオドラが声をかける。
そしてあの時のようにテオドラがテオドールの腕をつかんだ。
「借りは作りたくないの」
不意に聞こえた言葉に、目を瞬かせると、テオドラは怪訝そうにテオドールを見た。
「今日はちょっとおかしいよ」
テオドールは小さく笑った。
「いや、ご飯に行こうか」
二人は食堂に駆け込んだ。
「妙な夢を見た」
そう呟いたテオドールの眼前で、見慣れない青いカーテンが目の前で揺れていた。
そのカーテンは、部屋の真ん中で区切るようにつるされている。
「こんなものあったっけ?」
そう思ってカーテンをめくった。その帳の向こうには今度は薄薔薇色のカーテンが下りている。
薄薔薇色のカーテンをめくれば、その向こうに、同じように机と寝台があり、寝台の上で身を起こしていたのはテオドラだった。
テオドラはきょとんとした顔でテオドールを見ていた。そして手元の枕をつかむとやにわにテオドールに投げつけた。
まともに顔面に食らってテオドールはしりもちをついた。
「着替えてないわよ、なんで覘いてんの、テオドール」
とげとげしくテオドラはそう言って、薄薔薇色のカーテンを閉じた。
「え?」
思わず周囲を見回す。あの極彩色の道化、時の妖精の姿を探して。
扉が開いて、見慣れた侍女が入って生きた。
「あの、ダリア」
「どうしましたか、テオドールぼっちゃん?」
明らかに挙動不審なテオドールを怪訝そうに見る。
「いや、その」
ダリアは小さくため息をつくと、そのままカーテンを開く。
「お嬢様、お支度の時間です。起きていらっしゃいますか」
「起きてるわよ」
カーテンの向こうにダリアが消える。
テオドールはなおも周囲を見回し、時の妖精の姿を探した。
ダリアに手伝わせて支度をしたテオドラと、動揺しながらそれでもいつもの習慣通り、自分も着替えた。
「何よ、テオドール、人の寝起きを除いて、レディに失礼だと思わないの」
テオドラが憤然とした様子で詰め寄ってきた。
「何がレディだ、餓鬼」
「同い年で何言ってんのよ」
テオドラがかみついてきた。
不意に、頭を誰かにつかまれた。そのまま一気にテオドラの頭にたたきつけられる。
「朝っぱらから何を喧嘩している、テオども」
いつの間にか来た父親が、腕組みをして自分とテオドラを見下ろしていた。
こぶのできた頭をさすりながら、父を見上げる。
「貴方、何を朝から」
涼やかな女性の声。振り返ると、そこにいたのは見慣れた母親ではなかった。そこにいたのはセシリア。
あわい空色のスカーフの下には、あのうじゃけていた傷跡があるはずだ。
「二人とも、朝ごはんですよ」
やわらかい笑みを浮かべてセシリアは食堂に入っていく。
「どうしました、坊っちゃん」
父親の側近が、その場に立ち尽くしているテオドールに話しかけた。
「あの、テオドラは」
「姉上がどうしたんですか?」
「姉上?」
「テオドラお嬢様は貴方の双子の姉上でしょう」
あっさりと言われ、テオドールはその場で固まった。
セシリアが生き延びたため、現在が変わってしまった。本来なら、テオドラと交代で消えるはずだった自分は、なぜか、テオドラの双子の弟として、ここで生きている。
事態は把握した。だが、それならそれで説明くらいしろと時の妖精をののしる。
時の妖精はもう姿を現さない。不幸なテオドールは消えてしまったから。
それでも、あの原色の衣装の端でも見えないかと、テオドールは周囲を見回した。
「ご飯に行こう」
テオドラが声をかける。
そしてあの時のようにテオドラがテオドールの腕をつかんだ。
「借りは作りたくないの」
不意に聞こえた言葉に、目を瞬かせると、テオドラは怪訝そうにテオドールを見た。
「今日はちょっとおかしいよ」
テオドールは小さく笑った。
「いや、ご飯に行こうか」
二人は食堂に駆け込んだ。
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