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それでも語り継がれた
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俺はコホンと咳払いをした。
「行っておくけど、天武天皇の血筋がたたられているというのはそのあと数十年語り継がれてきたんだぞ」
「そなの?」
「天武天皇の血を引く最後の天皇である称徳天皇の死後、即位したのが天智天皇の孫にあたる光仁天皇だ。その次が桓武天皇。ここで、天武の祟られ話をこの時代の人間が信じていた証拠がある。光仁天皇に井上皇后がいた。そしてその皇后は皇子を産んでいる。普通ならこの皇子が即位するしかし即位したのは朝鮮半島から来た妾腹の皇子、それが桓武天皇だったりする」
「あれ、そういえば井上皇后って聞いたことあるわ、確か怨霊十選に出てくるはず」
オカルトマニアの本領をようやく発揮した。
「そう、冤罪着せられて自殺に追い込まれた。この人天武天皇の子孫なんだよ」
「まさか、それで?」
俺はほうじ茶を飲み干した。
「とんでもない話だろ、皇族皇后の産んだ子供であっても天武の血を引く皇子を即位させない。それくらいなら半島出身の女の子供を即位させるって」
「それはまた」
それほどまでに当時は怨霊はリアルな存在だった」
俺はそう言って太郎に目をやった。こいつみたいに遊びでどうこうできる存在じゃなかったんだぞと。
「それで、本命の真犯人は誰なんだよ」
すべてを始めた張本人は誰かと尋ねる。
「真犯人か。この場合主犯だな。これは最初からわかっているだろう」
俺はそうして絵を指さした。
「入鹿の首が飛びついたのは誰だ」
御簾にかじりついた入鹿の首。
「皇極天皇?」
この絵を見て、入鹿と皇極天皇ができていたとか言う馬鹿がいたらしいが。源義経の鍬形にかじりついている生首の絵を見て恋愛関係を想像する馬鹿がいたそうだがとんでもない。
これは告発。すべての惨劇の幕を引いた人間を指示している。
「彼女こそ、主犯だ」
「天皇になったのは彼女自身と彼女の弟と息子たち、最も得をしたのが彼女だ」
俺はこの絵に描かれたただ一人の女を見た。
「漢皇子は用明天皇の曾孫ではない、誰の息子だったか、大化の改新で、韓人が入鹿を殺したと古人大兄皇子は叫んだそうだ。韓人は誰だ?」
「この場合、鎌足?」
「その可能性もある。だが、韓人と漢皇子が呼ばれていたとしたら?」
太郎は首をかしげた。
「皇極天皇と韓人の間にできたのが漢皇子だったとしたら?」
「それ、自由恋愛じゃないよな」
「蘇我氏に差し出された可能性もあるな」
「ひどくね?」
「だからこそ、復讐に走ったんじゃねえの」
そう、蘇我氏も復讐されるだけのことはしているのだ。彦人大兄皇子にも、その子孫にも。
「それに、厩戸皇子、まあ暫定的に言うけど、この人が即位できなかったのは推古天皇がやたら長生きしてしまったからだろ、つまり蘇我系皇子を即位させるために皇極天皇に長生きしてもらいたくなかったとしたら、皇極天皇の命は推古天皇より明らかに軽いだろうしな」
太郎はうなる。
「山背大兄皇子と古人大兄皇子、どちらが即位するかという争いが起きたとき皇極天皇の健康状態は特に悪かったわけじゃないし、退位って、最初の例が皇極天皇なんだぜ」
大化の改新では彼女は傍観者だということになっている、そう歴史に記されている。
だが、地方では、長野県の善光寺では皇極天皇は地獄にいるという。
長野県あたりは当時地の果てだと言われていた。だから、やっと言えたのだと思う。天皇家の力の及ばぬところでやっということができた。彼女が主犯だと。
「日本書紀は記されてから百年以上皇族しか読むことのできない書物だったらしい、ほかの貴族に読ませるようになったのは平安時代後半になってから、たぶん、すべてを知っている人間が死に絶えるのを待っていたんだろう。言うまでもないが、当時は周知の事実だったんだ」
「そういえば紫式部って、日本書紀の局って呼ばれてたな、それくらいか」
「まあ、それでも子供にそっと家の中だけで語り継がれていたんだろう」
俺は絵の中の入鹿の首を撫でた。
「行っておくけど、天武天皇の血筋がたたられているというのはそのあと数十年語り継がれてきたんだぞ」
「そなの?」
「天武天皇の血を引く最後の天皇である称徳天皇の死後、即位したのが天智天皇の孫にあたる光仁天皇だ。その次が桓武天皇。ここで、天武の祟られ話をこの時代の人間が信じていた証拠がある。光仁天皇に井上皇后がいた。そしてその皇后は皇子を産んでいる。普通ならこの皇子が即位するしかし即位したのは朝鮮半島から来た妾腹の皇子、それが桓武天皇だったりする」
「あれ、そういえば井上皇后って聞いたことあるわ、確か怨霊十選に出てくるはず」
オカルトマニアの本領をようやく発揮した。
「そう、冤罪着せられて自殺に追い込まれた。この人天武天皇の子孫なんだよ」
「まさか、それで?」
俺はほうじ茶を飲み干した。
「とんでもない話だろ、皇族皇后の産んだ子供であっても天武の血を引く皇子を即位させない。それくらいなら半島出身の女の子供を即位させるって」
「それはまた」
それほどまでに当時は怨霊はリアルな存在だった」
俺はそう言って太郎に目をやった。こいつみたいに遊びでどうこうできる存在じゃなかったんだぞと。
「それで、本命の真犯人は誰なんだよ」
すべてを始めた張本人は誰かと尋ねる。
「真犯人か。この場合主犯だな。これは最初からわかっているだろう」
俺はそうして絵を指さした。
「入鹿の首が飛びついたのは誰だ」
御簾にかじりついた入鹿の首。
「皇極天皇?」
この絵を見て、入鹿と皇極天皇ができていたとか言う馬鹿がいたらしいが。源義経の鍬形にかじりついている生首の絵を見て恋愛関係を想像する馬鹿がいたそうだがとんでもない。
これは告発。すべての惨劇の幕を引いた人間を指示している。
「彼女こそ、主犯だ」
「天皇になったのは彼女自身と彼女の弟と息子たち、最も得をしたのが彼女だ」
俺はこの絵に描かれたただ一人の女を見た。
「漢皇子は用明天皇の曾孫ではない、誰の息子だったか、大化の改新で、韓人が入鹿を殺したと古人大兄皇子は叫んだそうだ。韓人は誰だ?」
「この場合、鎌足?」
「その可能性もある。だが、韓人と漢皇子が呼ばれていたとしたら?」
太郎は首をかしげた。
「皇極天皇と韓人の間にできたのが漢皇子だったとしたら?」
「それ、自由恋愛じゃないよな」
「蘇我氏に差し出された可能性もあるな」
「ひどくね?」
「だからこそ、復讐に走ったんじゃねえの」
そう、蘇我氏も復讐されるだけのことはしているのだ。彦人大兄皇子にも、その子孫にも。
「それに、厩戸皇子、まあ暫定的に言うけど、この人が即位できなかったのは推古天皇がやたら長生きしてしまったからだろ、つまり蘇我系皇子を即位させるために皇極天皇に長生きしてもらいたくなかったとしたら、皇極天皇の命は推古天皇より明らかに軽いだろうしな」
太郎はうなる。
「山背大兄皇子と古人大兄皇子、どちらが即位するかという争いが起きたとき皇極天皇の健康状態は特に悪かったわけじゃないし、退位って、最初の例が皇極天皇なんだぜ」
大化の改新では彼女は傍観者だということになっている、そう歴史に記されている。
だが、地方では、長野県の善光寺では皇極天皇は地獄にいるという。
長野県あたりは当時地の果てだと言われていた。だから、やっと言えたのだと思う。天皇家の力の及ばぬところでやっということができた。彼女が主犯だと。
「日本書紀は記されてから百年以上皇族しか読むことのできない書物だったらしい、ほかの貴族に読ませるようになったのは平安時代後半になってから、たぶん、すべてを知っている人間が死に絶えるのを待っていたんだろう。言うまでもないが、当時は周知の事実だったんだ」
「そういえば紫式部って、日本書紀の局って呼ばれてたな、それくらいか」
「まあ、それでも子供にそっと家の中だけで語り継がれていたんだろう」
俺は絵の中の入鹿の首を撫でた。
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