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Prologue
異世界情緒ーー⑦
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わたしには持ち物なんてひとつもない。あの大量の資料もエルルカがすっきりまとめてくれるって言ってた。だから、わたしには特に旅の準備は必要なくて、でも、あの喧しい大通りはもうこりごりで。
だから、エルルカがやってくるのを街の門の前で待つことにした。
ちょっと街の中心地から外れれば、喧騒はあっという間に静かになってくれて、意外とのどかな自然もあったりして、うん、やっぱりわたしはこっちの方が好みだな、って思う。
わたしは適当な平たい石に腰かけて、さらさらと流れる風や草の音を聞く。
暇潰し、そう思っていたけれど、いいえ、そんなことはなかったわ。世界を感じるのに忙しくって、わたしには暇なんてこれっぽっちもありゃしないんだもの。
そんなわたしを遠目に眺めていた優しい門衛さんが果物やお菓子をくれたり、ちょっとだけお話相手になってくれたりした。彼らのこと、この街のこと、この街の外のこと、それに、外では転生者と呼ばれるものが暴れ回っているから気をつけてとか。
彼らはいろんなことを教えてくれたのに、でも、わたしのことを何も話せなかったのは、ちょっと残念。
そうこうしているうちに陽が沈み始めて、わたしは待ち合わせ場所へと向かう。
とっても親切な門衛さん達は、護身用にと短剣まで持たせてくれようとしたけど、それは丁重にお断りして、それでも、身体が冷えてしまうからとくれた茶色のシンプルなストールはありがたく受け取った。わたしの物語に物騒な物は必要ないわ、きっと。
街の入口でケヴィンとリイサのふたりを見つけた。なんとなくストールを頭に被って陰に隠れる。
ふたりもそこでお互いを見つけたらしく、リイサは走っていたのか少し肩を上下にさせている。
「ダメ、キティちゃんがどこにもいないの」
「そうか、キティには悪いことをしたな」
「街から出てなければいいけど」
心配してくれていたんだ。こちらこそ悪いことをしてしまった。なんとなくふたりにはもう会えない気がしてたし、でも、もう会わないような気もしている。だから、わたしは申し訳ない気持ちでずっと隅っこに隠れてる。
だって、あんなにみっともなく、ほとんど喧嘩別れしといて、いったいどんな顔で会えばいいのかわからないんだもの。結局仲直りもまともにできなくて、きっとラフィーナが今のわたしの姿を見たら、「なんてことかしら! あなたったらお顔も合わせずにお話ができるのね!」っ皮肉混じりにキーキー騒ぐんだろうな。
でも、それでも、そのまま気づかないでほしいような見つけてほしいような、微妙にそわそわな気分。
だけど、この気持ちはきっと恋じゃない。ケヴィンはわたしにとってこの世界で初めて出会った人で、だから、大切な人だけど、わたしは夢馳せるケヴィンに憧れていただけだったんだ。だから、失恋でもない。
それに……
「オレは一度村に戻るよ。身支度を整えてくる」
ケヴィンはまだ見ぬ冒険の日々を思って胸躍らせているようで。その表情は、その瞳の輝きは強い夕日を浴びてなお、晴れやかに輝いている。
「そういえば君は返事をしていなかったな。リイサはどうする?」
「ケヴィンが行くなら一緒に行くに決まってるわよ。ふふっ、向こう見ずなお節介焼きのあなただけじゃ不安だもの」
ケヴィンとリイサの物語がはじまる。
ふたりはとってもお似合いで、なんだか恋するには今って結構いい雰囲気じゃない?
そこに、わたし、という登場人物は存在しないけどそれでもいいんだ。
なんだかとってもいいパーティじゃん。剣士と癒し手と黒魔導士に拳闘家。そこにただのキティであるわたしが入り込む余地なんて微塵もないもん。
だから――、
だから、エルルカがやってくるのを街の門の前で待つことにした。
ちょっと街の中心地から外れれば、喧騒はあっという間に静かになってくれて、意外とのどかな自然もあったりして、うん、やっぱりわたしはこっちの方が好みだな、って思う。
わたしは適当な平たい石に腰かけて、さらさらと流れる風や草の音を聞く。
暇潰し、そう思っていたけれど、いいえ、そんなことはなかったわ。世界を感じるのに忙しくって、わたしには暇なんてこれっぽっちもありゃしないんだもの。
そんなわたしを遠目に眺めていた優しい門衛さんが果物やお菓子をくれたり、ちょっとだけお話相手になってくれたりした。彼らのこと、この街のこと、この街の外のこと、それに、外では転生者と呼ばれるものが暴れ回っているから気をつけてとか。
彼らはいろんなことを教えてくれたのに、でも、わたしのことを何も話せなかったのは、ちょっと残念。
そうこうしているうちに陽が沈み始めて、わたしは待ち合わせ場所へと向かう。
とっても親切な門衛さん達は、護身用にと短剣まで持たせてくれようとしたけど、それは丁重にお断りして、それでも、身体が冷えてしまうからとくれた茶色のシンプルなストールはありがたく受け取った。わたしの物語に物騒な物は必要ないわ、きっと。
街の入口でケヴィンとリイサのふたりを見つけた。なんとなくストールを頭に被って陰に隠れる。
ふたりもそこでお互いを見つけたらしく、リイサは走っていたのか少し肩を上下にさせている。
「ダメ、キティちゃんがどこにもいないの」
「そうか、キティには悪いことをしたな」
「街から出てなければいいけど」
心配してくれていたんだ。こちらこそ悪いことをしてしまった。なんとなくふたりにはもう会えない気がしてたし、でも、もう会わないような気もしている。だから、わたしは申し訳ない気持ちでずっと隅っこに隠れてる。
だって、あんなにみっともなく、ほとんど喧嘩別れしといて、いったいどんな顔で会えばいいのかわからないんだもの。結局仲直りもまともにできなくて、きっとラフィーナが今のわたしの姿を見たら、「なんてことかしら! あなたったらお顔も合わせずにお話ができるのね!」っ皮肉混じりにキーキー騒ぐんだろうな。
でも、それでも、そのまま気づかないでほしいような見つけてほしいような、微妙にそわそわな気分。
だけど、この気持ちはきっと恋じゃない。ケヴィンはわたしにとってこの世界で初めて出会った人で、だから、大切な人だけど、わたしは夢馳せるケヴィンに憧れていただけだったんだ。だから、失恋でもない。
それに……
「オレは一度村に戻るよ。身支度を整えてくる」
ケヴィンはまだ見ぬ冒険の日々を思って胸躍らせているようで。その表情は、その瞳の輝きは強い夕日を浴びてなお、晴れやかに輝いている。
「そういえば君は返事をしていなかったな。リイサはどうする?」
「ケヴィンが行くなら一緒に行くに決まってるわよ。ふふっ、向こう見ずなお節介焼きのあなただけじゃ不安だもの」
ケヴィンとリイサの物語がはじまる。
ふたりはとってもお似合いで、なんだか恋するには今って結構いい雰囲気じゃない?
そこに、わたし、という登場人物は存在しないけどそれでもいいんだ。
なんだかとってもいいパーティじゃん。剣士と癒し手と黒魔導士に拳闘家。そこにただのキティであるわたしが入り込む余地なんて微塵もないもん。
だから――、
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