この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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■■■■【軌条■■・■■■】■■■■⑤

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 クソ、また鍔迫り合いか。手加減なし、落下中の無防備な体勢の小烏丸に、大出力で叩きつけたはずの魔剣。しかし、黒い箒に防がれる。それも、あっさりと、片手で。

 箒を持っていない左手でフリフリの黒いミニスカートをしっかり押さえ、魔剣を受け止めながら優雅に降り立つ。着地に音もしなければ、外傷も落下の衝撃を受けた様子もない。本当にただ、飛び降りただけ。地面だけが衝撃に大きくめり込んでいるだけ。「わお、セクスィー」「うるさい!」

 ああ、この少女の描写は違和感だらけだ。これこそが神の成せる業か?

 このままでは押し負ける。ぎりぎりと震えているのはわたしだけ。

 ほとんど弾き飛ばされるように後方へ跳躍。「おや、もうおしまいですか?」

 これ、ナチュラルに煽っているのか? そうだとしたら、マジ性格悪すぎなんだが。わたしはぎりっとイラつきながら魔剣をワンピースに戻す。

「――星槍、ロンギヌス」

 【論議主】から授かった新たな力、わたしは左耳から星槍の形をしたピアスを引き抜く。痛だッ。

 それはわたしの手の中で光り輝き、そして、わたしの背よりもずっと長大な、まるで鋳型から取り出したそのままのようにシンプルな槍が現れる。本質は耳の孔の方でこっちじゃない、って言ってたな。【論議主】自身とは少し形状が違うのは、使い手の技量不足のせい?

「……すぅ~、痛くない痛くない」

 小さくそう呟いてから。そのまま突貫、棒の先端をただ鋭く研いだだけのようなその無骨な穂先を真っ直ぐに突き出す。その穂先は万物を貫通する。世界の破壊を司る【論議主】のあまりにも物騒な機能。

「その槍は【論議主】の破壊の本質ですね、あ、そういえばさっき時間を操作していましたね、あれは【心励起/仇多羅急行】の仕業ですか」

 小烏丸は渾身の刺突をふらりと避けながら、品定めでもするかのように無骨な星槍を眺めている。

 構わず星槍を振り回すが、のらりくらりと躱され続ける。槍術は確かに難しい、ただ闇雲に振るっていても形状を最適化してくれる魔剣とは違って、星槍はただの孔穿つだけの槍にすぎない。そんなのはわかってる、わたしは戦闘においてまるっきりのド素人だってことも。

 だけれども、いくらなんでも全く当たらないのは意味がわからない。あっちだって見た目はただの少女で、明らかに戦い慣れてなんかいないはずだ。それなのに、

「【不浄遺棄地域】、【心励起/仇多羅急行】、【論議主】、あなたがそれらから授かった力は、明らかに世界を無に帰すことのできる力です」

 神、と呼ばれる高次位存在の描写を、この世界に留まることしかままならないわたし達にはできないのか。そんなくだらない思考に陥ってしまうほど、彼女の動きは異次元すぎた。

 距離を開けるでもなく、軽やかにステップするでもなく、その黒い箒で防御しているわけでもないのに、それでも、なぜかわたしの攻撃が当たらない。まるでわたしの方が彼女に星槍を当てないようにしているみたいに。……なんて苛立たしいのだろう。

「ま、ポッと出のアナタの方はこの世界には必要ない機能ですよ、きっと」

 はちゃめちゃに失礼極まりない全否定。おい、その機能を探してる最中なんだよ、邪魔すんな!

「はあ、〝因果全知の魔神(ラプラス・プラス・プラズマティクス)‟なんて、時代遅れなんだし使わなくてもいいみたいですけどね~」

 依然として攻撃は全く当たらない。つまらなさそうにあくびをするだけで、全く解説してくれないけど、つまり神様は伊達じゃないってことね。……ふざけやがって。

 ぬるり、魔剣の再出力。右手に星槍、ロンギヌス、左手に魔剣、アヴァルギリオン。身体の負担が大きくて時間加速はもう使えない。だから、これが今の総力戦、小さなわたしには不釣り合いで大仰な武装。

「神の権能お披露目大会してもいいんですけどさ~、異世界には1京2858兆519億6763万3865個の異能力を持つ化け物じみたラスボスもいることですし、n番煎じはやめておきましょう」

「意味がわからん!!」

 戯言語りに構ってあげる義理も、余裕も、心の平穏もない、あるはずがない。

 明らかにわたしには扱いきれていない2つの武器を振り回し続ける。そう、どちらかでもただ当たりさえすればいいなのだ。

 幸いにも魔剣は不定形で重さもほとんどない、ある程度わたしの意思で形状も変えられる。槍はまだ上手く取り回せていないけど、必殺の武器なんだ、強いんだ!
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