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■■■■■■■■■→戦闘描写
■■【貌無き炉心】■■①
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……どれくらいこうしていたのだろうか。
とっても長い時間眠っていた気がする。まだ長い長い夢の中にいるみたいに思考がうまく定まらない。
ゆっくりと立ち上がる、暗くて何も見えない。
どうやら動けなくなるほどの怪我はしていないみたい。わたしは墜落に滅法強いのかもしれない。
【軌条空論・紙一重】が最期にわたしに託してくれたこのコルセット、トイヒーロー。きっと、星の底へと墜落するわたしを守ってくれたのはこれに違いない。使い方はさっぱりわからないけど。
わたしの最後の記憶は、【深層義肢】が割いた地割れに飲み込まれて、そして……
そこでたぶん、わたしは気を失った。
ここに光はない。どこまで深く墜ちたのだろうか。見上げてみてもそれすら測るすべがない。
真っ白世界の後は真っ黒世界か。
ただ、ここがどんな状態なのかは真っ暗でわからないけど、わたしが立ち上がることが出来て、ある程度自由に動けるだけの空間で、しかもちゃんとした足場があるのは幸運だった。一歩踏み出したらさらに奈落の底、なんてホントに笑えない。
両手を伸ばしてみても壁にも触れなくて躓いてしまう。視界を遮られて平衡感覚も麻痺してしまっている。
とにかく進まなきゃ。
ひたすらに暗黒だけが続く世界を這いつくばって進む。
わたしは物語の主人公じゃなくなった。
わたしが描いていたはずだった白いページから追い出されて、今はぶちまけたインクのように真っ黒な世界に落ちぶれている。これじゃあ、ちっぽけなインクの染みだったとしてもこの黒の中じゃあ誰も見てくれもしない。
今、この物語の主人公は小烏丸なのだろうか。
なんて惨めな気持ちだろう。
世界も物語も目的も仲間も光も失って、この暗い世界にただ独り。
荒い地面に膝は擦り切れて、両手には石が刺さる。頭もぶつけるし、【乖離海底】から託されたコルセットがあるからまだマシだけど屈んでいるから腰も痛くなる。鈍い痛みが全身に広がって段々鋭くなっていく。次の一歩がとてつもなく重くてなかなか前に進めない。
それに進む先に穴がないかを確認しながらだから、とても時間がかかるし、油断しているときに限って先がないときもある。進むたびに何度も死の恐怖に襲われて、体力と集中力と精神が盲目の暗黒に擦り減っていく。
託された“始源拾弐機関”の力はこの現状を打破するにはどれも使えそうになかった。
魔剣や星槍で地上まで一気に切り開くのは、この場所が安全かどうかわからなければただ崩れた地面に生き埋めになってしまうだけ。
チケット・ゥ・ライドで時間を加速したって今は何も役に立たないし、コルセットはそもそもどうやって使うものなのかわからない、もしかしたらホントにただのコルセットなのかもしれない。
わたしはわたしの力で進むしかない。
よく考えたら、これって初めてだ。
わたしの周りにはいつも誰かがいてくれた。ラフィーナ、ケヴィン達、最弱パーティに“始源拾弐機関”。
わたしは独りじゃ何も出来ない。ケヴィン達にそう思い知らされて、小烏丸にわからされて。だからなんとなくそう思っていた。
剣も魔法もある世界で、それらを使うこともできない蒙昧無知でちっぽけな少女、キティ。たったそれだけの子ども。
「……ふふっ、見返してやるんだから」
久しぶりに発した言葉が思った以上に不穏で、思わず乾いた笑みが零れる。ああ、わたしはまだ笑える。最低最悪でとんでもなく惨めな気分だけど、まだ笑えてる。
そうだ、まだ、まだ物語は終わっちゃいないんだ。
白い世界は変えたくなかった。どうしたらいいかわからなかったから。
黒い世界は変えたいと思った。どうしたらいいかはもう知ってるから。
だって、わたしは世界を創ることができるんだ、それをもう一度やればいいだけ。そう、今度は誰の手も借りず、わたし独りの力で。
ーー ーー
とっても長い時間眠っていた気がする。まだ長い長い夢の中にいるみたいに思考がうまく定まらない。
ゆっくりと立ち上がる、暗くて何も見えない。
どうやら動けなくなるほどの怪我はしていないみたい。わたしは墜落に滅法強いのかもしれない。
【軌条空論・紙一重】が最期にわたしに託してくれたこのコルセット、トイヒーロー。きっと、星の底へと墜落するわたしを守ってくれたのはこれに違いない。使い方はさっぱりわからないけど。
わたしの最後の記憶は、【深層義肢】が割いた地割れに飲み込まれて、そして……
そこでたぶん、わたしは気を失った。
ここに光はない。どこまで深く墜ちたのだろうか。見上げてみてもそれすら測るすべがない。
真っ白世界の後は真っ黒世界か。
ただ、ここがどんな状態なのかは真っ暗でわからないけど、わたしが立ち上がることが出来て、ある程度自由に動けるだけの空間で、しかもちゃんとした足場があるのは幸運だった。一歩踏み出したらさらに奈落の底、なんてホントに笑えない。
両手を伸ばしてみても壁にも触れなくて躓いてしまう。視界を遮られて平衡感覚も麻痺してしまっている。
とにかく進まなきゃ。
ひたすらに暗黒だけが続く世界を這いつくばって進む。
わたしは物語の主人公じゃなくなった。
わたしが描いていたはずだった白いページから追い出されて、今はぶちまけたインクのように真っ黒な世界に落ちぶれている。これじゃあ、ちっぽけなインクの染みだったとしてもこの黒の中じゃあ誰も見てくれもしない。
今、この物語の主人公は小烏丸なのだろうか。
なんて惨めな気持ちだろう。
世界も物語も目的も仲間も光も失って、この暗い世界にただ独り。
荒い地面に膝は擦り切れて、両手には石が刺さる。頭もぶつけるし、【乖離海底】から託されたコルセットがあるからまだマシだけど屈んでいるから腰も痛くなる。鈍い痛みが全身に広がって段々鋭くなっていく。次の一歩がとてつもなく重くてなかなか前に進めない。
それに進む先に穴がないかを確認しながらだから、とても時間がかかるし、油断しているときに限って先がないときもある。進むたびに何度も死の恐怖に襲われて、体力と集中力と精神が盲目の暗黒に擦り減っていく。
託された“始源拾弐機関”の力はこの現状を打破するにはどれも使えそうになかった。
魔剣や星槍で地上まで一気に切り開くのは、この場所が安全かどうかわからなければただ崩れた地面に生き埋めになってしまうだけ。
チケット・ゥ・ライドで時間を加速したって今は何も役に立たないし、コルセットはそもそもどうやって使うものなのかわからない、もしかしたらホントにただのコルセットなのかもしれない。
わたしはわたしの力で進むしかない。
よく考えたら、これって初めてだ。
わたしの周りにはいつも誰かがいてくれた。ラフィーナ、ケヴィン達、最弱パーティに“始源拾弐機関”。
わたしは独りじゃ何も出来ない。ケヴィン達にそう思い知らされて、小烏丸にわからされて。だからなんとなくそう思っていた。
剣も魔法もある世界で、それらを使うこともできない蒙昧無知でちっぽけな少女、キティ。たったそれだけの子ども。
「……ふふっ、見返してやるんだから」
久しぶりに発した言葉が思った以上に不穏で、思わず乾いた笑みが零れる。ああ、わたしはまだ笑える。最低最悪でとんでもなく惨めな気分だけど、まだ笑えてる。
そうだ、まだ、まだ物語は終わっちゃいないんだ。
白い世界は変えたくなかった。どうしたらいいかわからなかったから。
黒い世界は変えたいと思った。どうしたらいいかはもう知ってるから。
だって、わたしは世界を創ることができるんだ、それをもう一度やればいいだけ。そう、今度は誰の手も借りず、わたし独りの力で。
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