この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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起承転結《 》

――   新異世界より    ―ー②

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 薄暗く、どこか淀んですらいる室内で、数人の男たちが自分の過去の栄光を肴にひっそりと濁った酒を飲んでいるだけだった。うぅ、やっぱりこのお酒のツンとした匂いは苦手だ。頭がくらくらする。それにしても、あの豪快で気性の荒い豪胆な戦士たちは一体どこへ行ってしまったのだろうか。

「アンタも気をつけなー、かわいい子は王様がみんな連れて行ってしまうからねー」

 なんじゃそりゃ、どっかの出来損ないのおとぎ話みたい。

 でもまあ、辛気臭い酒場と化した集会所にコツコツと小気味良くハイヒールを鳴らして颯爽と現れた(はず!)、黒いワンピースに黒革のコルセットの白髪少女と大きな白い獣、という出で立ちは、ここでは明らかに異質だったみたい。確かに悪目立ちが過ぎる。わたしがかわいいかどうかはご想像にお任せするとして。

 怪訝な表情、とろんと退廃的な赤ら顔、それに、あの大嫌いな、わたしの身体中を舐め回すような下卑た眼差し。そのどれもがわたしを不快な気分にさせて、こんなところ一刻も早く立ち去ってしまいたかった。ここに来たのは失敗だった、と早速後悔し始めている。

 ま、まあ、冒険者とも思われてないだろうけど。舞踏会にでも出掛けるような格好だし、うぇ、もしかしたら娼婦とでも思われているのだろうか。最悪。

 ここには用事がないかもしれない。ふらりと立ち寄ったのもほとんどただの思い付きだし。

「あ、ペットは禁止なんだよねー、掃除が面倒なんでー」

「え、どうしよう、メルト、外で待ってる?」

「ぐるう」

 ペットと言われたのが不服だったのか、外に追い出されそうだったのが気に入らなかったのか、メルトは不機嫌にそう唸ると、「うわッ」突然飛び掛かる!? 思わず反射的に屈み、ギュッと目を瞑る。一瞬騒然とする集会所。え、アナタったらつけが必要なの!? やっぱり情熱を司ってるし気性荒めなの!? と、一瞬で色々考えが巡りめく。

「……………………」

 しばらく身体を硬直させて身構えていたような気がするけど、ずっと何も起きなくて、でもふかふかで温かい感触が肩に乗っかってて、おそるおそる目を開ける。

「……え、アナタ、こんなことできたの!?」

「ばう!」

 メルトの身体はまるでふわふわの白いファーボレロみたいになってわたしの肩に掛かっていた。そういえば、星の核で戦ったときは幾億千もの獣群になってたし、姿形は自由自在なのかも。頼もしすぎる。そして、ますますドレスっぽくなってきたな、わたしのコーディネート。

「ねえ、これならどうかしら? 服なら大丈夫でしょ? ほら、あのおじさんももこもこの毛皮を着ているわ?」

「……毛、落とさないでね」

 目の前でメルトの変身を見たんだから当然納得はいってないみたい。でも、追い出すのも面倒だと思ったのか、うんざりとため息を吐き出すと、受付の少女はまた頬杖をついた。
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