この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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起承転結《 》

――   新異世界より    ―ー①

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「ーーへーい、ようこそー、ここは冒険者ギルドだよー」

 気の抜けた挨拶。この受付嬢はメイドさん、いや、もはやこのギルドの全ての業務を兼任しているらしくて、メイド服を着てカウンターにいた、だらけてた。完全にやる気なし。他にギルドの業務をしている人は見当たらない。もしかして過疎ってる?

 ツンツンはねる短い黒髪、健康的な褐色の肌の至る所にピアスとタトゥーを施したわたしと同じくらいのジャラジャラ少女は、明らかに似合っていないメイド服を全く着こなせていないまま、気怠そうに頬杖なんかついていた。

「珍しいね、こんなところにアンタみたいなかわいいお嬢さんが来るなんて」

 おじさんみたいなこと言うな、この子。センシティブな発言は控えてた方がいいんじゃないの? BARNされちゃうぞ?

「そうなの? 前とはずいぶん変わってしまったんだね」

 そう、世界は劇的に、絶望的に変わってしまって、今は転生者が世界を支配し続けている。昔の集会所を知っていると、その寂れ具合に憐憫の情がこみ上げてくる。……年は取りたくないものね。

 彼らは、寿命が来てもその記憶とすてーたすまっくすを維持しながら生まれ変わり続けるか、そもそもが不老不死で、完全に生物としての規格範囲外。もうほとんど魔物と化している。わたし達には彼らの情緒なんて想像もできない。

 それでも、突如として寿命の枷を外れたものがどうなるかは容易に想像できる。

 悠久の時を生きる覚悟なんてない。

 それでも、死の恐怖に縛られないなら、きっと何もしない。

 すぐに全ての私利私欲は満たされて、果てしない空虚に陥る。

 そんな暇を持て余した奴らがいたずらに、戯れに、ただの暇潰しに、魔物を狩り、亜人を狩り、ついには同じ種族であるはずの人間すらも狩る。いや、彼らは、もはやこの世界の人間とは別の生き物に成り下がっているのかもしれない。彼らは文字通り、人間離れしている。

 そして、彼らにはそれができるだけの大義名分がある。そう、自分たちは女神様に選ばれた真の勇者なのだから、という、最強の言い訳が。

 もちろん、そんな化け物達にこの世界でごく普通に生きていたもの達が勝てるはずもなく。

 この30年間、“始源拾弐機関”はこの世界の維持のために沈黙を続けて、あっさりと転生者に完全敗北したこの世界は、もう彼らによる滅びを待つことしかできなかった。この世界を破壊し尽くしておいて、この世界に何の思入れもない彼らが復興と再生を志すなんてこと、ありえるはずがなかった。

 だからこそ、かつてわたしが見たときはそこにいる誰もが熱気に浮かれていて、喧騒と希望と情熱に満ちていたあそこなら、きっと何かあるんじゃないかって思っていたのに。

 そこには、以前の面影すら残ってはいないようだった。

 そこに冒険者なんていなかった、いや、もしかしたらいたのかもしれないけど。

 それらは、ただの残骸だった。
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