上 下
105 / 235
4章:荳也阜縺ッ繝ッ繧ソ繧ッ繧キ縺ァ蜃コ譚・縺ヲ縺?k?

――わたしだけレベルアップしないのに、新異世界最強ギルドマスターのハーレムの一員に!?――③

しおりを挟む
 そうして、

「それじゃあこれはどうかな、大旋空魔神斬!」

「ぐおー」

 なんとなく変なタイミングでド派手に倒れ込むメルトは地面をその大きな爪で削り取って土煙を盛大に巻き上げなら、無数の小さな獣へと分裂、そのまま森の奥へと一時撤退する。「ありがと、メルト」大根役者その3に、こそっと。

「ふう、今回も無報酬だけどキミ達を助けられたんだから仕方ないね」

 そのお気楽な口調の通り、こんなことは彼にとっては本当に他愛もないことで、そして、作戦とはいえ確かにわたし達を助けてくれたのだから感謝すべきなんだろうけど。でもさ、なんだか恩着せがましいような気がして、思わずムッとしてしまうのはただの被害妄想かしら? いや、もしかしたら、普通の新米冒険者の女の子なら、何の見返りもなく助けてくれたあのギルドマスターはなんて素敵なのかしら! ってなるのかな。女の子ってそんなにちょろい?

 すると、少年は先程までの苛烈な攻撃の後とは思えないほど無邪気にパタパタとわたし達の方へと駆け寄る。

「おや、雷霆姫のジーナじゃないか」

「え、何それ、超かっけー」

「勝手にマナカが付けたの。やめて、マジで気に入ってないから」

 うんざりとそう言うジーナに向かって、取り巻きの美少女達が何かギャーギャー叫んでいたけど、ただただマナカへの気持ち悪い称賛とかジーナへの妬みとか僻みとかそんなのばっかりだったので、まあ、聞こえない聞こえない。

 そして、こんなことは日常茶飯事なのか、小さくため息を吐いただけでジーナも気に留めていないみたい。ジーナとマナカの間柄にはギルドでの関係性以外にも何かあるのか? 「お城にスカウトされてるの」こそっと耳打ち。「ああー」なるほどね、そして、今回はそれを利用しようってことなのね。

「それで、キミは?」

「あ、わたしはただの……じゃない、新米冒険者のキティです、よろしくお願いします」

「うん、よろしくね、キティちゃん。ぼくは、ギルドマスターのマナカ、マナカ・サツキだよ。ようこそ、ぼくのギルドへ」

 マナカは巨大な戦斧をズドンと大地にめり込ませると、その小さな右手を差し伸べてくれる。わたしが転生者と握手をするときに限ってわたしはいつもしりもちをついている。なんだかカッコ悪い。

 それでも、この手を取らなければこの作戦は始まらない。

「え、ギ、ギルドマスターなんですか!? そんなお方がわたしを助けてくれるなんて!」……少し大げさか? お、おい、ジーナ、ちょっと震えてるのやめろ、笑いをこらえてるんじゃあない!

「そ、そうですますよ、まさかこんなところにマナカがいるなんて!」だから、声が上ずってんぞ!

 でも、わたし達の圧倒的茶番劇にも、鈍感系主人公気質なのだろうか、マナカは全く気付かない。いや、鈍感、というか、そもそもわたし達のことなんてただの攻略対象としてしか見ていないのかもしれない。とりあえずフラグだけは立てとく、みたいな。そうして、完全攻略したのが後ろにお控えなすっている美少女達か。ちょろすぎやしないか?

「いやいや、たまたま近くでSSSSSSSSSSSSランクのクエストをクリアしたところだったからね。あの魔獣は新人のキミ達には手が負えなかったから、ぼくが近くにいて良かったよ」

 ……色々ツッコミたいところがあるけど、まあ、いいや。……いや、SSS……ランクって何!? 逆に弱そう! インフレにも程度ってもんはあるぞ! ただの自己顕示でしかなさそうな虚構的なランク付けに、マナカの心情がいとも容易く透けて見える。

 抑えきれない思いのたけを、なんとか心の中だけで留めつつ、マナカの小さな手を握ると、彼はわたしをふわりと立ち上がらせてくれた。

 さあ、作戦開始だ。

 そう、マナカ達は、たまたま、わたし達を助けてくれた。そして、わたし達はもうマナカにメロメロだ。今のところ順調だ、わたしの演技以外は。

 潜入、そして、暗殺。不穏すぎて全然主人公っぽくないけど、きっと議論なんてそんな野蛮なことに聞く耳持たなさそうだし、ここは穏便に暴力で逝きます。
しおりを挟む

処理中です...