113 / 235
4章:荳也阜縺ッ繝ッ繧ソ繧ッ繧キ縺ァ蜃コ譚・縺ヲ縺?k?
わたしにはこの新異世界ハーレムが合わなかった件①
しおりを挟む
「今夜、マナカ様が貴女をお呼びです」
「ふぁッ!?」
予想外の急展開。
すらりと長身の少し陰のあるメイドさんは無機質にそう告げた。何を考えているのかわからない大きな黒い瞳が、彼女の持つランプに赤々と照らされている。長い黒髪がさらりと揺れると、彼女がメイドさんだということも相まって、つい、あの忌まわしい真っ黒な女神様を思い出してしまうのには自分でもうんざりした。この人は何も悪くないのに。
それにしたって、何の糸口もなく、ほんの少しの進展もなく、誰一人の協力者も得られないまま、いきなり敵地へと赴くことになるとは。
まだこのお城に来てから少ししか経っていないし、お近づきにもなっていないうえに、会話らしい会話もほとんどしていないのにいきなり呼ばれるって、まさか、もうわたしのことを娶ったとでも思っているのかしら。だとしたら、女心はまるでわかっていないみたいね。い、いや、わたしもそんなに恋愛に詳しいわけじゃないけどさ。でも、新しいもの好きも大概すぎない?
「そ、それって断ってもいいの? ま、まだ心の準備が……」
だけど、またとない絶好のチャンスだ。でも、準備不足で怖気づいているのも確かで、おずおずとそう訊いてみる。すると、
「はあ!? マナカ様直々のお誘いですよ!? それを断るなんて!」
今まで感情らしい感情を出さなかった彼女が突然ほとんどヒステリックじみた悲鳴を上げる。な、なんだ、何か気に障ることでも言っちゃった!? 「私だって一度も夜伽に誘われたことないのに!」あ、そういうこと!?
「こうなったら殺るしかないって。とりあえず、セクシーなやつでお願いしますね」
「うぅ、やっぱりこういうの苦手だなあ」
「ここまできて色仕掛けなしはなしよ」
「うぅ……」
夜中の静まり返った城内に響き渡るメイドさんの悲鳴をそわそわ聞き流しながら、こそこそ作戦会議。幸い、メイドさんは自分がどれだけご主人様に尽くしてきたかを叫び散らかすのに夢中だし、騒ぎを聞きつけた他の美少女が現れそうな気配もなかった。
「わ、わかったわ、行くわよ。ちなみに、ジーナは」
「マナカ様はアナタお一人をご所望です」
切り替え早っ。さっきまでの情緒はどうした、逆に心配になるぞ。
今宵のマナカは複数プレイをお望みではないのかもしれない。まあ、他に女の子がいない方が殺りやすいだろうし、これはこれで良しとしよう。
「そ、それじゃあ、準備するからちょっと待ってて」
後ろ手にドアを閉めると、切なく吐息。よし、覚悟を決めなきゃ。
ぬるり、自分でも恥ずかしくなるこのスケスケグレーのネグリジェはもちろん魔剣、アヴァルギリオンによる偽装だ。その防御力ゼロの下着とわたしのお肌をコルセットが変形したロングカーディガンがギリギリで覆い隠してくれる。それにしたって、【心励起/仇多羅急行】にもらったこのどエロいパンティが役に立つ日が来ようとは思わなかったし、そんな日は来てほしくなかった。自らこの下着をさらけ出すなんてとんだ恥知らずの痴女だわ。
「一応、念のためにメルトは置いていくね、わたしに何かあったらきっと気づいてくれるから」
「オーケー、それじゃあ頼んだよ、ハニー」
「わふ」
「……自信ないなあ」
急な決戦前夜となってしまって、少し緊張気味のジーナの軽口もあまりキレがない。彼女の肩に乗る白い小鳥になったメルトの感情を読み取ることはわたしにはできなさそう。
そう、わたしは今からたった独りでこの国を壊さなきゃいけない。
ふふ、こんな言い方じゃあ、まるでまるっきりの悪役じゃない。
わたしったらこの物語の主人公なのにこんなとんでもない格好してるし。
そう思ったら、なんだかこの状況は馬鹿げた冗談みたいな気がして、思わず退廃的に笑んでしまう。
「――お待たせしました、それじゃあ行きましょう」
ドアを開け放つと、わたしはつんっとしながらそう言った。そう、あくまで気丈に、怯えているとか緊張しているとか感じさせたりしないように。今だけ、そう、今だけは、わたしは気高き娼婦。そう思わなきゃこんなことやってられっか。「……意外とエロいですね」「うっさい!」
「ふぁッ!?」
予想外の急展開。
すらりと長身の少し陰のあるメイドさんは無機質にそう告げた。何を考えているのかわからない大きな黒い瞳が、彼女の持つランプに赤々と照らされている。長い黒髪がさらりと揺れると、彼女がメイドさんだということも相まって、つい、あの忌まわしい真っ黒な女神様を思い出してしまうのには自分でもうんざりした。この人は何も悪くないのに。
それにしたって、何の糸口もなく、ほんの少しの進展もなく、誰一人の協力者も得られないまま、いきなり敵地へと赴くことになるとは。
まだこのお城に来てから少ししか経っていないし、お近づきにもなっていないうえに、会話らしい会話もほとんどしていないのにいきなり呼ばれるって、まさか、もうわたしのことを娶ったとでも思っているのかしら。だとしたら、女心はまるでわかっていないみたいね。い、いや、わたしもそんなに恋愛に詳しいわけじゃないけどさ。でも、新しいもの好きも大概すぎない?
「そ、それって断ってもいいの? ま、まだ心の準備が……」
だけど、またとない絶好のチャンスだ。でも、準備不足で怖気づいているのも確かで、おずおずとそう訊いてみる。すると、
「はあ!? マナカ様直々のお誘いですよ!? それを断るなんて!」
今まで感情らしい感情を出さなかった彼女が突然ほとんどヒステリックじみた悲鳴を上げる。な、なんだ、何か気に障ることでも言っちゃった!? 「私だって一度も夜伽に誘われたことないのに!」あ、そういうこと!?
「こうなったら殺るしかないって。とりあえず、セクシーなやつでお願いしますね」
「うぅ、やっぱりこういうの苦手だなあ」
「ここまできて色仕掛けなしはなしよ」
「うぅ……」
夜中の静まり返った城内に響き渡るメイドさんの悲鳴をそわそわ聞き流しながら、こそこそ作戦会議。幸い、メイドさんは自分がどれだけご主人様に尽くしてきたかを叫び散らかすのに夢中だし、騒ぎを聞きつけた他の美少女が現れそうな気配もなかった。
「わ、わかったわ、行くわよ。ちなみに、ジーナは」
「マナカ様はアナタお一人をご所望です」
切り替え早っ。さっきまでの情緒はどうした、逆に心配になるぞ。
今宵のマナカは複数プレイをお望みではないのかもしれない。まあ、他に女の子がいない方が殺りやすいだろうし、これはこれで良しとしよう。
「そ、それじゃあ、準備するからちょっと待ってて」
後ろ手にドアを閉めると、切なく吐息。よし、覚悟を決めなきゃ。
ぬるり、自分でも恥ずかしくなるこのスケスケグレーのネグリジェはもちろん魔剣、アヴァルギリオンによる偽装だ。その防御力ゼロの下着とわたしのお肌をコルセットが変形したロングカーディガンがギリギリで覆い隠してくれる。それにしたって、【心励起/仇多羅急行】にもらったこのどエロいパンティが役に立つ日が来ようとは思わなかったし、そんな日は来てほしくなかった。自らこの下着をさらけ出すなんてとんだ恥知らずの痴女だわ。
「一応、念のためにメルトは置いていくね、わたしに何かあったらきっと気づいてくれるから」
「オーケー、それじゃあ頼んだよ、ハニー」
「わふ」
「……自信ないなあ」
急な決戦前夜となってしまって、少し緊張気味のジーナの軽口もあまりキレがない。彼女の肩に乗る白い小鳥になったメルトの感情を読み取ることはわたしにはできなさそう。
そう、わたしは今からたった独りでこの国を壊さなきゃいけない。
ふふ、こんな言い方じゃあ、まるでまるっきりの悪役じゃない。
わたしったらこの物語の主人公なのにこんなとんでもない格好してるし。
そう思ったら、なんだかこの状況は馬鹿げた冗談みたいな気がして、思わず退廃的に笑んでしまう。
「――お待たせしました、それじゃあ行きましょう」
ドアを開け放つと、わたしはつんっとしながらそう言った。そう、あくまで気丈に、怯えているとか緊張しているとか感じさせたりしないように。今だけ、そう、今だけは、わたしは気高き娼婦。そう思わなきゃこんなことやってられっか。「……意外とエロいですね」「うっさい!」
0
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる