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4章:荳也阜縺ッ繝ッ繧ソ繧ッ繧キ縺ァ蜃コ譚・縺ヲ縺?k?

ーー残響、【超弦骨格暫定式・波動帝國】      ーー④

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 彼女の身体はとても大きくて、重くて、それに、きっと元々台座に置かれるべき箇所には、武器として彼女を振り回すための粗雑な柄が刺さっていて、どうやったって起き上がらせてあげることはできなかった。「ごめんね」「いいよ、逆さまに叩き付けられるよりはマシ」

「さて、もうそろそろボクの物語も幕を下ろす時間かね」

「え?」

 なんとなくこのまったりとした会話がいつまでも続くと錯覚していたわたしは戸惑う。そう、それは必然の別れ。最初からわかっていたはずの予定調和。どうやら、やっぱり偉大なる大先輩殿であらせられる【超弦骨格暫定式・波動帝國】の方が考えはしっかりしているのかもしれない。一方のわたしはというとお気楽に現実逃避してるんだもの。

「振動とは異なる周波数同士が繋がることだ、誰かと誰かの思いを送受信することだ。ボクの絃を切られたとき、この世界の絆すらも切れちゃったと思ったけどさぁ、どうやらまだ世界はかろうじて振動しているようだね、」

 あ、そうか。

 もしかしたら、機能停止してしまった彼女の残響をこの世界に留めていたのは、わたし達の方なのかもしれない。わたし達は、機能として、なんて難しいことではなく、ただ生きるため、それだけでいつも誰かと繋がっている。あ、いや、無色透明で存在自体が極めて希薄なわたしのことは置いといてもろて。

「惹かれ合う機能ということなら、おやおや~、さてはボクの本質は重力も司っているんじゃないの? 諸説あるぜぇ、これはぁ」

 こ、この幼女、死してなお自分の機能をさらに誇張しようとしている。めっちゃ欲張るじゃん。でも、もしかしたら、いえ、わたしには難しいことはさっぱりわからないけど、実はホントにそうなのかもしれないわね。いや、ホントに諸説あるかも?

「ま、ボクなんかいなくても世界は勝手にちゃんと以心電信しているのかもね」

「でも、アナタの演奏があったからこそ、この世界からまだ音は消えず、わたしはこうしてアナタとお話しできた」

「あのね、キミ、演奏ってのは余韻まで楽しむもんでしょ。幕が下りたからってすぐに席を立っちゃうのは野暮ってもんじゃないの」

 きっと彼女だってカーテンコールに応えたかったに違いない。それが叶わなかったからこそ、彼女は残響という手段で演奏の余韻をわたし達に残してくれたんだ。

 それが消えてしまう前にその思いを受け取ることができて、本当に良かった。

「演奏の余韻が終わってしまったら、この世界から音が消えてしまうのよね」

「うん、そうだよ。あと、4分33秒でこの意図しない静寂は終わりを迎えて、世界は真に振動を止めるのさ」

 それは同時に、彼女の死を意味する。正確には彼女はもう死んでいて、今お話ししているのはただの残響に過ぎないのだけれども、どっちにしたって、もう彼女とお話しできない、ということには変わりない。

「ねえ、どうにかしてこの世界の音を、アナタの残響を消えないようにできないかしら」

「いやあ、金属が刺さってんだもん、直でボクにさぁ。これ、どうしろっていうの?」

 え、打つ手なし? 純文学でもないくせに擬音なしで物語が進むの? それに、全く音がないんじゃあ、会話すら成り立たないけど? このままじゃ全く「」付かないよ?

 ある意味でこの物語最大の危機にブチ当たる。描写だけの物語なんてあまりにも気難しくて読みにくいし、なによりテンポが良くない。この物語の読者層が違う。こんなの神様による物語の破綻よりたちが悪いじゃない。誰も読んでくれない物語に価値を見出すにはわたしの稚拙な精神ではまだ早すぎる。
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