143 / 235
設定(≠核心)
―ーLIVE:【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】&【 】feat. ――④
しおりを挟む
「や、ごめんなさいね、ここには何もないの。宇宙空間は真っ暗だし背景描写がおろそかになったりしないか不安ね」
「だから、そういうメタ的なことはやめてもらえます!?」
【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】の不穏な言葉に、思わず周囲を見渡す。
確かにときおりチカチカと無機質に点滅を繰り返す丸みを帯びた銀色の巨大な建造物以外は真っ暗で、見渡す限り丸い地平線のどこまでも銀色の金属板と埃っぽい砂の大地が広がっているだけ。どう見てもここには普通の生き物は住めない、魔獣すら怪しい。
ふと見上げてみれば、お日様はあんなに近くにあって、砂漠で見たときみたいにギラギラ暑苦しく輝いているっていうのに、今はさっぱり鬱陶しく感じない。お空の色が黒いだけでこんなにも世界の見え方が変わってしまうなんて不思議ね。
月に関する神話や伝説は結構多い。
夜空を見上げればいつもそこにあって、暗闇に怯えるわたし達を静かに見守る、あるいは、太陽とは違うその神秘的な輝きに魅せられた者を惑わせる。
そんな様々な表情を見せてくれる月に思いを馳せ、物語を綴る。そうやって、この3つの月は神話や伝説、おとぎ話として語られてきた。
そして、その真実は、というと……うん、こればっかりは、他の物語と同じように、他愛のないおとぎ話のひとつとして楽しんでもらう方がいいんだと思う。真実はいつもひとつ、それじゃあ、物語の創造の余地がなくなっちゃうもん。
……そう、でも、確かに【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】の言う通り、たったこれだけで月の描写は事足りてしまったのだ。これはとてもまずい、由々しき事態だ。何もないのに歩き回る必要もない。知りたい情報は【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】が全部教えてくれる。これは、他の月にも行った方がいいか?
「あ、そ、その、アナタは歩く必要もない、食事も残念だけど出せない、ここは大気が希薄だから天気だって変わらない。ゴ、ゴメンね、周囲を動く、というのは描写するのがとても簡単なファクターなのに」
「え、な、何? なんか編集かなにかされてます? 文章書きにおける常套手段封じようとしてます?」
なんすか、会話だけで成立させようとしてるんすか? そんなのよっぽど技量がなければただの台本と変わらないわ。わたし達は演技をしているわけじゃない、ちゃんとこの世界で生きている。会話と擬音は効果的に使わなきゃ。「いくぞッ!」「うむ」キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン! ばっかりじゃ今何してるかさっぱりだもの。
「本題はこの世界、この物語がいかにして成り立ったかです。文章の基礎講座ではありませんのでこの問題は割愛します。それとも、基礎講座をご所望ですか?」
「本題で! 本題の方をお願いします!」
これ以上話がややこしくなるのは避けたい。ただでさえファンタジーから少しずつ離れてしまいそうなんだ。ここで、SFからエッセイになるのだけは何としてでも回避しなくては。というか、意味わからないじゃん、ファンタジーからSFになってさらにエッセイになるって。
「オーケー、それじゃあ、その前に……」
わたしの目の前で、どこからともなく差し込む青白い光が幾色にも分岐し、スーパーマイクロバッグのときみたいに光が上から下に細かく動いて【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】の仮想偶像が顕現する。
「改めまして、初めまして。キミがイメージしやすいように私達をアイドルグループとして投影してみたよ、これからはここに話しかけてくれれば大丈夫だから」
そこには、きらびやかでめっちゃかわいい衣装を身にまとった7人の女の子の姿。虹の7色をそれぞれが担当しているらしく、統一感のある衣装のどこかに、それでも、各々の個性が差し入れられていた。
「うん、ありがとう、とても助かる!」
うん、これなら、確かに今までよりずっと話しやすい。だって、【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】の声はどこからともなく聞こえてきて、今わたしが立っているこの月こそが本体だってことは頭では理解できてるけどさ。でも、何もない場所に向かって話しかけているのはなんだかおかしな気分だったんだもの。
「何か困ったらさー、私達を描写すればいいじゃんよ」
「だから、そういうのやめて!」
「だから、そういうメタ的なことはやめてもらえます!?」
【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】の不穏な言葉に、思わず周囲を見渡す。
確かにときおりチカチカと無機質に点滅を繰り返す丸みを帯びた銀色の巨大な建造物以外は真っ暗で、見渡す限り丸い地平線のどこまでも銀色の金属板と埃っぽい砂の大地が広がっているだけ。どう見てもここには普通の生き物は住めない、魔獣すら怪しい。
ふと見上げてみれば、お日様はあんなに近くにあって、砂漠で見たときみたいにギラギラ暑苦しく輝いているっていうのに、今はさっぱり鬱陶しく感じない。お空の色が黒いだけでこんなにも世界の見え方が変わってしまうなんて不思議ね。
月に関する神話や伝説は結構多い。
夜空を見上げればいつもそこにあって、暗闇に怯えるわたし達を静かに見守る、あるいは、太陽とは違うその神秘的な輝きに魅せられた者を惑わせる。
そんな様々な表情を見せてくれる月に思いを馳せ、物語を綴る。そうやって、この3つの月は神話や伝説、おとぎ話として語られてきた。
そして、その真実は、というと……うん、こればっかりは、他の物語と同じように、他愛のないおとぎ話のひとつとして楽しんでもらう方がいいんだと思う。真実はいつもひとつ、それじゃあ、物語の創造の余地がなくなっちゃうもん。
……そう、でも、確かに【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】の言う通り、たったこれだけで月の描写は事足りてしまったのだ。これはとてもまずい、由々しき事態だ。何もないのに歩き回る必要もない。知りたい情報は【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】が全部教えてくれる。これは、他の月にも行った方がいいか?
「あ、そ、その、アナタは歩く必要もない、食事も残念だけど出せない、ここは大気が希薄だから天気だって変わらない。ゴ、ゴメンね、周囲を動く、というのは描写するのがとても簡単なファクターなのに」
「え、な、何? なんか編集かなにかされてます? 文章書きにおける常套手段封じようとしてます?」
なんすか、会話だけで成立させようとしてるんすか? そんなのよっぽど技量がなければただの台本と変わらないわ。わたし達は演技をしているわけじゃない、ちゃんとこの世界で生きている。会話と擬音は効果的に使わなきゃ。「いくぞッ!」「うむ」キンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキンキン! ばっかりじゃ今何してるかさっぱりだもの。
「本題はこの世界、この物語がいかにして成り立ったかです。文章の基礎講座ではありませんのでこの問題は割愛します。それとも、基礎講座をご所望ですか?」
「本題で! 本題の方をお願いします!」
これ以上話がややこしくなるのは避けたい。ただでさえファンタジーから少しずつ離れてしまいそうなんだ。ここで、SFからエッセイになるのだけは何としてでも回避しなくては。というか、意味わからないじゃん、ファンタジーからSFになってさらにエッセイになるって。
「オーケー、それじゃあ、その前に……」
わたしの目の前で、どこからともなく差し込む青白い光が幾色にも分岐し、スーパーマイクロバッグのときみたいに光が上から下に細かく動いて【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】の仮想偶像が顕現する。
「改めまして、初めまして。キミがイメージしやすいように私達をアイドルグループとして投影してみたよ、これからはここに話しかけてくれれば大丈夫だから」
そこには、きらびやかでめっちゃかわいい衣装を身にまとった7人の女の子の姿。虹の7色をそれぞれが担当しているらしく、統一感のある衣装のどこかに、それでも、各々の個性が差し入れられていた。
「うん、ありがとう、とても助かる!」
うん、これなら、確かに今までよりずっと話しやすい。だって、【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】の声はどこからともなく聞こえてきて、今わたしが立っているこの月こそが本体だってことは頭では理解できてるけどさ。でも、何もない場所に向かって話しかけているのはなんだかおかしな気分だったんだもの。
「何か困ったらさー、私達を描写すればいいじゃんよ」
「だから、そういうのやめて!」
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
神の加護を受けて異世界に
モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。
その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。
そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
