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設定(≠核心)

―ーLIVE:【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】&【    】feat.           ――⑧

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「それじゃあ、キミの憂いも晴れたことだし、ようやく本題といきますか」

「よろしくおなしゃす!」

 さあ、いよいよこの錯誤した世界の真相が明かされる時だ! わたしの物語の本来の目的は、わたしが創ったこの世界の謎を解き明かすこと、そして、わたし自身が何のために存在しているかを探し求めることだった。

 なんだか自分で探し当てたっていうより誰かに教えてもらっているって感じが、思っていた展開とは違うような気がするけど、それでも、それがいよいよわかるかもしれない。そう思うとなんとなく力が入ってしまう。

「キティ、もう一度確認するけど、この世界はどうやって創られたんだい?」

「え? それは、ラフィーナとわたしが真っ白なページから物語を綴り始めて、この世界ができたの。それはきっとアナタ達が観測した通りよ」

「うん、正確には、キミが、ラフィーナ、と呼ぶ読者が真っ白なページを開き、キミがそこに物語を綴ったんだ」

 つまり、わたしが作者で、ラフィーナが読者。うん、ラフィーナ本人も、自分は読者だ、って言ってたし、それで間違いなさそうだ。

「この物語における意味のある説話構造が維持可能である典型的な3/1-空間にとって、物語次元が理論上最低の比率こそが我々、“始源拾弐機関”なだけであって、実質的に、それは任意の実体が任意の目標を達成するために必要となる最小のフィクション複雑性でしかないのさ」

「ねえ、待って、何一つわからないわ、確保、収容、保護するためみたいな話し方はお願いだからやめてちょうだい!」

「おっと、ごめんごめん、所詮物語の登場人物でしかない私達がなんとかそこからこの世界を観測しようとして、その結果を説明するとなるとどうしても小難しくなってしまうんだよね」

 まあ、それもそうか。物語っていうのはその世界観の中だけで完結するのが普通なんだから。それをこともあろうにただの登場人物が、その物語の構造自体を観測しよう、なんて絶対に思わないもん。

 さっぱり理解はできないけど、なんとなく納得。

 だけど、どうして、【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】はそんなことをしようと思ったのかしら。だって、わたし達はこの物語の登場人物で、普通ならそれだけで十分なのに。

「そして、私達はようやくこの錯誤世界、ミスティカエラを観測し尽くした」

 はじめ、その意味がわからなくて静止。そして、じわじわとその異常さに気付く。

 え、それって作者のわたしも知らないことも(……い、いや、わたしがこの世界について知らないことだらけだってこともあるけど、)知っているってこと!? しゅ、しゅごい、わたしにはできなかったことを平然とやってのける、そこにしびれ……

「だから、もうあの星を諦めちゃっても何も問題はないの、女神、とやらにあげちゃっても構わないし」

「は?」唐突な発言に、変な声。

「そのために、あの星の全てをデータとして保管した」

「へ?」

 なんてことかしら、彼女達もわたしの物語を壊しちゃってもいいって思ってるの? そんな邪悪な計画のためにこの物語を解析したっていうの? わたしの味方じゃなかったっていうの!?

「ま、そのデータをぶっ生き返すための【深層義肢】が機能不全なんだけどね」

「ほ?」

 あくまで彼女達は錯誤世界秩序機能のひとつであって、だからこそこの世界のためならば、もはやこの世界そのものすらどうなってしまっても構わない、という結論に至ったってことなのかしら。

 でも、そんなのってあんまりだ、暴論だ、極論だ。ひどい、ひどすぎる。

 だって、それは物語の終焉に他ならないんだもの。楽しみにしてくれている読者、そして、この物語の作者にして主人公であるわたしを全て切り捨ててしまうってことじゃないか。

「今まであなたが他の“始源拾弐機関”からもらった機能さえあれば、こんな破綻しきった物語なんてさっさと打ち切って、また新しい物語を始めることだってできるのよ?」

「そんなのイヤに決まっているわ! これはわたしの物語なの、誰かのせいでひどい改悪をされた上に打ち切りになるなんて許せるはずがないわ!」

 思わずラフィーナみたいにキーキー甲高く叫んでしまった。だって、だって、だってなんだもん!
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