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目的、この物語のテーマ
―― Re:【倫理狂い 】 ――⑤
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「でも、アナタ達はこの真っ暗な地下世界に、誰の目にも留まらないような汚らしい街を造って、自分達のための物語から目を背けていたのでしょ?」
自分自身のことすらわからないまま快楽に溺れ続ける【倫理狂い・制度霊】はもちろんのこと、わたしの目の前でつまらなさそうに愛想笑いを浮かべているだけの【倫理狂い・副上肢】すら自らの機能の在り方に疑問を呈し、それに抗っているようにはとても思えない。彼らはこの地下街の暗闇に紛れて消えていく、それを善しとしている。
「いや、違うね。この地下街は彼女のためのものだ」
「だけど、この街は、ウボ=サスラは転生者達から逃れたひと達が作ったって」
「ああ、確かにそうだよ。だけど、ウボ=サスラとはこの地下街の名前ではなく、彼女がいたあの祭壇のことなんだよ。転生者達から逃れ、拠り所を探し、そして、彼女を求める者達があそこを中心につい最近作り上げた街がここさ」
祭壇、そう、彼はあの場所を祭壇と言った。それじゃあ彼女はまさに生贄じゃないか。でも、それは一体誰のための、何のための生贄? 彼女の魅力にあてられた人のための? それとも、【倫理狂い・副上肢】のための? それなら、いや、それこそどうして彼女のような存在が必要なのか。
「そう、この街は彼女を縛り慈しみ嬲り崇拝し犯し奉り傷つけ庇い痛めつけ癒し信じ裏切られ愛し依存させるためだけに作られたのさ」
それはあまりにも善悪なんてものとはかけ離れていやしないだろうか。彼らがその重苦しすぎる存在定義から忌避し続けた最果てで、他人を巻き込んだはた迷惑な享楽でしかない。そこに善悪はあるのだろうか。
ああ、見た目はいたって普通なのにどこか違和感のあった虚ろなもの達に欠けていたものがなんとなくわかった気がした。
彼らには【倫理狂い・制度霊】に対する感情以外の何もかもが欠落していたんだ、そう、何もかも全てが、だ。
彼らには、淫欲の化身のような【倫理狂い・制度霊】に対する愛憎たる情念、それ以外はもう何も残っていなかったんだ。【倫理狂い・制度霊】以外のことは全て無関心、どうでもいい。だからこそ、一切の関心なくわたしを助けた。それは目の前の事象に対するただの反射行動でしかなく、そこに自分の意思はない。
その甘美な媚薬は明らかに全てを破滅へと導く麻薬だ。それを知ったら最後、死ぬまであの甘ったるい幻覚から抜け出せない。
虚ろなもの、とは、あまりにも強烈な共依存性の成れの果て。
生きながらに死んでいる、哲学的ですらないゾンビ。
この街の全てが、彼女に起因するように回帰していく。彼女はただ、ウボ=サスラの祭壇に捧げられた自存する源でしかない。そんなの、あまりにも救いがないと思わないだろうか。
「彼女は何百年もそうやって、自分こそが善悪を司る【倫理狂い】だと信じて、世界に失望し世界を信じているよ」
ああ、彼らと話していると、ぐらりと足元が揺らぐような気がする。わたしが立っているこの地面が本当に確固たる場所なのか疑わしくなってしまう。彼らの常軌を逸した倫理観がわたしの倫理観をぬるりと蕩かしている。
わたしの行動倫理が本当に正しかったのか、何か悪いことをしてしまったのではないかと不安になってくる。
この物語は本当に正しかったのか。
何が善で何が悪なのか。
わたしは何回自身に対してこの問いかけを繰り返しただろうか。
自分自身のことすらわからないまま快楽に溺れ続ける【倫理狂い・制度霊】はもちろんのこと、わたしの目の前でつまらなさそうに愛想笑いを浮かべているだけの【倫理狂い・副上肢】すら自らの機能の在り方に疑問を呈し、それに抗っているようにはとても思えない。彼らはこの地下街の暗闇に紛れて消えていく、それを善しとしている。
「いや、違うね。この地下街は彼女のためのものだ」
「だけど、この街は、ウボ=サスラは転生者達から逃れたひと達が作ったって」
「ああ、確かにそうだよ。だけど、ウボ=サスラとはこの地下街の名前ではなく、彼女がいたあの祭壇のことなんだよ。転生者達から逃れ、拠り所を探し、そして、彼女を求める者達があそこを中心につい最近作り上げた街がここさ」
祭壇、そう、彼はあの場所を祭壇と言った。それじゃあ彼女はまさに生贄じゃないか。でも、それは一体誰のための、何のための生贄? 彼女の魅力にあてられた人のための? それとも、【倫理狂い・副上肢】のための? それなら、いや、それこそどうして彼女のような存在が必要なのか。
「そう、この街は彼女を縛り慈しみ嬲り崇拝し犯し奉り傷つけ庇い痛めつけ癒し信じ裏切られ愛し依存させるためだけに作られたのさ」
それはあまりにも善悪なんてものとはかけ離れていやしないだろうか。彼らがその重苦しすぎる存在定義から忌避し続けた最果てで、他人を巻き込んだはた迷惑な享楽でしかない。そこに善悪はあるのだろうか。
ああ、見た目はいたって普通なのにどこか違和感のあった虚ろなもの達に欠けていたものがなんとなくわかった気がした。
彼らには【倫理狂い・制度霊】に対する感情以外の何もかもが欠落していたんだ、そう、何もかも全てが、だ。
彼らには、淫欲の化身のような【倫理狂い・制度霊】に対する愛憎たる情念、それ以外はもう何も残っていなかったんだ。【倫理狂い・制度霊】以外のことは全て無関心、どうでもいい。だからこそ、一切の関心なくわたしを助けた。それは目の前の事象に対するただの反射行動でしかなく、そこに自分の意思はない。
その甘美な媚薬は明らかに全てを破滅へと導く麻薬だ。それを知ったら最後、死ぬまであの甘ったるい幻覚から抜け出せない。
虚ろなもの、とは、あまりにも強烈な共依存性の成れの果て。
生きながらに死んでいる、哲学的ですらないゾンビ。
この街の全てが、彼女に起因するように回帰していく。彼女はただ、ウボ=サスラの祭壇に捧げられた自存する源でしかない。そんなの、あまりにも救いがないと思わないだろうか。
「彼女は何百年もそうやって、自分こそが善悪を司る【倫理狂い】だと信じて、世界に失望し世界を信じているよ」
ああ、彼らと話していると、ぐらりと足元が揺らぐような気がする。わたしが立っているこの地面が本当に確固たる場所なのか疑わしくなってしまう。彼らの常軌を逸した倫理観がわたしの倫理観をぬるりと蕩かしている。
わたしの行動倫理が本当に正しかったのか、何か悪いことをしてしまったのではないかと不安になってくる。
この物語は本当に正しかったのか。
何が善で何が悪なのか。
わたしは何回自身に対してこの問いかけを繰り返しただろうか。
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