この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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目的、この物語のテーマ

―― Re:【倫理狂い    】   ――⑥

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「名すらも与えられなかった彼女は、誰にも愛されることなくひっそりと死にゆくだけのちっぽけな存在だった。彼女に【倫理狂い・制度霊】という名前を与え、彼女に意味を持たせ、彼女を救ったのはぼくだ」

 そう、これだけを聞けば彼のしたことは確かに、善、だ。美談としか言いようがない。

 だけど、その彼女が押し付けられ、背負わされた名前と意味は、そして、視界を塞がれ真っ黒な祭壇に捧げられた真っ白なままの物語は、彼女を真に救った、といえるのだろうか。それは、悪、ではないのか。

 その時の彼女が今の自分の姿を見て、はたして自分は救われたのだと感じるだろうか。語るべき物語など無い、と言った自身をどう思うだろうか。

「だから、彼女を救おう、だなんて驕りが過ぎる考えはやめた方がいい。なぜなら、彼女はもうすでに救われているのだから」

 【倫理狂い・制度霊】の表情は確かに苦痛に歪んではいなかった。

 だけど、それが本当に救いなのか。

 わたしにはどうやったら彼女がこの愛憎渦巻く薄暗い地下世界から救われるのかわからない。わかるはずがない。もしかしたら、彼女にとっては、目の前でちらつかせた希望こそが、彼女の眼を灼いてしまうような悪徳なのかもしれない。彼女にとってはこの薄汚れた地下街こそが唯一の世界なのだから。

 それじゃあ、善悪とは何なんだ。

 かつて名も無き彼女を救った【倫理狂い】の行いをこの世界が問い続けることこそが、彼らの機能で、存在意義で、物語なのか。

 だとしたら、そんな機能は不全だ。

 何のために生まれてきたのかすらわからない秩序機能があってたまるか。

 彼らを意味のない舞台装置になんてさせたくない。それがこの世界に確かに存在するのならば必ず発砲されなければならない。たとえ、彼らがそれを望んでいなくとも。

 だけれども、わたしにはこの歪つに完成されたディストピアの何も解決できやしない。彼らには救いなど必要ない。

 依然としてわたしは無力なままだ。安く買われるだけの孤独な少女と変わりない。

 悔しくて歯噛みしていたわたしの表情は、【倫理狂い・副上肢】にとってさぞかし愉悦だったのだろう。彼はにやりと意地悪く嗤うと。

「そうだ、その髪、元に戻してあげようか? 嫌いなんだろう? キミにはまるで不似合いじゃないか。ああ、もちろん条件付きだけどね」

「……どうせロクな取引じゃないんでしょ? 勝手に与えといて酷い話ね」

 その大層魅力的な提案を受け入れるわけにはいかない。【倫理狂い・副上肢】が与えると嘯く救いは、わたし達の倫理観とは遠くかけ離れている。望んだ通りにはならなくても結果的にわたしは救われて、そして、その条件、とやらでぬるりと破滅していくのだろう。

 それこそが善悪を司るべき彼らの暫定的な機能。

 まさしく、倫理を狂わせる機能。
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