この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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――    【飢餓之太刀・饗宴姫】     ――①

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「ーー貴女は誰だ? 何故ここに来た?」

 世界の色は青。

 彼はそう言った。誰がそう決めたのか、わたしにはわからない。【外装起因機関・電葬経土:七人姉妹】だろうか。いや、徹底して機能的であり続けようとしている彼女達にそんな不確定事項に対する情緒はあるのだろうか。それを知るすべは全て彼の中からロストしてしまっている。

 どんな青だろう、空の青、海の青、星の青、だれかの瞳の中の青。彼の壊れかけた視覚機能が映し出すブルースクリーンの致命的な青だろうか。今、視覚機能を修復してこの世界を、この壊れてしまった物語を見ても彼はそう言うのだろうか。

 わたしにとって、今この世界の色は、黒、だ。

 浮遊しているようにも沈み込んでいるようにも拡がっているようにも囚われているようにも思えるような。

 ただの真っ黒。

 雨の黒さでも血の黒さでも土の黒さでも夜の黒さでもない。

 例えようもないほどの漆黒、あるいは、汚泥、虚無。

 たったの一文字目はおろか、インクの染みひとつすら見えない。

 神様によって塗り潰されたこの錯誤世界という物語の次の1ページすらも綴れないまま、ただ、この世界から忘れ去られて失われてしまった物語、“始源拾弐機関”を探し求めて彷徨い続けていた。

 この世界の綺麗な色彩を見たかったはずなのに。

 わたしの物語はもっと彩り豊かだったはずなのに。

 どうして、こんな色にしか見えなくなってしまったの。

 わたしは、そのことを彼には言わないでいた。だって、そんなことを口に出してしまったら、言葉にして紡いでしまったら。希望を司るべきわたしが、この世界に絶望しているなんて、誰も彼も、わたし自身だって悲しいだけだもん。

 だからこそ、わたしは約束した。……ああ、こんなのってまるで贖罪じゃない。

 その少女を、彼が【飢餓之太刀・饗宴姫】だと結論付けた少女を見つけてあげる、と。

 今までなにひとつだって約束も守れないわたしが、今度こそは、と誓った大切な約束。誰のための約束なのか、そう、きっと彼のための約束。決してわたしのためじゃない。

 いつしか彼の傍にいて、そして、いつの間にか姿を消してしまった少女。彼女の機能は不明だが、彼女が姿を見せなくなってから起き始めたこの森の異常と関係あるのかもしれない。

 その巨体の半身以上が地面に埋もれ、木々の根に絡め取られ、この場所から動けない彼は、この大きな森の木々が死んでゆくその様を黙って見ていることしかできない。あの少女の身が心配だと。

「よう、テメェが旧支配者か?」

「……貴様、その子に何をした」
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