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―― 【飢餓之太刀・饗宴姫】 ――③
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彼の傍らには赤と黒を基調としたかっちりしたジャケットにタイトな黒のスカートを着こなす少女の姿。これはきっと軍服だ、だって、肩や腕には不思議な形のバッチが誇らしげにいくつも付いていたから。
まだきっとほんの少女、わたしと同じくらいの見た目で、しかしながら、可憐で儚げな印象すらあるのに、その儀礼じみた軍服がとても良く似合うのはなんだか不思議だった。
「あら、そうなの? それは残念ね」至極残念じゃなさそうに。
驚くべきは彼女のその容姿だ。
おそらく敵、それも、今まで出会ってきた中でも最上級の。
それなのに、数秒程見惚れてしまった。
まるでそれ自体が魅了の魔術のように完璧に整った、子どもとも大人とも言えないあどけない表情。ふわりと揺れる長いまつ毛の奥、精巧に研磨したダイアモンドのように輝く大きな瞳は光の加減だろうか、左右の色が淡いピンクと水色のオッドアイになっている。
木漏れ日を浴びるウェーブがかったピンクパールのロングヘアーがキラキラと煌めき、その髪を留めるヘアピンの横から覗く耳の先はエルフのように少しだけとがっていた。どこかの種族とのハーフなのだろうか。
彼女はその美しさでどこもかしこも発光している、なんだ、この眩さは。
軍服を着こなしていても華奢だとわかる小柄な体形と、そんな少女には似つかわしくない豊満な胸。……くそぉ、毎回毎回、巨乳の紹介しかしてねえ。
そう、その普通ならあり得ないほどに完成されて現実離れした容姿は作者の理想像を突き詰めた、究極にして完璧な自己投影の在り方。忌むべき物語の破壊者だ。この美しい森の奥で出会ってしまえば、それは幻惑の妖精との邂逅に等しい。遭遇したものは迷って死ぬ。
「彼女こそ、最強の転生者、メアリー・スーだ」
尊大な態度と傲慢な自己を併せ持つ転生者が、他人を最強だと紹介することに少しだけ驚く。
だけど、そう、なんとなく納得してしまう。
なぜなら、この少女は、どこからどう見たって理想の最大級だから。
どんな物語でも彼女が登場人物である限り、瞬く間に他の登場人物は、そう、それがたとえ主人公であっても彼女の存在の眩さに掻き消されてしまう。
「うふふ、よろしくね、主人公さん」
メアリーの年相応にあどけなさの残る屈託のない微笑は、余裕でもなく、傲慢でもなく、策謀でもなく。
そう、まさしく、純真。
そこには何の邪心もない、裏表もない。純真無垢にして最強であるべき彼女は何も謀略も、真意を偽る必要もないのだ。
メアリーはまだ何もしていないのに、彼女の天真爛漫な笑みにはそう思わせるだけの確かな、いや、もはや異常なまでの存在感があった。
わたしではメアリーに勝てない。
この物語はメアリーに勝てない。
どこをどう見たって、彼女の方こそがこの物語の主人公にふさわしいと錯覚してしまう。
まだきっとほんの少女、わたしと同じくらいの見た目で、しかしながら、可憐で儚げな印象すらあるのに、その儀礼じみた軍服がとても良く似合うのはなんだか不思議だった。
「あら、そうなの? それは残念ね」至極残念じゃなさそうに。
驚くべきは彼女のその容姿だ。
おそらく敵、それも、今まで出会ってきた中でも最上級の。
それなのに、数秒程見惚れてしまった。
まるでそれ自体が魅了の魔術のように完璧に整った、子どもとも大人とも言えないあどけない表情。ふわりと揺れる長いまつ毛の奥、精巧に研磨したダイアモンドのように輝く大きな瞳は光の加減だろうか、左右の色が淡いピンクと水色のオッドアイになっている。
木漏れ日を浴びるウェーブがかったピンクパールのロングヘアーがキラキラと煌めき、その髪を留めるヘアピンの横から覗く耳の先はエルフのように少しだけとがっていた。どこかの種族とのハーフなのだろうか。
彼女はその美しさでどこもかしこも発光している、なんだ、この眩さは。
軍服を着こなしていても華奢だとわかる小柄な体形と、そんな少女には似つかわしくない豊満な胸。……くそぉ、毎回毎回、巨乳の紹介しかしてねえ。
そう、その普通ならあり得ないほどに完成されて現実離れした容姿は作者の理想像を突き詰めた、究極にして完璧な自己投影の在り方。忌むべき物語の破壊者だ。この美しい森の奥で出会ってしまえば、それは幻惑の妖精との邂逅に等しい。遭遇したものは迷って死ぬ。
「彼女こそ、最強の転生者、メアリー・スーだ」
尊大な態度と傲慢な自己を併せ持つ転生者が、他人を最強だと紹介することに少しだけ驚く。
だけど、そう、なんとなく納得してしまう。
なぜなら、この少女は、どこからどう見たって理想の最大級だから。
どんな物語でも彼女が登場人物である限り、瞬く間に他の登場人物は、そう、それがたとえ主人公であっても彼女の存在の眩さに掻き消されてしまう。
「うふふ、よろしくね、主人公さん」
メアリーの年相応にあどけなさの残る屈託のない微笑は、余裕でもなく、傲慢でもなく、策謀でもなく。
そう、まさしく、純真。
そこには何の邪心もない、裏表もない。純真無垢にして最強であるべき彼女は何も謀略も、真意を偽る必要もないのだ。
メアリーはまだ何もしていないのに、彼女の天真爛漫な笑みにはそう思わせるだけの確かな、いや、もはや異常なまでの存在感があった。
わたしではメアリーに勝てない。
この物語はメアリーに勝てない。
どこをどう見たって、彼女の方こそがこの物語の主人公にふさわしいと錯覚してしまう。
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