この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

文字の大きさ
182 / 235
目的、この物語のテーマ

――    【飢餓之太刀・饗宴姫】     ――⑩

しおりを挟む
 少女は私を見る。その眼差しは鋭く、あからさまな敵意が少女のかわいらしい顔を醜く歪ませていた。その金と黒で分けられた髪色はその醜い憎悪にはお似合いだけど。ああ、なんて可哀想なのかしら、早く私を愛せるようにしてあげなきゃ。

「私は異能だとは思っていないけどね。この力は元々私が持っていたもの、そう、私の才能に他ならないわ」

 そう、きっと彼女には何もわからないでしょうね。だから、私は懇切丁寧に説明をしてあげる。わたしは、定義指針と外因衛星だけを展開する。……え?

「この物語を私のための物語にするの、」

「は?」

 なんだ、今のは。これはわたしの物語だぞ。こんなのがずっと続いたら物語どころか作品そのものが破綻してしまう。これはわたしの私の物語よじゃなくなってしまう。……クソ、干渉してくる!

「たとえ、それが物語の出来を悪くしても、私の自己満足でも、それでもいいの。だってそうでしょ、私は決して失敗しないし、誰からも愛され、誰からも理想とされるんだもの」

 ぎしり、現実改変に抗っていた機構翼が軋む。ばちり、防壁にノイズが走る。こんなことがあり得るの!? 物語そのものに干渉する異能なんて、それは全ての物語に、いえ、物語を綴る全ての者に対する冒涜だ!

「それなら、その物語は大団円でしょ?」

 だけど、それをメアリーは簡単にやらかそうとしている。これはどう考えてもまずい。物語としてホントに破綻してしまう。この世界だけじゃない、この物語の何もかもがここで終了してしまう。

 無邪気にほほ笑むだけのメアリーに、この世界を壊してやろう、なんて悪意は一切感じられない。だけど、彼女は自身に都合のいい世界だけを創り上げようとしている。一番質が悪い相手。

「何もしないくせに主人公だなんて、なんて虫のいい話かしら」

「いいえ、私の物語はこれから始まるの、きっと胸躍る大冒険よ」

 メアリーに目的や、物語のテーマなんてない。

 わたしは必死にそれを探してきたんだ、そんなの認めたくない。

 だけど、メアリーは違う。彼女だけがハッピーエンドなら、世界観もストーリーも情緒も登場人物さえもどうでもいい。そこには不純物がない。自己満足の塊。存在すべき世界すら破壊する最強の願望。

 彼女のための世界。彼女が何の苦労もなく無条件で愛されるだけの世界。たったそれだけの気持ち悪い物語になってしまう。

 新世界を創世する、という目的を持っている女神の方がある意味でまだマシかもしれない。彼女を評価する日が来ようとは思ってもみなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...