この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

文字の大きさ
181 / 235
目的、この物語のテーマ

――    【飢餓之太刀・饗宴姫】     ――⑨

しおりを挟む
「あら、アヴァリスったらもうやられちゃったんだ」

 まるで歌うような口調、それが仲間の死を悼んでいるようにはとても思えず。だからこそ、この天使のように光り輝く美少女も、心無き転生者なんだと再認識する。

 その足取りは最強最悪の原作破壊者にしては、あまりにも軽やかで、そして、ワルツのように美しい。

 彼女は他人が長い年月を掛けて築き上げてきた世界を土足で踏みにじりながら、我が物顔でこの物語を謳歌している。ここはアナタのための物語じゃないぞ。あ、いや、わたしだってこの世界に比べたらそりゃあポッと出だけど、そういうことじゃない、今まで紡いできた物語がそれでもわたしには確かにあるんだから。

「それじゃあ、今からこの物語の主人公は私ね」

「は? 何言って……」

「“現実改変世界終焉シナリオ・神堕ち(メアリー・スー)”」

 突如、視点が切り替わるような錯覚。不可解な変質。世界から切り離された感覚。

 わたし、という存在が塗り潰されていく。

 なんだ、意味がわからない、けど、早く、早くなんとかしないと、主人公どころか、この物語自体が別の何かに変わってしまう。

「我に構うな、彼女を助けてくれ!」

「ッ、均衡機構、トイヒーロー!」

 あの無機質な名無しの彼の叫びにハッとしながら。

 急速に枯れていく少女の身体を抱えたまま、機構翼の展開、ばさり、後ろへと飛び退く。距離を取って対処できる類の脅威なのかわからない、でも、とにかく、とにかく離れなきゃ!

「外因衛星、マルドゥック・アーカム・ヴェロシティ! 定義指針、ラステスファルテス!」

 意味不明、未知の脅威、未明の感覚。わからない、何もわからない、とにかく何かをしなければならない。あまりにも理不尽。カシャリ、自らの存在定義のさらなる固定、ピカッとわたしという形質の増強。わたしという色を染められないように、それだけを考える。

 着地と同時、両足から錆び付いた指先が瞬時に展開、機械翼の防御機能をさらに強化しながら、わたしと少女を覆う。そして、さらに小さなバッグから放たれる光がまるで半透明で四角い防壁のように、さらにわたし達を取り囲む。とにかく、何か、わからないけど、とにかく、わたしの持てる全てを開放しなきゃ、この未知数の異能に対処すらできない。

「チケット・ゥ・ライド! 灼血、メルト! 魔剣、アヴァルギリオン!」

 すでに展開していた絶対防御が物理的攻撃以外にも有効なのか不明、時間を加速したけど、メアリーは何事もなく悠然と、ほとんど半狂乱で物語を展開するわたしを見つめている、超高温、超回復、しかし、ダメージは受けていない、その異能が魔剣によって切り開かれた虚数へと取り込まれている様子はない。

 他はきっと今の状況ではあまり意味がない。振動も物理的破壊も天変地異も魅了も、メアリーの異能を防げない。

 明確な変化はない、それでも、何か不快な違和感がわたしに纏わりついて離れない。展開していた巨大な機械翼と光の防壁、そして錆び付いた指先がギシギシ軋む、今まさに原因不明な異常事態が起こっていて、わたし、という存在を脅かしている。

 メアリーの異能に巻き込まれた彼はどうなった? 周囲の様子を半透明の防壁に映し出された映像を通して窺うけど、あの巨大なはずの彼の姿が見当たらない。

 じとり、何か嫌な予感に背中を伝う汗。

「……な、何をしたの。その異能って一体何なの?」

「あら、まだ私の物語を受け入れないなんて可哀想ね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

処理中です...