この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね！？ ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

目的、この物語のテーマ

―― 【飢餓之太刀・饗宴姫】 ――⑧

　少女を抱えてわたしは咄嗟に機構翼で飛び立つ、アヴァリスはもうすでに臨戦態勢、こちらを一瞥もせず。

「わあ、お空を飛べるなんて素敵な翼ね、かわいらしい天使さんみたい」

　メアリーだけがわたし達を楽しそうに見上げていた。特に攻撃する素振りも、そして、その場から逃げようとすらしない。だけど、物語の筋も展開も、自分の立ち位置さえも気に留めていない、誰にも理解されずただひたすら独りよがりでしかない振る舞い、ちらりと見えたそんなメアリーの笑顔をなぜかわたしは寂しいと思った。

　そして、そんな刹那ほどの束の間の静寂、の後、観測機とアヴァリスの衝突。

「あ？」

　ひしゃげる彼の身体、振り上げられた腐乱の右腕ごと叩き潰す、振り下ろされた大岩のような拳。何の拮抗もなくアヴァリスの身体にめり込む、文字通りの鉄拳。

　不自然な体勢で叩き潰され、消えてなくなるほんの刹那、驚愕に目を見開いたまま観測機を見上げ、そのまま拳ごと地面へ沈む。あまりの衝撃に地面が盛大にめくれ上がり、周囲がクレーターのように埋没する。

　ふらふらと不時着したわたしは「ッ！」衝撃に再度吹き飛ばされる。

　あんな攻撃、普通なら即死。でも、彼はすてーたすまっくすを付与された転生者で、もしかしたら、ユノみたいに不死身の異能を誰かから奪っていて、いや、なんだったら現実改変能力で自身の死するという現実すら改変して。

　めり込んだままの拳は大山の如く微動だにせず。

　緊迫した沈黙。

　わたしは警戒しながらゆっくりと立ち上がる。

　だけど、アヴァリスは立ち上がらなかった。紛れもなくたった一撃でこの森の養分となるべく粉砕された。アヴァリスは決して噛ませ犬なんかじゃない、あの異常なまでの変貌と右腕の不気味な異能、それに現実改変能力さえも有していた。それなのに。

　あまりにもあっけない終焉。

　何もかもをたった一撃で終わらせた。

　転生者だって、死ぬときは死ぬ。目の前の光景は当たり前のことのはずなのに。いや、普通にそうなんだけど未だに信じられない。

「我は寓話的非現実実体観測機だ、この世界最高の物語性演算機能により、どのような使用にも耐えうる設計をされている」