この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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――    【飢餓之太刀・饗宴姫】     ――⑬

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「……ねえ、“始源拾弐機関”のおねえちゃん、泣かないで。ねえ、お名前をおしえて?」

 俯くわたしの頬を、そっと小さな手が触れた。ああ、この小さな女の子はこんな時に、約束も守れないこんなわたしを慰めてくれるのか。その手を伝うわたしの涙をこんなにも忌まわしいと思った。

「……わ、わたしは、【透明幻想・錯綜少女基底】、希望を……」

 言いかけて口を噤む。希望を司るもの、そんなのこの少女に対して名乗れるはずがない。

「どうしたの、【透明幻想・錯綜少女基底】、どうしてそんなにかなしいお顔をしているの?」

「だ、だって、アナタを……」

「だいじょぶだよ、この森は、あたしは死なないよ。あたしは【飢餓之太刀・饗宴姫】――世界を継続させるもの。始まりと終わりを司っているの、だから、いつかきっとまた会えるよ」

 少女は小さく微笑んだ。わたし達を悲しませまいとする痛々しく弱々しい笑みだった。こんな小さな少女にそんな強がりをさせてしまうわたしの非力を呪いたくなった。

「貴女はこの世界に必要な機能だ。しかし、我が感情はそうではなく、貴女の消失を悲しんでいる」

 彼は彼女の機能を理解している。だけど、それと実際の死を目の当たりにした時の感情に揺れ動いている。二律背反は善悪だけじゃない、生死も、そして、理性と感情だってそうなんだ。

 少女の機能は、輪廻だ。だから、少女の存在がこの世界から消えるわけじゃない。

 だけど、だけど。

「ありがとう、わたしのために泣いてくれて」

 少女は彼に手を伸ばす。彼は壊れてしまってほとんど動けなかったけど、かろうじてそのあまりにもか弱い手に触れた。

 目の前のそれは紛れもなく、死、であって、そして、それはあまりにも理不尽だった。

 何もできないわたし達の目の前で、【飢餓之太刀・饗宴姫】は……

「ありがとう、わたしのために」



  ーーKom med os...
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