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最終章:第二次新異世界大戦
――悪役令嬢、新異世界で破滅フラグに抗うー―③
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時は停止する。
時は加速する。
時は動き出す。
わたしの身体能力は言うまでもなくただの一般的な女の子と同じか、もしかしたらそれ以下だ。自分で言ってて悲しくなるけど、そう自負している。
けど、そこに速さが加わったらどうだろう。
速度は強さだ。
速度は無常だ。
速度は浪漫だ。
少し小突かれたくらいならどうってことないけど、それが、物凄いスピードで脳みそを揺すぶる小突きだとしたら。
ゆっくり動くものには反応できても、速すぎるものには追い付けない。
だからこそ、時を操る機能、能力、魔法はみんなの憧れで、無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーッて言いたいのはわたしだけじゃないはずなんだ。
アイリンロッテはいたって普通のお嬢様。だから、ほんの少し額の真ん中を小突けばいい。そうして、彼女が目を覚ましたその後に改めて仲直りすればいい。
そんなことを考えながら、わたしはゆっくりと止まったままのアイリンロッテへと向かう。正確にはわたしの方が加速しているんだけどね。
威風堂々と立つ彼女はわたしがいた場所をじっと凝視している。当たり前だ。だけど、「ん?」なんだか違和感。には構わず、彼女の額に人差し指を「!?」
目にも留まらないはずの速度で動いたはずなのに、確かにこちらを見ていたような気がした。
そんなはずない。刹那、疑念払拭。だけど、
「あら、ご機嫌あそばせ? 結構な大口を叩いておいてこれでおしまいかしら?」
……なんだ、このお嬢様、強いぞ?
とっさに機能を解除して、後方へと飛び退く。
飾りかと思っていた腰に差していた小さな杖がいつの間にか引き抜かれ、彼女とわたしの前に防御の魔法陣が立ち塞がる。
「研鑽を積んで参りましたのよ? わたくしはいつこのお城どころか国からも追放されかねない悪役令嬢でしたから。たとえ、いつそうなってしまっても大丈夫なように、武術も魔法もこの世界の一般的な教養も、人一倍誰よりも身に着けているのですわ」
彼女には、今まで出会ってきた転生者のような傲慢さはない。
ただひたすら謙虚に、自らに降りかかるべき破滅の運命に抗わんとし続けて、そして、ついにそれを成し遂げた。
「わお、この世界でアナタみたいな転生者がいたなんてびっくり! わたし達、もっと早く出会えていればきっとお友達になれたのに」
「いいえ、それはありえませんわ。わたくしにとって主人公とはありとあらゆる手段で打倒すべき仇敵なのですもの」
つまり、彼女は自身が主人公にはなりえないと自覚している。ますます彼女と戦う理由がなくなってしまった。
時は加速する。
時は動き出す。
わたしの身体能力は言うまでもなくただの一般的な女の子と同じか、もしかしたらそれ以下だ。自分で言ってて悲しくなるけど、そう自負している。
けど、そこに速さが加わったらどうだろう。
速度は強さだ。
速度は無常だ。
速度は浪漫だ。
少し小突かれたくらいならどうってことないけど、それが、物凄いスピードで脳みそを揺すぶる小突きだとしたら。
ゆっくり動くものには反応できても、速すぎるものには追い付けない。
だからこそ、時を操る機能、能力、魔法はみんなの憧れで、無駄無駄無駄無駄無駄ァーーーッて言いたいのはわたしだけじゃないはずなんだ。
アイリンロッテはいたって普通のお嬢様。だから、ほんの少し額の真ん中を小突けばいい。そうして、彼女が目を覚ましたその後に改めて仲直りすればいい。
そんなことを考えながら、わたしはゆっくりと止まったままのアイリンロッテへと向かう。正確にはわたしの方が加速しているんだけどね。
威風堂々と立つ彼女はわたしがいた場所をじっと凝視している。当たり前だ。だけど、「ん?」なんだか違和感。には構わず、彼女の額に人差し指を「!?」
目にも留まらないはずの速度で動いたはずなのに、確かにこちらを見ていたような気がした。
そんなはずない。刹那、疑念払拭。だけど、
「あら、ご機嫌あそばせ? 結構な大口を叩いておいてこれでおしまいかしら?」
……なんだ、このお嬢様、強いぞ?
とっさに機能を解除して、後方へと飛び退く。
飾りかと思っていた腰に差していた小さな杖がいつの間にか引き抜かれ、彼女とわたしの前に防御の魔法陣が立ち塞がる。
「研鑽を積んで参りましたのよ? わたくしはいつこのお城どころか国からも追放されかねない悪役令嬢でしたから。たとえ、いつそうなってしまっても大丈夫なように、武術も魔法もこの世界の一般的な教養も、人一倍誰よりも身に着けているのですわ」
彼女には、今まで出会ってきた転生者のような傲慢さはない。
ただひたすら謙虚に、自らに降りかかるべき破滅の運命に抗わんとし続けて、そして、ついにそれを成し遂げた。
「わお、この世界でアナタみたいな転生者がいたなんてびっくり! わたし達、もっと早く出会えていればきっとお友達になれたのに」
「いいえ、それはありえませんわ。わたくしにとって主人公とはありとあらゆる手段で打倒すべき仇敵なのですもの」
つまり、彼女は自身が主人公にはなりえないと自覚している。ますます彼女と戦う理由がなくなってしまった。
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