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最終章:第二次新異世界大戦
勇者パーティを追放された呪われし無能タンクは新異世界を攻略する②
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「さあ、魔物め、かかってこい! 勇者のパーティには役立たずと追放されたが、オレにだって何かできるはずなんだ」
彼の言葉にふと、違和感。
彼が役立たず?
そんなことあり得ない、だって彼はどう見たって転生者で、それに防御力が無限だなんてあまりにも最強すぎるのに。
「ねえ、アナタ、本当に無能だと思われていたの?」
「ああそうだ、彼らにはオレの技量を正しく評価できなかったのかもしれないな」
彼がはたして謙虚なのか傲慢なのかわからない。長大な槍を下段に構えるわたしに対して、彼は丸腰のままの臨戦態勢。圧倒的にわたしの方が有利。
だけど、両手の拳を構えただけの彼の表情は硬質的で何を考えているのかまでは計り知れない。緊張かはたまた集中か。どこかにわたしに打ち勝つ算段でもあるのだろうか。
そんな彼と対峙しながらわたしは、この出会いは偶然じゃない、って違和感にまだ苛まれていた。いや、彼がわたしの運命の相手ではないことは確かで。
そういうロマンチックなことじゃなくて、この出会い頭の対峙は誰かによって仕組まれた作為的な何かを疑っているって方。だって、こんな引退してふらふらしているだけの転生者に突っかかるほどわたしはヒマじゃないもの。
「……どうしてケヴィン達のパーティを追放されたの?」
「オレの異能は呪いだったんだ、バッドステータスなんて嫌われて当然だろ?」
「いいえ、わたしの知ってるケヴィンはそんなこと言わない」
ケヴィンは、小さくて何も持たなかったわたしの身を案じて、いいえ、わたしのことを守り切る自信がないから自分のパーティに入れることをしなかった……んだと思ってる、あの時はまだ。
だから、根は心優しい彼が、あの時、木に引っかかっていて身動きの取れなくなっていたわたしを助けてくれた彼が、せっかく引き入れた仲間が呪いに苛まれているのにはたして追放なんてことするだろうか。きっと、ケヴィンだったら冒険なんてそっちのけでその呪いを解く方法を探すような気がするんだ。
「……裏切り者はどっちかしら、ねえ、自称・呪われし無能タンクさん」
この邂逅が偶然でも必然でもどっちでもよくなった。だって、わたしが彼のことをどうしようもなく許せなくなってしまったから。
「不幸自慢はさぞかし気分がいいでしょうね、そして、そこからかつて自分を蔑んだ者達を見返す快感も」
「そんなこと……」
ぴくりと片方の眉だけを動かした彼は一瞬だけ戸惑ったようにわたしを見つめた。何か言い訳でも考えていたのかもしれない。だけど、それもほんの少しの間だけ、結局彼がわたしの言葉を否定することはなく、それどころか。
「ああ、まあ、確かに。オレが抜けた後のアイツらのパーティは悲惨だったみたいだな」
硬質的で、だけど、どこか穏やかだった彼の表情がにやりと歪む。……オーケー、それが本性ってわけね。きっと引退したっていうのもおそらくは自分を過小評価させるためのものね。なんて性格の悪さなのかしら。
彼の言葉にふと、違和感。
彼が役立たず?
そんなことあり得ない、だって彼はどう見たって転生者で、それに防御力が無限だなんてあまりにも最強すぎるのに。
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だけど、両手の拳を構えただけの彼の表情は硬質的で何を考えているのかまでは計り知れない。緊張かはたまた集中か。どこかにわたしに打ち勝つ算段でもあるのだろうか。
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