この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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最終章:第二次新異世界大戦

ーー  新異世界転生先は世界を救った勇者の子孫!?ーー⑥

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 わたしは路地裏のさらに陰に入り、ビルの一つに飛び込む。すると、ようやく名残惜しそうにわたしの身体を執拗に撫で回す不快な感触が消える。「んッ」わたしは押し殺していた息を一気に吐き出す。良かった、危なく息が漏れてしまうところだった。喘いで吐息なんて出してしまったら、わたしは情けなくて死んでしまう。

「おいおい、威勢のいいこと言っといて逃げんなよ、テメェはオレのオモチャなんだからよ!」

 アイツの魔法は別にわたしの姿を見なくてもちゃんと発動できるはずだ。だけど、それをしないのはきっと、アイツ自身がわたしの無様な姿を、そして、死にざまを見たいからだ。

 確かに彼が勇者の血統として継承した力は凄まじい。

 それでも、この世界では明らかに異質なわたしの存在は、彼の数ある究極魔法をもってしても捕捉不可能なんだ。それだけがわたしの持つ唯一のアドバンテージ、それを活かす。誰にも観測されない物語に空いた白い点、わたしはこの世界のイレギュラーで特異点、そうよ、わたしだってちゃんと主人公っぽいじゃない。

「この指は星を掴むわ、アナタの射程範囲なんて知ったこっちゃない」

 うんざり深呼吸、大丈夫、もう落ち着いた。ぎしり、ブーツが軋む。

「楽しみたいなら、ゼロ距離で触れ合いましょうよ?」

 天を衝くほどの長大な指を最大開放。わたしの小さな身体なんて全部覆ってしまうほどの機械の大隊が一斉に彼に襲い掛かる。

 風化して錆び付き耳障りな金属音を奏でながら茶色に変色してしまった機械の指が触れる全ての高層ビルをなぎ倒していく。その様子は最新鋭の無機質な銀色の街並みにはあまりに不似合いだ。

 無秩序な大破壊、こんな様子を【深層義肢】が見ていたらなんて言うだろう。きっと思わず叫び出しちゃうかもね。

 でも、この街は壊す、この銀色の街並みはこの物語の世界観とは相容れない!

「おい、どこ行きやがった! 出て来いよ、鉄屑がよぉ!」

 なんかさっき似たようなセリフ言った気がして、思わずにやりとしてしまう。ホント、お前が言うな、だわ。

 この指の全てがわたしと同じ、“始源拾弐機関”の機能で、きっと彼の魔法では観測不可能な概念だ。

 捕捉されてしまうなら、的を大きくすればいい。大きな点の中に隠れてしまえばいい。

 定義指針の全てを展開する。出し惜しみなんてしない、今わたしにあるのは嫌悪すべきクソ野郎への底知れぬ憎しみだけ。

 どうしてこんなにムカつくんだ。彼だって数多いる憎むべき転生者の一人に過ぎないはずなのに。彼に匹敵するほどの吐き気を催すほどの邪悪にだって何度も対峙したことだってあるはずなのに。

「オレはもう神に等しいんだよ! ムダな足掻きなんてやめて一緒に気持ち良くなろうじゃねぇか!」

 なるほど、自称天上天下唯我独尊を体現するコイツの上には何もいないらしい。それはつまり、自分が神様にでもなったのだと自惚れているにすぎない。

「あひゃひゃ、こうして高みからじわじわ嬲って、そんで泣いて懇願してるのを殺すのがサイコーなんだよなあ!」

 コイツはわたしの神経を逆撫でしかしない。わたしはブーツを展開する関係上、その場からほとんど動けない。いつまでも見下されるのも精神衛生的に良くない。

 っていうか、こんなサイテーなヤツに乙女の清らかな身体を触られたってのがまず許せない。この作品は全年齢対象のいたって健全な物語だぞ。色々ギリギリセーフだぞ!
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