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白紙
ーー かみ∩縺斐m縺 ーー⑧
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「あ、その憐みの眼差しやめてもらっていいですか? そんなポッと出の中途半端な同情なんて反吐が出る」
そう言ってから小烏丸は自分が創り上げたはずのこの世界に向けて侮蔑に舌を出す。
「ワタクシは、ワタクシがやりたいことをやるだけです。そこに必要悪なんてない。ただそれだけのことでしかないんですよ。それに……」
そこで言葉を切って、そして、彼女は言う。
「何もないこんな世界なら、ワタクシだって必要とされるでしょ?」
その笑顔がどうしようもなく痛々しくて、それはまるで、世界そのものが彼女を敵視しているかのような悲痛な言葉だった。いや、実際、彼女は必要悪として世界を裏切ることを強いられていた。
だからこそのこんな世界。
確かに、何もない世界なら必要悪だって関係ない。
だけど。
「ねえ、こんな世界、虚しいだけよ。何の意味もない世界に何があるの?」
じっと見つめた小烏丸のオニキスブラックの瞳が今一体何を考えているのかわたしにはわからなかった。飲み込まれてしまいそうな漆黒。それこそがこの世界の唯一の色、そう錯覚させられてしまう。そんな疑念を必死に振り払う。
わたしは、この世界を変える。
「天触、ヨトゥングラガナ」
わたしの全身を光り輝く紋様が覆う。世界を変える力、だけど今は。
「無駄です、もう変えるべき世界はここにはありません」
「生殺輪廻、キガノタチ・キョウエンヒメ」
「無駄だって言ってるでしょ? ここには生命すらないんですから」
小烏丸の嘲笑に無言で俯き、自分の髪から引き抜いた小さなかんざしを右手に握りしめながら、わたしはどうやっても拭いきれない敗北の気配を感じ取ってしまう。
この戦いの結末じゃない。
彼女が世界を壊す理由に、だ。
何も持たなかったわたしの物語とは違う。
彼女の異世界神話創世の物語は、あまりにも色濃い目的と揺らぐことなき動機を、そして、自身を必要悪として生み出したこの世界への復讐という明確なテーマの、酷く陰鬱で魅力的ですらある物語だった。
わたしは今まで何をしてきた?
わたしは何を見つけられた?
わたしはこの物語を彩ることができていただろうか。
さらり、うつ向いたわたしに悪趣味な色の髪が掛かる。ふふ、そうね、こんなところで、こんなことで、アナタ達が薄暗い地下街で夢見た未来を諦めてなるものですか。わたしだってSFも書いてみたいんだから。
「アナタが善か悪か、なんて知らない。それを決めるのは、わたし達にはちょっと早すぎる」
「善悪なんてワタクシとダダ被りじゃないですか。要らないでしょ、それ」
「アナタとは違って彼らは未来に生きていた。アナタなんかが【倫理狂い】の可能性を否定するな!」
足元まであるわたしの黒と金の髪が光り輝く。わたしの身体を包み込むその眩い光でわたしは何もわからなくなって。
だけど、目も開けられない光の中、ただ一つだけわかることがあって。
わたしは、もう二度と。
この世界を壊させない。
「……さっきからそんなもので一体何を狙ってるんですか」
小烏丸は不機嫌そうに顔をしかめる。
「隷淫色欲、キャンディス・スワンポール」
わたしの手の中には幾何学模様と球体を組み合わせた、まるで、いや、まるっきりオモチャみたいな光線銃。手のひらに乗ったそれを茫然と見つめていると、さらり、耳元から落ちてきた髪はこの世界のように真っ白だった。ふふ、悪趣味ね、こんなところで元に戻されたらアナタ達のこと忘れちゃうじゃない。
「この世界を彩るの、この物語はそういうお話よ」
そうだ、小烏丸の物語がいくら魅力的だからといって、それでわたしがわたしの物語を諦めていい理由にはならない。わたしにはわたしの物語がある。それをこの未来的な光線銃でわからせてやる。
「鬱陶しいですね、未来の機能なんて」
わたしはそう吐き捨てる小烏丸に球体状の銃口を向ける。これはわたし達には計り知れない善悪を司る機能だ。さすがの神様だってこれだけは打ち消しようがない。
躊躇なく祈りのように引き金を撫でる。ふざけた形としか思えない光線銃から放たれた一筋の光は、ほんの少しだけ首を傾げた小烏丸のすぐ真横を通り過ぎて白い世界へと消えていった。
そう言ってから小烏丸は自分が創り上げたはずのこの世界に向けて侮蔑に舌を出す。
「ワタクシは、ワタクシがやりたいことをやるだけです。そこに必要悪なんてない。ただそれだけのことでしかないんですよ。それに……」
そこで言葉を切って、そして、彼女は言う。
「何もないこんな世界なら、ワタクシだって必要とされるでしょ?」
その笑顔がどうしようもなく痛々しくて、それはまるで、世界そのものが彼女を敵視しているかのような悲痛な言葉だった。いや、実際、彼女は必要悪として世界を裏切ることを強いられていた。
だからこそのこんな世界。
確かに、何もない世界なら必要悪だって関係ない。
だけど。
「ねえ、こんな世界、虚しいだけよ。何の意味もない世界に何があるの?」
じっと見つめた小烏丸のオニキスブラックの瞳が今一体何を考えているのかわたしにはわからなかった。飲み込まれてしまいそうな漆黒。それこそがこの世界の唯一の色、そう錯覚させられてしまう。そんな疑念を必死に振り払う。
わたしは、この世界を変える。
「天触、ヨトゥングラガナ」
わたしの全身を光り輝く紋様が覆う。世界を変える力、だけど今は。
「無駄です、もう変えるべき世界はここにはありません」
「生殺輪廻、キガノタチ・キョウエンヒメ」
「無駄だって言ってるでしょ? ここには生命すらないんですから」
小烏丸の嘲笑に無言で俯き、自分の髪から引き抜いた小さなかんざしを右手に握りしめながら、わたしはどうやっても拭いきれない敗北の気配を感じ取ってしまう。
この戦いの結末じゃない。
彼女が世界を壊す理由に、だ。
何も持たなかったわたしの物語とは違う。
彼女の異世界神話創世の物語は、あまりにも色濃い目的と揺らぐことなき動機を、そして、自身を必要悪として生み出したこの世界への復讐という明確なテーマの、酷く陰鬱で魅力的ですらある物語だった。
わたしは今まで何をしてきた?
わたしは何を見つけられた?
わたしはこの物語を彩ることができていただろうか。
さらり、うつ向いたわたしに悪趣味な色の髪が掛かる。ふふ、そうね、こんなところで、こんなことで、アナタ達が薄暗い地下街で夢見た未来を諦めてなるものですか。わたしだってSFも書いてみたいんだから。
「アナタが善か悪か、なんて知らない。それを決めるのは、わたし達にはちょっと早すぎる」
「善悪なんてワタクシとダダ被りじゃないですか。要らないでしょ、それ」
「アナタとは違って彼らは未来に生きていた。アナタなんかが【倫理狂い】の可能性を否定するな!」
足元まであるわたしの黒と金の髪が光り輝く。わたしの身体を包み込むその眩い光でわたしは何もわからなくなって。
だけど、目も開けられない光の中、ただ一つだけわかることがあって。
わたしは、もう二度と。
この世界を壊させない。
「……さっきからそんなもので一体何を狙ってるんですか」
小烏丸は不機嫌そうに顔をしかめる。
「隷淫色欲、キャンディス・スワンポール」
わたしの手の中には幾何学模様と球体を組み合わせた、まるで、いや、まるっきりオモチャみたいな光線銃。手のひらに乗ったそれを茫然と見つめていると、さらり、耳元から落ちてきた髪はこの世界のように真っ白だった。ふふ、悪趣味ね、こんなところで元に戻されたらアナタ達のこと忘れちゃうじゃない。
「この世界を彩るの、この物語はそういうお話よ」
そうだ、小烏丸の物語がいくら魅力的だからといって、それでわたしがわたしの物語を諦めていい理由にはならない。わたしにはわたしの物語がある。それをこの未来的な光線銃でわからせてやる。
「鬱陶しいですね、未来の機能なんて」
わたしはそう吐き捨てる小烏丸に球体状の銃口を向ける。これはわたし達には計り知れない善悪を司る機能だ。さすがの神様だってこれだけは打ち消しようがない。
躊躇なく祈りのように引き金を撫でる。ふざけた形としか思えない光線銃から放たれた一筋の光は、ほんの少しだけ首を傾げた小烏丸のすぐ真横を通り過ぎて白い世界へと消えていった。
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