この世界はわたしが創ったんだから、わたしが主人公ってことでいいんだよね!? ~異世界神話創世少女 vs 錯誤世界秩序機能~

儀仗空論・紙一重

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        白紙        

ーー  縺九∩縺斐ろし  ーー⑦

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「……プライベートなことは話したくないんじゃないの?」

「……アナタはワタクシですから」

「え……?」

 小烏丸にしては珍しく、自身に言い聞かせるようなぽつりと小さく呟いたその言葉は、わたしには良く聞こえなかった。聞き返そうとするが、それを遮るように彼女は続ける。

 まるで、自分の名前を思い出すように。

 まるで、自分の名前を今知ったかのように。

 まるで、自分の名前を忘れていたかのように。




「ワタクシは【かみごろし】――世界を裏切るもの。司っているのはなんと、必要悪、です」




 小烏丸、いや、【かみごろ「あ、【かみごろし】なんて呼んだらぶっ殺しますからね」……小烏丸の口調は依然として軽々しく、その真意は全くもって見えてこない。

 なんてこと。彼女もまた、この錯誤世界秩序機能、“始源拾弐機関”だった。

 そうか、あの時、【軌条空論・紙一重】は小烏丸の正体を知ったんだ。そして、だからこそ同じ“始源拾弐機関”である彼女の暴走を止めようとした。うん、やっぱり、彼は正義の味方だった。

 定義指針を解除、かしゃり、錆びた鉄塔を黒革のブーツに戻しながらゆっくりと立ち上がる。

「……でも、どうして? どうして“始源拾弐機関”のアナタがこの世界を壊してしまおうだなんて……」

「はあ? だって、必要悪、なんて、そんなもん世界には必要ないじゃないですか、みんなが幸せハッピーセットになれる世界じゃダメだったんですかね!?」

 そう、必要悪、なんて機能はこの錯誤世界に対し、何もしない。そう、彼女はその存在だけで自己完結してしまっている。その機能の必要性をわたしですら疑問に思う。

 こんなの、ただの生贄じゃないか。

 彼女だけを悪だと設定してしまえばいい。

 原初にして根源たる機能。無より生じた無意味な機能。性悪説なんてあまりにも理不尽だ。

「世界に悪なんて必要ない、だからワタクシはこの世界を壊すのです」

 彼女は、わたしだ。何者にも染まることのできなかったものの成れの果て。

 世界最古の機能。わたしが始めた物語じゃなかったのか。彼女こそが真の特異点なのか。

世界はどうしてそんな彼女の物語を、いいえ、その存在を忘れてしまったのか。

 なんとなくだけどわかる。ただそこに存在するだけで世界を破滅させてしまうもの、必要悪、なんて口にも出したくはない、絶対に口に出してはいけない。そうやって忌み嫌われ続けて、とうとう名前すら忘れ去られてしまった。そうやって自身の機能に苦悩しながら、自身を生み出したこの世界の破壊を願い、そして、今、その願いは成就した。

 誰よりも悪を嫌う少女の機能が必要悪、だなんてあまりにも非情じゃないか。

 世界の全てから嫌悪されるべき存在。そんなのあんまりだ。
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