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2.BADSCHOOL
心臓の魔剣は学園生活に馴染めるか
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「なんもわかんないわ、っていうか、それ大丈夫なの? 普通心臓にナイフなんて刺さってたら死ぬんじゃない?」
「先生、そんな普通のことを聞きたいんじゃあないんですよ。この聖遺物が何なのか、それを訊きにわざわざ出向いたんです」
「先生相手にすごい上から来るじゃん」
「ほぼ初対面なんで」
「ちゃんと学校来ような?」
図書館の隅で椅子に座って柔らかな日差しを浴びているその出で立ちはまるでヴィンテージの安っぽい映画の文学少女みたいだ。換装してるだろうけどもう結構いい歳だよな。
全体的にブラウンでまとめたゆったりとしたコーディネート。大きめのニットセーターの上にカーディガンを羽織り、ロングスカートから覗く足元には黒いブーツを履いている。
「それにしても不気味な聖遺物ね、めっちゃキモいじゃん」
歴史を研究しているというカグラ先生の口調はその見た目に反してめちゃ気軽だった。
今にも崩れて風化してしまいそうな古い本をパラパラめくりながら、これももう誰も着けている者などいないただのメガネを慣れていない動作で掛けなおす。
そう、この誰も来ない図書館の主であらせられるカグラ先生は完全に文学かぶれのミーハーだった。コスプレの極みみたいなもんだ、学校でやるなんて職権乱用もいいところだ。
「学校で身の丈に合わないコスプレかましてる先生に言われたくないですね」
「ひどい!」
完全に無駄骨だった。
この心臓の魔剣が何なのか、歴史研究家でもある先生なら知っているかもしれない、という淡い期待はあっさり消えてしまった。
「っていうか、持ち主の心臓を欲する魔剣、なんて聞いたこともないし。たとえそんな物が存在したとして、いちいち持ち主を殺してたんじゃ伝承にも残らないんじゃないの?」
例えば。
その魔剣が敵対する者全てを殺し、味方すら殺し、最後には持ち主までもを殺してしまうのなら。
綴るべき者、読むべき者、そして、伝承するべき者がいなければ物語は成立しない。
「ま、何もわからないならいいです、帰ります」
「素っ気な! たまには遊びに来てよー、先生ヒマなのよー」
そんな最低最悪な結末を想像してしまって、オレはなんとなくそわそわと図書室を離れる。ま、たまには遊びに行ってやろうか。
教室でみんなお揃いの学習装置を被ってよだれ垂らしながら白目剥いているよりは、カグラ先生と中身のない会話してる方がほんの少しだけ有意義な気がしないでもないし。
それは今日の朝の出来事だ。
メグリの(半ば強制的な)忠告により、渋々学校に来たはいいが、昨日の今日だぞ。出血多量と寝不足で完全にバッドなコンディションでこれはキツすぎんだろ。
「なんだって、今さら学校なんかに」
「ワタシの魔眼壊したでしょ」
「う」
「ルジネが言ったんでしょ、メンテしてもらえって。だから、放課後デートに付き合って」
「なんでお前なんかと」
「壊したのはルジネでしょ」
「…………」
そう言われてしまうと何も反論できず。
心臓に突き刺さったままの魔剣は、明け方まで続いた言い争いの末に今はサバイバルナイフくらいのサイズになってもらっている。まあ、依然として完全にぶっ刺さってるけど、あのバカでかいサイズよりはだいぶマシだ。
「でも、おかしいのはその魔剣を視たときだけなの、それ以外は問題なく作動できるんだけどな」
「それ、壊れてんのか?」
「壊れてる。壊れてるって言ったら壊れてるの! だから」
「デートに付き合えってんだろ? わかりましたよ、お姫さま」
「で、結局その魔剣の名前決めたの?」
「ああ、魔剣、アウラ。なんだかんだでほとんどコイツの意見で決めた」
久しぶりの高校。
何の感慨もない。
この鬱陶しく感じていた髪を切る前で良かった。陰鬱な視線を隠すのにこの伸びた黒髪はちょうどいい。誰とも話したくはないからな。
それにしても。
目立ちすぎだ。
「おい、メグリ、保護者気取りでいつまでくっついてんだ」
「え、同じクラスなんだからいいじゃん」
上位ランカーかつ生徒会長のメグリと、しょーもない不登校男子生徒(しかも心臓にナイフが突き刺さっている)の組み合わせはどうしようもなく全生徒の視線を集めちゃうやろがい。
メグリはその辺全く気にしている様子はない。
まあ、こいつは昔から周りが自分をどう評価しようともどこ吹く風だったからな。
それはそれですげーと思う。周りの目ばかり気にしているオレには無理だ。
つーか、それにしてもひそひそ話はもっと聞こえないようにするべきだ。さっきからやかましすぎる。
オレの居場所はここにはない。
どうにかして居場所をねじ込もうとしたオレの試みはいつだって失敗に終わっている。
それで結局今日も教室にすら行かずに、図書室で無駄足踏んでただけだけど。
この魔剣の正体は結局わからずじまい。
かといって、ジャンク屋からくすねた正体不明の聖遺物を当局に調べさせるのも何かとまずい気がする。魔剣の正体どころかオレの正体までバレちまう。
「アウラ、お前、マジで何なんだよ」
(だから言うておろうに、■■■■■■じゃと。主が理解できないのが悪いのじゃ)
「はいはい、すいませんね」
この減らず口を叩く魔剣はどうして今オレの手に、いや、心臓に在るのか。
どうして、オレはこの詳細不明な魔剣を聖遺物として想像してしまったのか。
オレはこの魔剣で一体何をどうしろってんだ。
ずっと魔力無しだった落ちこぼれのオレが、魔剣との契約(?)、という形でとんでもない魔力を手に入れた。
それだけで世界は変わるはずだった。
もうとっくに授業は始まっている。
廊下には誰もいない。
もはや授業に出る気は更々なく。
なんとなくこの誰もいない白い風景が、自分だけがこの世界から取り残されてしまったように思えて。
そんな理不尽な疎外感から逃げるように、どうしてだろうか、行ったこともない屋上へと向かった。はッ、オレも大概だよな、反吐が出るぜ。
「先生、そんな普通のことを聞きたいんじゃあないんですよ。この聖遺物が何なのか、それを訊きにわざわざ出向いたんです」
「先生相手にすごい上から来るじゃん」
「ほぼ初対面なんで」
「ちゃんと学校来ような?」
図書館の隅で椅子に座って柔らかな日差しを浴びているその出で立ちはまるでヴィンテージの安っぽい映画の文学少女みたいだ。換装してるだろうけどもう結構いい歳だよな。
全体的にブラウンでまとめたゆったりとしたコーディネート。大きめのニットセーターの上にカーディガンを羽織り、ロングスカートから覗く足元には黒いブーツを履いている。
「それにしても不気味な聖遺物ね、めっちゃキモいじゃん」
歴史を研究しているというカグラ先生の口調はその見た目に反してめちゃ気軽だった。
今にも崩れて風化してしまいそうな古い本をパラパラめくりながら、これももう誰も着けている者などいないただのメガネを慣れていない動作で掛けなおす。
そう、この誰も来ない図書館の主であらせられるカグラ先生は完全に文学かぶれのミーハーだった。コスプレの極みみたいなもんだ、学校でやるなんて職権乱用もいいところだ。
「学校で身の丈に合わないコスプレかましてる先生に言われたくないですね」
「ひどい!」
完全に無駄骨だった。
この心臓の魔剣が何なのか、歴史研究家でもある先生なら知っているかもしれない、という淡い期待はあっさり消えてしまった。
「っていうか、持ち主の心臓を欲する魔剣、なんて聞いたこともないし。たとえそんな物が存在したとして、いちいち持ち主を殺してたんじゃ伝承にも残らないんじゃないの?」
例えば。
その魔剣が敵対する者全てを殺し、味方すら殺し、最後には持ち主までもを殺してしまうのなら。
綴るべき者、読むべき者、そして、伝承するべき者がいなければ物語は成立しない。
「ま、何もわからないならいいです、帰ります」
「素っ気な! たまには遊びに来てよー、先生ヒマなのよー」
そんな最低最悪な結末を想像してしまって、オレはなんとなくそわそわと図書室を離れる。ま、たまには遊びに行ってやろうか。
教室でみんなお揃いの学習装置を被ってよだれ垂らしながら白目剥いているよりは、カグラ先生と中身のない会話してる方がほんの少しだけ有意義な気がしないでもないし。
それは今日の朝の出来事だ。
メグリの(半ば強制的な)忠告により、渋々学校に来たはいいが、昨日の今日だぞ。出血多量と寝不足で完全にバッドなコンディションでこれはキツすぎんだろ。
「なんだって、今さら学校なんかに」
「ワタシの魔眼壊したでしょ」
「う」
「ルジネが言ったんでしょ、メンテしてもらえって。だから、放課後デートに付き合って」
「なんでお前なんかと」
「壊したのはルジネでしょ」
「…………」
そう言われてしまうと何も反論できず。
心臓に突き刺さったままの魔剣は、明け方まで続いた言い争いの末に今はサバイバルナイフくらいのサイズになってもらっている。まあ、依然として完全にぶっ刺さってるけど、あのバカでかいサイズよりはだいぶマシだ。
「でも、おかしいのはその魔剣を視たときだけなの、それ以外は問題なく作動できるんだけどな」
「それ、壊れてんのか?」
「壊れてる。壊れてるって言ったら壊れてるの! だから」
「デートに付き合えってんだろ? わかりましたよ、お姫さま」
「で、結局その魔剣の名前決めたの?」
「ああ、魔剣、アウラ。なんだかんだでほとんどコイツの意見で決めた」
久しぶりの高校。
何の感慨もない。
この鬱陶しく感じていた髪を切る前で良かった。陰鬱な視線を隠すのにこの伸びた黒髪はちょうどいい。誰とも話したくはないからな。
それにしても。
目立ちすぎだ。
「おい、メグリ、保護者気取りでいつまでくっついてんだ」
「え、同じクラスなんだからいいじゃん」
上位ランカーかつ生徒会長のメグリと、しょーもない不登校男子生徒(しかも心臓にナイフが突き刺さっている)の組み合わせはどうしようもなく全生徒の視線を集めちゃうやろがい。
メグリはその辺全く気にしている様子はない。
まあ、こいつは昔から周りが自分をどう評価しようともどこ吹く風だったからな。
それはそれですげーと思う。周りの目ばかり気にしているオレには無理だ。
つーか、それにしてもひそひそ話はもっと聞こえないようにするべきだ。さっきからやかましすぎる。
オレの居場所はここにはない。
どうにかして居場所をねじ込もうとしたオレの試みはいつだって失敗に終わっている。
それで結局今日も教室にすら行かずに、図書室で無駄足踏んでただけだけど。
この魔剣の正体は結局わからずじまい。
かといって、ジャンク屋からくすねた正体不明の聖遺物を当局に調べさせるのも何かとまずい気がする。魔剣の正体どころかオレの正体までバレちまう。
「アウラ、お前、マジで何なんだよ」
(だから言うておろうに、■■■■■■じゃと。主が理解できないのが悪いのじゃ)
「はいはい、すいませんね」
この減らず口を叩く魔剣はどうして今オレの手に、いや、心臓に在るのか。
どうして、オレはこの詳細不明な魔剣を聖遺物として想像してしまったのか。
オレはこの魔剣で一体何をどうしろってんだ。
ずっと魔力無しだった落ちこぼれのオレが、魔剣との契約(?)、という形でとんでもない魔力を手に入れた。
それだけで世界は変わるはずだった。
もうとっくに授業は始まっている。
廊下には誰もいない。
もはや授業に出る気は更々なく。
なんとなくこの誰もいない白い風景が、自分だけがこの世界から取り残されてしまったように思えて。
そんな理不尽な疎外感から逃げるように、どうしてだろうか、行ったこともない屋上へと向かった。はッ、オレも大概だよな、反吐が出るぜ。
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