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7.REALEFFECT
少年は幻想魔剣の夢を見るか
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「ふん、全て破壊したはずだったのだが、鉄屑相手にはまだ不慣れか」
おそるおそる目を開けると、その一部始終を観戦していたギャラリーさえ何が起きたのか理解できないみたいにざわめいている。
遥かフィールドの端で崩れ落ちるアハルギの身体。防護バリアにめり込むその身体が無事であるはずがなかった。アハルギの義体を形成する何もかもが煙を上げて弾け飛んでいるように見えた。
アーマーのほとんどが壊れて、そこからは無機質な白い肌とさらにその奥の機械部が露出してしまっている。右目の破損とその周辺も大きく損傷し、無残な顔を乱れた前髪がかろうじて隠していた。両足はなんとか残っていたけどもう立つことは難しそうだ。
もう左腕は損傷して使い物にならず、千切れかけたその隙間からは黒い液体と無数の機械部品、そしてバチバチと魔力が滴っていた。
なによりも脇腹のダメージが深刻だった。義体じゃなかったら即死レベルに大きく抉り取られてしまっている。身体を支えることすらままならない、身体の上下が繋がっているだけでも奇跡だろう。
聖剣の攻撃をまともに喰らったんだ。未だに身体が残っているだけでも驚異的だった。
「ア、アハルギ!」
「ルジネ、テメエはテメエのことだけ考えてろ!」
駆け寄ろうとアーサーに背を向けたオレは、そのノイズ交じりでくぐもった、どこか悲痛な叫び声にビクッと立ち止まる。
もう離脱したかと思っていた義体から声が聞こえたのが良いのか悪いのか。ただ、ほんの少しだけ安心したのは確かだった。良かった、生きてる。
「クソ、無理すんじゃねえぞ、ジャンク!」
「するに決まってんだろ! いいから俺のことは気にすんな! テメエはメグリさんを救うんだろうが!」
アハルギの叫びにハッとして。
弾かれたように駆ける。いくらほのかやアハルギよりも遅くても。息が切れて呼吸が苦しくなっても、確実に。ヤツの喉元に喰らいついてやる。凡人以下のオレにできるのはそれしかない。
無様な疾走。
それを見つめるクソッタレを睨み付けながら。
「ようやく、追いついたぞ、アーサー」
両手を膝に置き、荒く肺に空気を取り込む。ハイになってた脳内に酸素が入ってきてどっと汗が噴き出す。
それでも、オレは上体を起こす。
対峙するは、あの激戦を経てなお白いスーツに埃ひとつすら付けていない無表情の青年。
「一度に来ればよかったのに。そうすれば少しは勝機があったかもしれないのに」
「あの二人にオレが追い付けるか、バカ野郎。こちとらただの男子高校生だぞ」
幻想籠手を掲げる。かちゃり、意気揚々と軽々しい金属音が鳴る。ようやくお前の出番だ。最初で最後の大活躍だ、ちゃんと動けよ?
「魔剣はどうしたんだ? こっちだって聖剣を使ってるんだ、キミも魔剣、ウォアムリタクーシャを使えばいいさ」
「そんなモンは知らん、オレはただの【イマジンコード】プレイヤー、あ、今は“元”プレイヤーか。そして、聖遺物、魔剣、アウラの使い手だ」
掲げた右手をそのままアーサーへと突き出す。
「魔剣、アウラ? キミは何がしたい? 幻想に縋るだけのキミに、ボクは倒せないよ」
「出来損ないの魔力無しの役立たずなオレは一人じゃ何もできない。オレが縋るのはなあ……」
力強く握る右手、そこには静かな怒りと激しい哀しみが込められていた。
「最期にほのかが遺したエフェクトだって無駄じゃなかった」
「お、おい、我はまだ死んでな……」
「ほのかが命を懸けてみんなを救った。だからこそ、あのヤバそうな爆発を見て、観客は無意識に思ってしまったんだ。もしかしたらアーサーでも負けてしまうんじゃないかって」
「我はまだ生きて……」
「約束された勝利が少しでも揺らいでしまえば、その聖剣は最強じゃなくなる。ほのかが遺してくれた最期の希望を胸にオレは戦う!」
「勝手に殺すなっつってんだろうがァ!!」
「ほのか! お前生きてたんだな!」
「しぶといな、獣人というのは」
叫び散らかしたときに傷口が広がってしまったのか、またバターンッと倒れ込むほのか。とりあえず無事だ。こいつだけなんかギャグ次元にでも生きているかのようなしぶとさだな。
「それに――、」
そして、オレはなんとなく思ったことを口にしてみた。いや、確かな確証はない。それでも、なんか一泡吹かせたくなって。
「お前、少し怯んだだろ。だからこそ壊したんだろ、最強神の武器を」
「何を……」
突然、バチバチと赤黒い稲妻がアーサーの身体に纏わりつく。
「な、んだ……?」
「やっとかよ、お前本当に人間か?」
アハルギは折れた大剣を杖代わりになんとか上体を起き上がらせる。
もう、アハルギの身体もエネルギーも限界に近い。
「対聖魔剣、クラレントはアーサー王を殺すためだけに存在する魔剣だ、そういう逸話に変質した。たとえ、アンタを傷付けられなくても、アンタを殺した、その呪縛からは決して逃れられない」
それでも、アハルギは勝利を諦めていなかった。クラレントの呪縛を維持するためだけに義体の維持よりも聖遺物の方に魔力を消費し続けている。
いくら聖剣が凄まじい聖遺物だとしても、それを持つ者が真の英雄王だとしても、彼は竜の血を引くかもしれないけど、それでもただの人間だ。
それが本物のクラレントの呪いならあるいは打ち破れたかもしれない。今のアーサーはその死すら克服したのだから。
でも、これはゲームだ。そのデバフ効果は絶対だ。自身を殺した、そんな由縁があるなら、なおさら、だ。
人々は聖剣の伝説を知っている。
その死に様も、カムランの丘で何が起きたのかも知っている。
だからこその、逃れられない呪縛。
「小細工を……ッ」
吐き捨てる、それでも、アーサーは苦しそうに膝をつく。彼のそんな姿を初めて見た観客が悲鳴を上げる。
ただ、デバフが掛かったところでアーサーはまだ負けていない。その絶対的な勝利は未だ揺らいでいない。
「おいおいおいおい、お前の相手はオレだぜ? 幼なじみを救い出すのは主人公の役目だろうが」
おそるおそる目を開けると、その一部始終を観戦していたギャラリーさえ何が起きたのか理解できないみたいにざわめいている。
遥かフィールドの端で崩れ落ちるアハルギの身体。防護バリアにめり込むその身体が無事であるはずがなかった。アハルギの義体を形成する何もかもが煙を上げて弾け飛んでいるように見えた。
アーマーのほとんどが壊れて、そこからは無機質な白い肌とさらにその奥の機械部が露出してしまっている。右目の破損とその周辺も大きく損傷し、無残な顔を乱れた前髪がかろうじて隠していた。両足はなんとか残っていたけどもう立つことは難しそうだ。
もう左腕は損傷して使い物にならず、千切れかけたその隙間からは黒い液体と無数の機械部品、そしてバチバチと魔力が滴っていた。
なによりも脇腹のダメージが深刻だった。義体じゃなかったら即死レベルに大きく抉り取られてしまっている。身体を支えることすらままならない、身体の上下が繋がっているだけでも奇跡だろう。
聖剣の攻撃をまともに喰らったんだ。未だに身体が残っているだけでも驚異的だった。
「ア、アハルギ!」
「ルジネ、テメエはテメエのことだけ考えてろ!」
駆け寄ろうとアーサーに背を向けたオレは、そのノイズ交じりでくぐもった、どこか悲痛な叫び声にビクッと立ち止まる。
もう離脱したかと思っていた義体から声が聞こえたのが良いのか悪いのか。ただ、ほんの少しだけ安心したのは確かだった。良かった、生きてる。
「クソ、無理すんじゃねえぞ、ジャンク!」
「するに決まってんだろ! いいから俺のことは気にすんな! テメエはメグリさんを救うんだろうが!」
アハルギの叫びにハッとして。
弾かれたように駆ける。いくらほのかやアハルギよりも遅くても。息が切れて呼吸が苦しくなっても、確実に。ヤツの喉元に喰らいついてやる。凡人以下のオレにできるのはそれしかない。
無様な疾走。
それを見つめるクソッタレを睨み付けながら。
「ようやく、追いついたぞ、アーサー」
両手を膝に置き、荒く肺に空気を取り込む。ハイになってた脳内に酸素が入ってきてどっと汗が噴き出す。
それでも、オレは上体を起こす。
対峙するは、あの激戦を経てなお白いスーツに埃ひとつすら付けていない無表情の青年。
「一度に来ればよかったのに。そうすれば少しは勝機があったかもしれないのに」
「あの二人にオレが追い付けるか、バカ野郎。こちとらただの男子高校生だぞ」
幻想籠手を掲げる。かちゃり、意気揚々と軽々しい金属音が鳴る。ようやくお前の出番だ。最初で最後の大活躍だ、ちゃんと動けよ?
「魔剣はどうしたんだ? こっちだって聖剣を使ってるんだ、キミも魔剣、ウォアムリタクーシャを使えばいいさ」
「そんなモンは知らん、オレはただの【イマジンコード】プレイヤー、あ、今は“元”プレイヤーか。そして、聖遺物、魔剣、アウラの使い手だ」
掲げた右手をそのままアーサーへと突き出す。
「魔剣、アウラ? キミは何がしたい? 幻想に縋るだけのキミに、ボクは倒せないよ」
「出来損ないの魔力無しの役立たずなオレは一人じゃ何もできない。オレが縋るのはなあ……」
力強く握る右手、そこには静かな怒りと激しい哀しみが込められていた。
「最期にほのかが遺したエフェクトだって無駄じゃなかった」
「お、おい、我はまだ死んでな……」
「ほのかが命を懸けてみんなを救った。だからこそ、あのヤバそうな爆発を見て、観客は無意識に思ってしまったんだ。もしかしたらアーサーでも負けてしまうんじゃないかって」
「我はまだ生きて……」
「約束された勝利が少しでも揺らいでしまえば、その聖剣は最強じゃなくなる。ほのかが遺してくれた最期の希望を胸にオレは戦う!」
「勝手に殺すなっつってんだろうがァ!!」
「ほのか! お前生きてたんだな!」
「しぶといな、獣人というのは」
叫び散らかしたときに傷口が広がってしまったのか、またバターンッと倒れ込むほのか。とりあえず無事だ。こいつだけなんかギャグ次元にでも生きているかのようなしぶとさだな。
「それに――、」
そして、オレはなんとなく思ったことを口にしてみた。いや、確かな確証はない。それでも、なんか一泡吹かせたくなって。
「お前、少し怯んだだろ。だからこそ壊したんだろ、最強神の武器を」
「何を……」
突然、バチバチと赤黒い稲妻がアーサーの身体に纏わりつく。
「な、んだ……?」
「やっとかよ、お前本当に人間か?」
アハルギは折れた大剣を杖代わりになんとか上体を起き上がらせる。
もう、アハルギの身体もエネルギーも限界に近い。
「対聖魔剣、クラレントはアーサー王を殺すためだけに存在する魔剣だ、そういう逸話に変質した。たとえ、アンタを傷付けられなくても、アンタを殺した、その呪縛からは決して逃れられない」
それでも、アハルギは勝利を諦めていなかった。クラレントの呪縛を維持するためだけに義体の維持よりも聖遺物の方に魔力を消費し続けている。
いくら聖剣が凄まじい聖遺物だとしても、それを持つ者が真の英雄王だとしても、彼は竜の血を引くかもしれないけど、それでもただの人間だ。
それが本物のクラレントの呪いならあるいは打ち破れたかもしれない。今のアーサーはその死すら克服したのだから。
でも、これはゲームだ。そのデバフ効果は絶対だ。自身を殺した、そんな由縁があるなら、なおさら、だ。
人々は聖剣の伝説を知っている。
その死に様も、カムランの丘で何が起きたのかも知っている。
だからこその、逃れられない呪縛。
「小細工を……ッ」
吐き捨てる、それでも、アーサーは苦しそうに膝をつく。彼のそんな姿を初めて見た観客が悲鳴を上げる。
ただ、デバフが掛かったところでアーサーはまだ負けていない。その絶対的な勝利は未だ揺らいでいない。
「おいおいおいおい、お前の相手はオレだぜ? 幼なじみを救い出すのは主人公の役目だろうが」
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