赤い箱庭

日暮マルタ

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3章山神編

贈り物

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「ほう、知らんうちに村が大きくなっているんだなぁ……把握しきれん」
 主様は渋い顔をしていた。やはり自分の世界に別の存在が複数存在するのは慣れないらしい。ここは私のわがままを聞いてもらっている。おかげで、死んでしまう迷い人の数は激減したし、交流も楽しい。
 今日持っていった鹿肉大喜びされてましたよ、と少し大袈裟に伝える。調子に乗りやすい主様のことだから、これで機嫌が戻るかと思ったが、案外と興味はなさそうだ。
「ああそうだ、これ、サヤカに似合うと思って」
 作ったんだ、と主様が私の手首を取った。
 なんだろうと思ったら、それは木目が見える数珠だった。
「わぁ、ありがとうございます」
 喜ぶふりをして服の袖の中に隠した。デザインが気に入らない。なんか古めかしい。申し訳ないけど。
 主様は満足そうに微笑んでいる。
 主様が私の腰に手を伸ばした。私は抵抗せずに抱かれに行く。主様が私を撫でる。こういうボディタッチにも慣れてきた。でも、いまだにドキドキする。慣れてきたというのはあれだ、驚かなくなってきたという話だ。
 主様は愉悦を顔に浮かべている。長い爪がついた手は角張っている。その手が私に触れる手つきは、優しい。というか、性的なものを感じる。
 いつからだろう。初めからだっただろうか。主様は私に性の匂いを隠さなくなった。
 おもむろに唇を奪われる。まるで噛みつかれるみたいで、私の心臓は張り裂けそうだ。そんなこともわからないのか、主様は舌で割り入り、歯列をなぞる。お互いの吐息が混ざる。熱い息を感じる。
 彼の手が私の腰のラインを撫でる。激しく、強い力で背中と腰に手を回され、抱きしめられた。
「サヤカ」
 私は真っ赤になっていることだろう。主様は酷く優しく、慈しむかのように私の名前を呼ぶ。私の名前が何よりも尊いのだというように、大切に。
 強く、優しく、緩急をつけて主様が私に触れる。
 心の一部が、怖いと叫ぶ。これ以上はいけないと。しかし、主様はそんな私も一緒にかき抱いてめちゃくちゃにしてしまう。
「主様……コクトミ」
「ふふ、なんだ?」
 名前を呼ぶだけでこんなに甘い。
 熱い吐息が混ざり合う。何度もキスをする。
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