縁は縁でも腐ってる

長澤直流

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小話

【家宝の槍と畳の穴】貳※背後注意

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 今朝はとても穏やかな目覚めだった。
 此方に身を寄せてからというもの夜は常に閨に引きずり込まれていたため躰が休まることは無く、寝ぼけ眼で起きた朝餉の頃には空いているはずの腹が空いていない……なんてことも度々あったが、ここ最近は体も軽く、ちゃんと腹も空く。
 それはきゅうぅと腹を鳴らした美慶が、こんな何気ない平穏な日がずっと続けばいいとそう思った矢先のことだった。
 遠くで床を蹴る音がしたかと思ったら目の前の襖がすぱっと切れ、崩れ落ちたのだ。
 美慶が驚愕に目を見開くと、そこには恐ろしく冷えた目をした総満が着流し姿のまま仁王立ちしていた。
 総満は美慶を確認するとほんの少しだけ顔を緩め、すぐさま美慶を押し倒し、馬乗りになって動きを封じにかかってきた。
 呆気にとられていた美慶はまんまと取り押さえられてしまい、抗議の声を上げる。
「……朝も早うから何をなされます!」
「久し振りじゃなぁ、美慶。お前に避けられては考えを改めざるを得なかったぞ」
「それはそれは……ぜひともそのお考え、伺いたく存じ上げまするが、この体勢は些か問題では?」
「問題なかろう。美慶、俺は忙しい身だ。なれど今日はもう全てを明日に回すことにした。何故なら今からお前を抱き潰すからだ」
「は? 正気の沙汰とは思えませぬ。お考え直しくださいませ」
「美慶、わからぬか? 俺は正気を保つためにこうしておるのよ」
「――っ!」
「此度は散々焦らされたからのぅ。まぁ、はっきり言うならば……仕置きじゃ」
 仕置きの言葉に危機感を覚えた美慶が躰をひねり総満から離れようとしたため、総満は美慶の着流しの裾を力強く踏みこんだ。美慶は思いがけず前のめりに突っ伏し、強かに顔を打ち付ける。そんな美慶を総満は冷ややかな眼差しで見下ろして言った。
「この距離で俺から逃げられると思うな」
 そして総満は軽く嘲るように溜息を吐いた後、牙にかけた獲物を嬲る獣のように笑みを浮かべた。
 総満の圧に飲み込まれた美慶は全身の毛を逆立たせる。あの夢とも現実とも曖昧な快楽ばかりの日々には極力戻りたくない。
 美慶は総満から何とか距離を取ろうとしたが、総満は赤児の手を捻るかのように容易く美慶を取り押さえてしまう。
 総満と真っ向から相対してしまっては力量は明らかで美慶に勝目など皆無なのだ。
 だが、美慶は無駄とわかっていても抵抗せずにはいられなかった。
「お離し下さいまし」
「断る」
 そう言って顔を近づけてきた総満に美慶は頭突きを喰らわした。
 一瞬、よろめいた総満の隙を突いて、美慶は立ち上がり外へ逃げようとしたが再び着物の裾を取られてしまう。勢いはあったものの何とか頭から突っ伏すことを回避した美慶であったが、その間に総満に脚を取られてしまった。
 総満が美慶の脚を掴み引き寄せると、美慶の着物が畳にすれて捲れ上がってゆく。
 陽に焼けぬ白い脚が露わになると、総満は堪えきれず仰向けに倒れる美慶の臀部まで着物をたくし上げた。下腹部が曝されながらも抵抗を続ける美慶を力尽くで開脚させると、とどめとばかりに総満は家宝の槍をへし折り、美慶を着物で畳に縫い付けるかのように着物ごと槍を畳に突き刺した。その際、力加減が出来ずに畳下の床まで突き破った感があったのだが現状総満はそれどころではなかった。
(すぐにでもぶち込みたい! このままでは、気が触れるっ)
 総満は己の慣れない感情の変化、衝動に焦りを感じていた。
 下帯を締めていなかった美慶は下腹部を露出したあられもない姿で槍と着衣によって固定されてしまったため、どうにも出来ずただ、総満を睨んでいる。
「諦めろ、逃がしてやるつもりはない」
「御前んっ――――んんんっっ!」
 総満は美慶の不満を口で塞ぐと己の下帯を解き、猛る魔羅を取り出して慣らしもせずに美慶の菊花にぐぐっと押し込めた。
「……はっ!今は余裕も無い、許せ」
 慣らしもせずにことに至った総満に美慶は一瞬怒りを感じたが、それよりも久々の挿入に少しの痛みと圧迫感はあるものの、それ以上に美慶は与えられる快感を敏感に感じ取ろうと疼く己の躰に戦慄した。
(これではまるで私が総満を待ち焦がれていたかのようではないか!)
 そう憤るも総満が突く度に湧き上がる悩ましい快感は美慶の思いとは裏腹にじわじわと確実に躰を蝕んで広がってゆく。
「あっ……、あっ……、お……お止め……下さい……ませ」
「……」
「ご……、御前……ん様……、あっ」
「……」
「くっ、うっ、……っ、……っ」
 美慶と躰を繋げた総満は無心に美慶を貪り続ける。総満の激しい突きが美慶の躰を揺らし、その攻めは受け身の美慶を総満以上に容赦なく高みへと誘う。
(私は……っ、私は決して淫乱などではない――っ!)
 美慶は無意識に動いてしまう己の躰の一部を見ないようにして、とりあえず総満が一度果てるまで歯を食いしばって耐えることにした。

「っ――――――――っふぅ……」
 総満が果てるまでに何度高みに送られたか……美慶は汗だくになっていた。
「……少しは……落ち着……かれましたか?」
「……そうじゃな、少しは――」
 息を切らせ美慶がそう問うと、総満はそう言って口端を上げ、再びゆるゆると腰を動かし始めた。
 暫く美慶の中から出て行く気は無いようだ。
「御前様、……この拘束を解いてくださいませ」
「……ん? 中々、良い眺めだぞ」
「……下腹部が寒うございますれば――」
 美慶がそう言うと総満は美慶に覆い被さって言った。
「これなら寒くなかろう?」
「ん――っ、こ、これでは腹が苦しゅうございます」
「苦しいだけか――?」
 総満がそう揶揄からかうように言うのと同時に、バタバタと複数の足音が何やら叫びながら近づいてきた。
「美慶様、此方に御前様は――」
「!」
「……小姓達か」
 近づく小姓達に平然としている総満に焦り、美慶は苦しい体勢で声を張り上げる。
「――ご、御前様は此方にお見えです。安心して下がられよっ」
「は、はい。失礼いたしました!」
 美慶の普段らしからぬ叫び声に小姓達が美慶の状況を察し、その姿を目の当たりにしまいとその場を後にしようとしたその時、総満が口角を上げて口を開いた。
「いや待て、やはり此方に参れ」
「?!」
 美慶は耳を疑った。小姓達も、躊躇いの声を上げている。
「……しかし」
「よい、許す。部屋の前まで参れ」
 美慶は堪えきれずに声を上げた。
「御前様っ、お許し下さいませ! この様なあられもない姿、小姓達に見せる訳には――」
「美慶、俺は立場上閨事を見られることに然程抵抗がない」
「!」
「お前は出自が出自であるし、里にも最早未練も無かろう? 元々子が出来ることもない故、気にとめていなかったが…………、俺が子を宿すために閨に入る際には後々の面倒事等を避けるため常に仕切り越しに監視役を待機させているのだ……」
「――――」
「……お前とは初めて床を共にして以来、あえてそういった役を就けることはせなんだが――」
「…………」
「たまには他人の視線の下で睦いでみるか」
「っ! 不必要なことをなされる意味がわかりませぬ!」
「珍しく動揺しているではないか」
「あ……」
「決まりじゃな。何をしている、お前達早く此方に来い」
「ぎょ、御意に!」
「御前様っ、おやめ下さ――」
「これは仕置きじゃと言ったであろう」
「っ!」
 言葉を詰まらせる美慶に、総満は黒い笑みを浮かべた。
「楽しみじゃな、美慶。存分に乱れてみせろ」
 総満のその瞳は恍惚と色欲に煌めいていた。
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