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第3話

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私たちは手を合わせる。

「頂きます」「頂きます」

私は早速箸を手に取った。そして、天津丼を口に運ぶ。

「ん~!」

美味しい!卵の甘みと出汁の旨味がよく合っている。ご飯もパラパラだし、玉ねぎもシャキシャキだ。とても良い。私は夢中になって食べた。

「どうですか?」

「凄く美味しいです!こんなに本格的な中華料理は初めてかも……」

「そう言って貰えて良かったです」

小鳥遊さんは嬉しそうに言った。

「ふふっ、小鳥遊さんが勧めてくれるだけありますね」

「ありがとうございます」

私たちは他愛のない会話をしながら食事を楽しんだ。

「あの……、篠宮さん、最近雰囲気変わりましたよね」

「そうでしょうか?」

「はい。なんていうか、前よりも明るくなったというか、生き生きしているような気がします」

小鳥遊さんの指摘にギクリとした。私は元悪役令嬢であり、この体の持ち主である篠宮由衣の体に憑依して成り代わっているのだ。本来の人格である篠宮由衣の魂がどうなっているかは不明だけれど、彼女の記憶は私が引き継いでいる。少なくともこの体の主が幸せではなかったことは間違いない。そんなことを思いながら、私は笑顔を作る。

「それはきっと、小鳥遊さんのお陰ですよ」

「え?」

「小鳥遊さんのおかげで楽しい毎日を過ごすことができています。本当に感謝しています」

「篠宮さん……」

小鳥遊さんは感極まった様子で目を潤ませた。

「僕も篠宮さんに出会えたおかげで救われたんですよ」

「そうなんですか?」

「はい。僕は今までずっと自分の居場所がなくて、孤独を感じていました。友達と呼べる人もいませんでしたし、学校ではいつも一人だったんです。だけど、今は違う。篠宮さんがいて、僕の話を聞いてくれる。それがすごく嬉しいんです」

「小鳥遊さん……」

「僕は篠宮さんに恋をしました。篠宮さんは優しくて可愛くて、一緒に居て安心できる人です。僕は篠宮さんのことをもっと知りたいと思っています」

「……」

「篠宮さん、好きです。付き合ってください」

「……」

私は黙り込んだ。突然の告白に戸惑っている。

どうしよう。正直なところ、彼のことが嫌いではない。むしろ好意を抱いていると言ってもいいだろう。彼は私を大事に扱ってくれそうだし、何より紳士的だ。それに顔立ちも整っていて好印象だった。

しかし、私の心の中にはまだ迷いがある。小鳥遊さんはいい人で素敵な男性だと思う。でも、恋愛感情を持っているかというと分からない。私は誰かを好きになったことが無いからだ。

(小鳥遊さんは私のことを好きなんだ……。私は小鳥遊さんのこと、どう思っているんだろう?)
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